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    校長語る「生徒自らが価値と使命を見いだすために」…東星学園

     東星学園中学校・高等学校(東京都清瀬市)は、カトリックの教えを基本として「生徒一人一人を本当に大切にする」教育を実践している。その務めは、生徒が自らの価値と使命を見いだすサポートをすることにあるという。就任7年目となる大矢正則校長に、同校の教育理念や特色について聞いた。

    「自分と向き合う」ことで精神的に成長

    • 教育理念や特色について語る大矢正則校長
      教育理念や特色について語る大矢正則校長

     「どんな人材の育成を目指していますか」と質問すると、大矢校長は「ありません」と答えた。「人間はそれぞれ異なる価値と使命を持っているというのがカトリックの教えです。生徒が自らの価値と使命を見いだすサポートを行うのが本校の務め。ある理想像に合わせて人材を育成するなど、むしろあってはならないと考えます」

     そのための教育の柱としているのが「自分と向き合う」「集団と折り合う」の二つだという。

     「自分と向き合う」ことは、どう行われるか。たとえば、昼食後には「沈黙の掃除」がある。中1から高3までの縦割りチームで掃除を行うが、上級生からの指示や終了報告以外は一切言葉を発しないルールだ。

     「黙々と作業しながら生徒は自分の内面を見つめ、授業内容を反芻(はんすう)したり、自分の言動を振り返ったりするなど、さまざまな気付きを得ていきます」

     朝礼・終礼時の「主の祈り」も、自分と向き合う時間として位置付けられている。月曜の「全体聖書朝礼」は、毎回1人の生徒に聖書の一節を朗読させ、大矢校長が日常や学校生活に引き寄せて解説を加えている。

     「自分と向き合うことで、子供たちは主体性と他者への心配りを身に付け、精神的に成長していきます」

    学校行事は「集団と折り合う」場

    • 入学式の特徴的な会場作り
      入学式の特徴的な会場作り

     もう一つの柱、「集団と折り合う」ことを実践している場は学校行事だ。行事を生徒自ら企画・運営する学校は多いが、同校では中学の入学式、高校の卒業式も生徒主体で企画・運営するという。

     「入学式は、高2の企画委員を中心に前年度の冬から準備を始め、プログラムを作り、式の少し前には入学生にあてて手書きのメッセージを送ります。もらった子供たちは『学校から手紙が来た!』と喜ぶそうです」

     入学式の会場作りも特徴的だ。入学生はステージに背を向けてひな壇形式で腰掛け、教員、在校生、保護者がコの字形に並んで向き合う。「互いの顔がしっかり見え、教員や上級生は、こんな子が入ってきたと分かるし、入学生は祝福を実感できます」

    • 女子全学年による「エイサー」
      女子全学年による「エイサー」

     体育祭は、幼稚園から高校まで合同で行われる。学年を超えて協力する内容が多く、中高の全学年男子による「集団行動」パフォーマンス、女子全学年による「エイサー」のほか、小1と小6による合同競技や、高校生有志と幼稚園年長クラスの演技などを行う。

     今年の体育祭では、こうした「集団と折り合う」心が見事に発揮された。「台風前後で雨天続きでした。開催日も1、2時間目は通常授業でしたが、午後に数時間だけ雨がやむという予報があったので、急きょ、中高生が総出で、運動場の水たまりを雑巾で拭き取り、バケツリレーで砂を敷き、演技種目を中心に2時間ほど体育祭を開催できました。生徒には運営の当事者という意識と、会を心待ちにする小さな仲間たちへの思いがあったようです。時間は短かったものの大成功でした」

    カリキュラムも生徒の状況に合わせて

     生徒が自らの価値と使命を見いだせるようにすることは、生徒一人一人を本当に大切にするということだ。その理念は学習カリキュラムにも表れている。

     「学年一律の先取り学習は行いません。生徒の習熟度や目標によって注力すべき内容が異なるので、それぞれの生徒の状況を見極め、着実に学力を伸ばすようサポートします」

     習熟度によっては、朝や放課後に補習を実施する一方、先を学びたい生徒のために個別指導体制の講習も充実させている。

     1学年20~40人の少人数なので、高校でも文・理のクラス分けはないが、選択科目できめ細かく対応している。高3では火、水、木、金の5、6時間目が自由選択になり、芸術、英語、数学、理科などから4科目まで選択できる。これにより、生徒ごとに異なるオーダーメイド的な時間割になる。

     さらに今年度後期から、意欲的な生徒に向けた登録制の自習室を設置し、成績優秀者向けに1~3人規模の特別講習を設けるなどの取り組みも始まった。

    文化的レベル高いヨゼフ祭

    • 高2学習旅行
      高2学習旅行

     学習カリキュラム以外でも、活動の主役は生徒たちだ。中3と高2で行う「学習旅行」では、行き先や活動を各学年の全員が作文にして提案し、決めていく。また、学習旅行を取りまとめる企画委員も、立候補を表明する生徒から選ばれる。

     「中3は歴史や文化にまつわる行き先が多く、ここ数年は京都や、比叡山や琵琶湖のある滋賀などです。高2は平和教育を意識した行き先が多いですね。戦争の傷痕が今なお残る沖縄、原爆やカトリックにまつわる長崎、反戦文学『二十四の瞳』の舞台となった小豆島などですね」

     学習旅行で学んだことは、その翌年の4、5月に文化祭「ヨゼフ祭」で発表される。「学習旅行の発表はポスター展示が主体ですが、写真やジオラマなど視覚的にも工夫し、クイズなどの参加型展示もあります」

    • 生徒たちが力を入れる「ヨゼフ祭」の舞台発表
      生徒たちが力を入れる「ヨゼフ祭」の舞台発表

     「ヨゼフ祭」で生徒たちが力を入れているのは、舞台発表だ。中2は童話などを基に生徒が脚本をつくる英語劇、中3は唐詩など古今の詩を題材にした群読、高2はカトリックのメッセージを下敷きにした劇、高3は学習旅行を踏まえた平和に関する劇などを披露する。

     このほかにも、美術部やダンス部、合唱部の部活発表や、習字や華道といった自由参加の「講座」クラスの発表展示などがあり、中にはグループ旅行などの自主発表も行われる。

     「派手ではありませんが、みな意欲的。文化的なレベルも高い行事です」

    「人の教育は人にしかできない」

     6年前に赴任した際、大矢校長は「生徒一人一人を本気で大切にする学校だ」と感銘を受けたという。「全教員が中高全生徒の顔と名前を覚えており、時間をかけてサポートに当たる。こうした良さを、ますます生かしたいと思いました」。

     教員たちは生徒たちを十分にサポートできるように、問題を一人で抱え込まないようにしている。「身近な教員や詳しい教員に相談し、チームで対策にあたります」

     生徒や保護者の悩みに応えるスクールカウンセラーは4人常駐している。「カウンセリングは相性が重要」との考えから、男女2人ずつ、30歳代から70歳代と年齢層も幅広い。

     こうした手厚いサポート体制は、「人の教育は人にしかできない」という大矢校長の信念の表れだ。

     「ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の発達に伴い、『近い将来、学校教員の仕事はなくなる』という人もいますが、そうでしょうか。本校も電子黒板型プロジェクターやタブレット端末は導入していますが、あくまでツールに過ぎません。生徒が自分の価値を見いだし、集団と関わることで社会に貢献していく。そのための教育は、人にしかできないと考えています」

     生徒一人一人の価値に対する信念に裏打ちされた言葉は、朗らかながら力強かった。

    (文と写真:上田大朗 一部写真:東星学園中学校・高等学校提供)

    2017年12月26日 15時05分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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