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    日本の英語教育改革のモデル校をめざす…麹町女子

     今年、創立111周年を迎えた麹町学園女子中学校高等学校(東京都千代田区)で、教育界が目をみはるような計画が進行している。今年4月からの「アクティブイングリッシュ」の導入と、来年4月からの麹町学園女子高等学校「東洋大学グローバルコース」の新設だ。同校で英語教育を監修し、英語科特別顧問を務める安河内哲也さんと山本三郎校長にインタビューした。

    大学入試改革を機に英語教育は変わる

    • 英語科特別顧問を務める安河内さん
      英語科特別顧問を務める安河内さん

     2020年に戦後最大とも言われる英語教育の大改革が行われる。従来の大学入試センター試験から新しい共通テストに移行するが、特に英語における変化は大きく、「聞く」「読む」中心から「話す」「書く」を加えた4技能評価となる予定だ。

     「文部科学省ではすでに2010年から学習指導要領に英語の4技能をうたっています。2020年にようやく大学入試が指導要領に準拠し、入試と指導がマッチするということです」。安河内さんはこのように解説する。

     グローバル化に力を入れている大学では、すでに何らかの形で英語4技能入試の導入を始めている。英語教育の2020年問題はすでに始まっているのだ。

     「現在、総じて日本の高校3年生の英語力は、4技能において世界的に極めて低いレベルにある。いわゆる昭和の受験英語が英語力の健全な育成を阻んでいると考えられます。今回の大学入試改革をきっかけに、日本の英語教育はいい方向に進むでしょう」と安河内さんは予想している。

    「アクティブイングリッシュ」の五つの柱

    • 毎朝10分の音声活動の様子
      毎朝10分の音声活動の様子

     4技能の試験で点数を取るカギは、音声を使った活動型授業と、インプットとアウトプットとをバランス良く融合することにあると安河内さんは断言する。その具体的な取り組みが「アクティブイングリッシュ」であり、それには五つの柱がある。「音声教育の徹底」「ICTのフル活用」「アクティブラーニング」「チームティーチング」「モチベーションを上げる体験の提供」だ。

     「音声教育の徹底」を実践した「毎朝10分の音声活動」は既に成果を上げている。「聞く・読む・書く」の3技能を測るスコア型英語テスト「GTEC for STUDENTS」を受けた高2生は、810点満点の試験で平均点を47点も上げたという。「チームティーチング」では、英語教師が週に1度の研修やデータの共有を通じて指導法をお互いにシェアして研さんする。また、中高全学年において定期試験に、4技能を均等に測定するKEPT(Kojimаchi English Proficiency Test)を導入し、指導と評価の一体化を図る。

     「モチベーションを上げる体験の提供」では、英語圏への研修旅行に加えて、学園内に英語村「i Lounge」を設置。ここでハロウィーンパーティーなどを行い、おのずと英語によるコミュニケーションを図れる環境をつくった。また、グローバルに活躍している女性たちを招き、講演してもらう計画も進んでいる。生徒たちに同じ女性として自信を付けさせようという計らいである。

    教材と生徒のレベルをマッチさせる

     このアクティブイングリッシュの取り組みの中には、麹町学園ならではのメソッドがいくつもある。その代表例が教科書を変更し、副教材を基本的に廃止したこと。それにより教材と生徒のレベルのマッチングを図る。

     「教科書を1回やったくらいでは覚えられるはずがない。繰り返し学べるように余計な教材をそいだということです。教科書や問題集が厚ければ厚いほど力が付くという誤った先入観があり、今使用している教科書だけを繰り返すことに不安を感じる生徒もいるようですが大丈夫。いずれ合格実績が出てくれば生徒たちも安心するでしょう」と安河内さん。その自信の背景には、東進ハイスクールにおいて持論を実践し、難関大学への合格者を数多く生みだしてきた、カリスマ英語教師としての実績がある。

    高等学校で「東洋大学グローバルコース」を新設

    • 教育方針について語る山本三郎校長
      教育方針について語る山本三郎校長

     来年4月からスタートする麹町学園女子高等学校「東洋大学グローバルコース」は、山本校長が推進している教育改革のもう一つの柱である。高校入試において、このコースに合格すると、一定の推薦基準はあるものの、東洋大学のいずれの学部・学科にも進学することができる。

     麹町学園が高大の連携先として東洋大学を希望した理由は二つある。一つは同校の生徒が行きたい大学、保護者が行かせたい大学の1位であること。もう一つは、同大学がスーパーグローバル大学に選定されたことだ。

     「全国の高校の進路指導部長へのアンケートによると、東洋大学は大学改革に積極的な大学として第6位にランクインしています。今、東洋大は大きく変わろうとしています。安河内顧問の英語指導で大きく変わろうとしている本校のパートナーとして、東洋大学しかないと考えました」と山本校長は語る。

    高大連携が生み出す数々のメリット

     高大連携には、高校生でありながら大学の講義を受けられる、自校に大学の講師を招聘(しょうへい)して学べるなどメリットが多い。生徒は大学入試にとらわれて偏差値に一喜一憂することなく、自分の適性や希望する進路をよく考えて学部・学科を選べるようになるという。「高校に入った時点で大学への入学切符をもらえる。この精神的なゆとりは大きい」と山本校長は話した。

     このほかに、最後までクラブ活動に打ち込むことができ、一生続く友情が生まれたり、皆が同じ大学に行けるという安心感から、クラスの雰囲気が和やかなものになったりする。安心感から遊ぶのではと懸念する人もいるが、一定の推薦基準をクリアしたことで自己肯定感や上昇志向が生まれたり、未来の自分のデザインを7年かけて発展させる計画を立てたりできるメリットがあるという。

     安河内さんが同校の英語科特別顧問を引き受けたのは、麹町学園で英語を担当している大学の同級生を通じて山本校長と出会い、教育改革にかける情熱に触れたのがきっかけだった。自身も日本の中高の英語教育改革のモデル校をつくる必要性を感じていたところ、縁あって「この学校でなら長年の思いが実践できる」と顧問を引き受けた。「麹町学園の事例を成功させ、やがて全国の私学でシェアしたい。その拠点校、ハブ校としての役割を担えるような学園にしていきたい」と安河内さんは抱負を語った。

     今後も、さらなるグローバル化を見据えて山本校長が打ち出す大きな方向性に合わせて、安河内さんは英語科教員と一丸となり、自ら監修する「アクティブイングリッシュ」や、キャリア教育「みらい科」をさらに深化させたプログラムなどを盛り込んでいくという。

    (文:松下宗生 一部写真提供:麹町学園女子中学校高等学校)

    2016年11月21日 05時50分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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