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    中学に「メディカルサイエンステクノロジークラス」新設…三田国際

     三田国際学園中学校・高等学校(東京都世田谷区)は来年度、中学校に「メディカルサイエンステクノロジークラス(MST)」を新設する。中、高校でクラス・コース編成を大きく改革する中で、このクラスは早期からのサイエンスリテラシーの養成を進め、研究者、医療従事者としてのマインド教育にも手を広げるという点で注目される存在だ。MSTの構想を既に先取りしている授業の様子を紹介する。

    理数に特化した新クラスで「考える力」をさらに伸ばす

     三田国際学園中学校・高等学校はこれまで、中学校が「本科」と「インターナショナル」の2クラス。高等学校が「本科」と「スーパーイングリッシュ」「スーパーサイエンス」の3コースという編成だった。

    • 三田国際の教育理念について語る今井誠教諭
      三田国際の教育理念について語る今井誠教諭

     中学校では2019年度に、「メディカルサイエンステクノロジークラス(MST)」を新設して3クラスとする。高等学校ではすでに今年度、「スーパーイングリッシュコース」を「インターナショナルコース スタンダード」に変更し、「インターナショナルコース アドバンスト」を新設した。また、「スーパーサイエンスコース」は「メディカルサイエンステクノロジーコース」に変更、「本科コース」はそのままとし、計4コースとなった。

     改編全体の大きな特徴は、中学、高校の学びを統一的かつスムーズに結びつけることにあるが、特に中学へのMSTの新設は、高校での本格的な理数教育の助走段階ができたという点で大きな意味を持っている。

     MSTの特色は、数学や理科に重点を置いたカリキュラム設定にある。同校は独自の相互通行型授業などを通じて「考える力」を伸ばす教育を行っており、MSTでも生徒自らが実験し、答えを探究する機会をより多く設けていく方針だ。

     中高MSTを統括する辻敏之教諭によると、MSTでは中学1年次から「サイエンスリテラシー」という新しい授業を始める。課題発見能力や、問題解決の方法を見いだし、それを実践する力、疑問や成果を表現する力などを身に付ける学びだ。「物事に理論的にアプローチするための下地を作っていきます」という。一方、現在の「本科クラス」で中学2年次から行っている「基礎ゼミナール」という探究型の授業も「基礎研究α」という名称で「本科クラス」と合同で実施し、MSTの生徒は理数系の講座を選択できる。生徒が自分の興味に基づいてテーマを設定し、調査して紀要にまとめるという学習はMSTと方向性を同じくしているからだ。

    • 講義には中学レベルを超える内容も含まれる
      講義には中学レベルを超える内容も含まれる

     広報部長の今井誠教頭は今回の改編について「高等学校の『スーパーサイエンスコース』で行ってきたプログラムは、細かい制度を整えてノウハウも蓄積されました。ようやく状況が整ったので中学も含めての改編に踏み切ったわけです」と説明する。つまり、中学1年からサイエンスリテラシーを磨き、高校3年までの6年間を通じて深めていく環境が整ったということだ。

     ちなみにコース名に「メディカル」という言葉を冠したのは、進路希望調査などで「医学系に進学したい」という声が多く上がることを受けてのことだそうだ。

    生徒の探究心と思考力を養う授業

     取材に訪れた日は、中2、中3合同で「本科クラス」の「基礎ゼミナール」を実施していた。現在10ある講座のうち、辻教諭が担当するのは、「生物を考える」というテーマのゼミで、MSTの構想を先取りして行っている授業の一つでもある。教室では「なぜ生物を絶滅させてはいけないのか」ということを巡って生徒たちが議論していた。

    • 頭を悩ませながら真剣に考える生徒たち
      頭を悩ませながら真剣に考える生徒たち

     最初に辻教諭が遺伝子や進化論について生徒に説明する。遺伝子の構造は生物ごとに違うことや、同じ生物の中でも個性があること、そうした違いがある中で、生き残るのに有利な特性を持ったものが残った結果、生物の進化が起こることなどを分かりやすく解説した。

     その後、生徒たちは4、5人のグループに分かれて「なぜ生物を絶滅させてはいけないのか」についてディスカッションに入った。まず、グループごとに配られたA3判の用紙にさまざまな意見を書いた付箋を貼り、意見が出しりったところで、お互いに質問したり意見を戦わせたりしていく。

     辻教諭によると、グループ内での役割分担は特に決めていないとのことだが、進行役や時折鋭い意見を出す生徒、新たな意見を書き留める生徒など、自然と役割が生まれる。生徒それぞれの資質が表れてくるのだという。

     グループごとのディスカッションが終わり、辻教諭が「発表したいグループは」と声をかけた。いくつかのグループから手が上がり、「生き残るのに有利なものが生き残るのなら、そうでないものは絶滅させてもいいのではないか」という意見や、「遺伝子の多様性が失われると環境に合わせた変化ができないだけでなく、一つの病気で生物が絶滅してしまう恐れもある」といった意見が出された。

     「研究活動の場面においては、私を含めて理科の教員は、生徒たちのことをあまり中学生だと思っていないんです。これだけの思考力をもって物事に取り組めるのですから、研究者見習いくらいの力はある。高校生になるころにはもう立派な研究者です」と辻教諭は話す。だから、授業でも与える情報は最低限とし、あくまでも生徒自らが興味関心を持って考えられるようにサポートする姿勢を貫いている。

     授業を受けた西久保哲志君は、「最初は難しいと思っていても、考えるごとに答えに近づいていって理解できていく感覚が面白いです。当たり前だと思っていることも、きちんと考えてみるといろいろと知らないことが多くて、そういう発見がたくさんあるのも楽しいですね」と感想を話した。

     また、岡田一歩美さんは「考えたこともないようなことを自分が持っている知識の範囲で考えなくてはいけないのは難しいです。でも、グループディスカッションでは自分とは違う意見や自分にない知識を聞けるので、それが力になっていると感じます」とのことだった。

    生徒が自ら課題に当たり、考えていける環境

    • 「疑問にぶつかったときに諦めず考え抜く力を育てていきたい」と語る辻敏之教諭
      「疑問にぶつかったときに諦めず考え抜く力を育てていきたい」と語る辻敏之教諭

     MSTでは、こうした探究型の授業にさらに力を入れていく方針だという。また、「生徒の主体性をより高められるような工夫もしていきたい」と辻教諭は話す。

     「本校には大学顔負けのラボが整備されていて、基礎ゼミの中学生や高校生が毎日のようにそこで実験を行っています。その中で縦のつながりが生まれていけば、先輩が後輩に器具の使い方を教えたり、お互いに実験について話し合ったりするような環境ができてくるはずです。最終的には、教師がいなくても生徒だけでどんどん課題に当たっていけるようになればいいなと考えています」

     MSTでは、クラス名に「メディカル」とある通り、医学部進学を見据えた教育も行っていく方針だ。単に学力を伸ばすというだけでなく、医療に関する諸問題や生命倫理、医療の歴史なども学びながら、医療従事者や研究者として欠かせない考え方や自覚を身に付けた生徒の育成も目標としている。

     「大事なのは、自分がどういうことをしたいのか、何のためにそれをするのかをきちんと考えること。これは実験においても、自分のキャリアを考えることにおいても同じです。MSTで学びながら、ぜひこうした『考える力』を身に付けてほしいです」

     新たに生まれる「メディカルサイエンステクノロジー」が教室にどんな風を吹き込んでいくのか楽しみだ。

     (文・写真:藤本佳織)

     三田国際学園中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年08月30日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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