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    卒業生が高1に伝える「10年後の私」…三輪田

     三輪田学園中学校・高等学校(東京都千代田区)は5月26日、高1生を対象とした卒業生による講演会「10年後の私」を開催した。さまざまな道に進んだ5人の卒業生が招かれ、高1生の進路選択の参考になるよう、高校時代に考えていたこと、今の職業に就いたきっかけ、仕事のやりがいなどを熱く語った。10年後の自分の姿を重ね合わせながら先輩の話に耳を傾ける生徒たちの姿をリポートする。

    10年後に社会の一員である自分をイメージ

    • 進路指導室長の加納克也教諭
      進路指導室長の加納克也教諭

     同校は、20年以上前から高1生を対象とした卒業生による講演会「10年後の私」を開いている。進路指導室長の加納克也先生は、「『10年後の私』は、先輩たちがどのようなプロセスを経て社会人になったのか、生徒たちに自分の人生を疑似体験してもらいたいという思いから始まりました」と話す。「この講義を聞いて、三輪田学園という環境の中で6年間を過ごした後、大学を経て、どんな人生を歩むのかを体験してもらいたい。10年という時間は長いようで実は短いこと、秋に行われる文理選択について『そろそろ真剣に考えないといけないな』と感じてもらうのが目的です」

     「高校1年生になったばかりの生徒たちに具体的な夢を持てと言ってもそれは難しい話です。この時期の生徒たちが持つ職業のイメージといえば医師、弁護士、警察官など専門職ばかりで幅がとても狭い。でも実際に社会に出ると一般の仕事に就く場合が圧倒的に多いので、色々な職業の卒業生に声をかけるように心がけています」

     卒業生に登壇を依頼すると、出張と重なっていてどうしても無理な場合などを除き、ほぼ全員が快諾してくれるという。依頼を受けた理由を聞くと「本当にお世話になったので」「恩返しのつもりで今日は来ました」と口をそろえ、母校や後輩への愛情をうかがわせた。

    三輪田の日々が今を支える

    • 在校生を前に講演する2010年卒業生
      在校生を前に講演する2010年卒業生

     今回の講演では、2010年度に卒業した62回生から5人が登壇した。エンジニア、医師、看護師、営業、人事採用部、同じ学び()で過ごした卒業生がそれぞれの10年間を熱く語った。

     2人目に登壇した富田梨華子さんは東京警察病院で研修医として働いている。「肉体的にも精神的にも大変な職場ですが、患者に『ありがとう』と感謝された時や、元気になって退院していく姿を眺めた時、この仕事を選んで良かったと実感します」と語った。医師を目指したのは、在学中に経験した聖路加国際病院でのボランティアがきっかけだった。「一緒に医学部を目指そう」と誘ってくれた親友2人も医師として働いている。医療の道を行く仲間として、今も親交があるという。


    • 講義が終わった後も生徒の質問に答える富田梨華子さん
      講義が終わった後も生徒の質問に答える富田梨華子さん

     「三輪田学園では『人に優しくする』寛容な心を育てることができました」と富田さんは話す。仕事で忙しい時や疲れている時、誰にでも優しく接するという当たり前のことが難しくなる。そんな時は三輪田の先生たちが見せてくれた優しさを思い出すという。「先生は普段の生活や、お説教をする時も必ず敬語で話してくれました。これは私たちを子供ではなく、一人の人間として尊重してくださっているからです。どんな患者さんにも平等に接することができるのは、そんな三輪田の先生たちの影響が強いと思います」。受験直前には医学部だけでなく、薬学部も受験しようかと迷ったが、「医者以外にやりたいことがあるんですか」とあらためて志を問われ、医学部に絞ることができたという。

     3人目に登壇した西原のぞみさんは、聖路加国際病院の看護師だ。当日は夜勤明けの病院から直行で会場に駆けつけた。親族が看護師をしていた影響で、幼少期から看護の道に進むことを決めていたそうだ。「夜勤は大変だが、誰よりも朝日が早く見られるのがうれしい」という。

     目上の人に対する言葉遣いや、お辞儀の角度などを三輪田の6年間で学んだ。そうした所作は、西原さん自身にとっては普通のことだったが、社会に出てみると大きく役立つことが分かったという。来年からは現場の教育担当として学生の指導を任されることになったそうだ。

    先輩たちの言葉に目を開かされる

    • フランス留学で積極的な性格に変わった平田まゆこさん
      フランス留学で積極的な性格に変わった平田まゆこさん

     5人目の平田まゆこさんは富士フイルムの採用グループで勤務している。おとなしい性格で、三輪田での6年間は、周りの目を気にして目立たないようにしていたそうだ。

     その性格を大きく変えるきっかけとなったのは、大学時代のフランス留学。「フランスでは自分を主張しなければ存在自体が認められない」。勇気を出して積極的に意見を言えば、それを受け入れてくれる仲間がいることも学んだ。平田さんは10歳年下の後輩たちに「自分の人生なのだから他人を気にせず、色々なことにチャレンジしてほしい」と訴えた。当時の担任だった加納先生は、おとなしい性格の平田さんしか知らなかっただけに「彼女が一番変わった」と驚き、成長を喜んだ。

     講演の終了後、ある生徒は「部活動やテストで他人と競ってばかりいたけど、大切なのは自分の在り方だってことに気付きました」と話した。平田さんの言葉をしっかり受け止めたようだ。別の生徒は「今回の講演は職業ではなく、人を知る会だと聞いていました。自分が先輩たちのようになれているかどうかは分からないけれど、10年後にあの場に立って、経験を語れるように頑張りたいです」と目を輝かせた。

     講演会が開かれたのはちょうど中間考査試験の直後で、生徒たちは疲労感もあれば解放感もあったはずだが、先輩たちの話に聞き入っているまなざしは真剣そのもの。登壇者一人一人の話からくみ取ったこと、気付いたことを手元の資料に細かくメモしていた。

    大学進学に向けて具体化する進路指導

     この講演会を含め、同学園の進路指導はさまざまな機会に行われる。進路指導は中2の夏休みに行われる全員参加のボランティアから始まり、中3では卒業生に対する「職業インタビュー」を行う。年代も職業もバラバラな卒業生10人程度を招き、小グループに分かれた生徒たちがインタビューして、その内容や気付いたことをリポートにまとめる。

     中学生のうちは、卒業生との接点を設けて、自らも将来は社会の一員になることを実感させるのが進路指導の中心だ。中3の冬には保護者の協力を得て、親たちと社会との関わりを語ってもらう会も開かれる。家でいつも見る父、母の顔ではなく、社会人としての横顔を知ることで、社会を身近に感じてもらおうという狙いだ。

     高1になると大学進学へ向け、より具体的な進路指導が始まる。「10年後の私」の1週間後には、東京ドームで開催される合同大学相談会への参加や、大学の広報を招いての「学部学科ガイダンス」を行う。そこで興味のある大学を選び、夏休み中に最低2校のオープンキャンパスに参加し、リポートを提出することが義務付けられている。この他にも、大学講師を招いての「大学模擬講義」など進路決定に役立つイベントが目白押しだ。

     高2になると大学3、4年生の先輩に、学部を選択した動機や、講義で学ぶ内容などをヒアリングし、自分の進路を絞り込む。高3では、大学受験を経験したばかりの大学1、2年生から、スランプをどう乗り越えるか、勉強の遅れを取り戻すにはどうすれば良いかといった、具体的な受験技術についての講義をしてもらう。

     加納先生は「今の高1が大学受験する時から始まる『2020年大学入試改革』では、推薦やAOでの入試が増えることが予想されます。また、一般受験においても志望動機の提出を求められる場合を見据え、進路に関する知見やデータの蓄積は、今後ますます重要になると考えています」と話した。

     先輩たちの人生体験に耳を傾け、長いスパンと広い視野で進路を考える機会に恵まれている三輪田の生徒たちは、大学受験でも落ち着いて賢明な選択ができることだろう。

     (文・写真:安達悠、一部写真提供:三輪田学園中学校・高等学校)

     三輪田学園中学校・高等学校について詳しく知りたい方はこちら

    2018年07月09日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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