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    人間の根本を追求するIT教育と食育…清風

     中高一貫男子校の清風中学校・高等学校(大阪市)は、スーパーコンピューター「(けい)」の開発責任者を常勤顧問に迎え、コンピューターに使われる人ではなく、使う人を育てる独自のIT教育を展開している。また、同校は食育への積極的な取り組みでも知られる。この二つの教育と、両者を貫く「物事の根本を見定める」考え方について平岡弘章副校長に聞いた。

    デバイスでなくコンピューターの本質を学ぶ

     

    • 「京」の現地見学会で生徒に語る平岡弘章副校長
      「京」の現地見学会で生徒に語る平岡弘章副校長

    ――清風のIT・ICT教育の特徴を教えてください。

     全校生徒に向けてのIT教育は、コンピューターの仕組みを理解するという根本に触れる内容です。進化の早い分野なので使い方を教えても、生徒が社会人になった頃には異なるデバイスを扱うことになるでしょう。中高時代には基礎を理解することが大切です。

     コンピューターとは何なのか。エンジニアを含め、いったいどのくらいの大人がこの問いに答えられるでしょうか。生徒には、コンピューターの本質に触れ、将来、コンピューターに使われるのではなく、使う人に成長していってほしいと考えています。

     本校は男子校で約4分の3の生徒が理系志望です。大学の工学部に進学する生徒も多く、ロボットの設計製作を競う国際プロジェクト「ロボカップジュニア」に参加するクラブ活動もあります。それだけにIT教育、理系教育には力を入れる必要を感じています。

     具体的には、コンピューターのCPU(中央演算処理装置)の動作原理を理解する「人間コンピューター体験」、パソコンの組み立て、スーパーコンピューター「京」の現地見学などを中学の総合学習の授業や高校の情報の授業に取り入れています。本校は、大学や研究所などのコンピューター利用機関による研究会「サイエンティフィックシステム研究会(SS研)」に加盟する唯一の高校で、この研究会を通じて最新の技術情報に触れています。

     これらの授業は、本校の常勤顧問である井上愛一郎先生による本校独自のものです。井上先生は、スーパーコンピューター「京」の開発責任者で、理化学研究所の計算科学研究機構の統括役などの経歴を持つ方ですが、「中等教育でこそコンピューターの根本であるCPUを理解する教育が必要」という持論があり、それを本校で実践しています。

    コンピューターの演算の仕組みを体で知る

    • 教室をCPUに見立てる人間コンピューターの授業
      教室をCPUに見立てる人間コンピューターの授業

    ――「人間コンピューター」などの授業内容を教えてください。

     「人間コンピューター」は、教室を巨大なCPUに見立て、生徒たちがその中で動いている電子・電気の役割をすることで演算の仕組みを学ぶ授業です。

     教室いっぱいに典型的な回路図を作り、その回路の中で生徒が実際に命令を運びます。コンピューターなら一瞬で処理する3+5=8という簡単な足し算を、時間をかけて人間が再現することで、どのような仕組みで計算を行っているのかを学びます。

    • パソコン組立て実習を指導する常勤顧問の井上愛一郎先生(右)
      パソコン組立て実習を指導する常勤顧問の井上愛一郎先生(右)

     パソコンの組み立て実習では、学校が部品を用意し、教室の一角に店を開きます。数人で班をつくり、各班6万円の予算で買い物をします。じゃんけんで買った班から部品を買うことができます。デバイス、CPU、電源など、どの部品にお金をかけるかが工夫のしどころです。OSのインストールも行い、実際に動かせるというところまでします。部品の選択を誤った班も、じゃんけんに負けて思う部品が買えなかった班も、完成したパソコンはそれなりに動きます。その様子を見て、単に処理速度が速ければいい、価格が高ければいいというものではないことを、生徒たちは発見します。

     スーパーコンピューター「京」の現地見学では、井上先生と理化学研究所の技術者の解説に、生徒たちは大きな刺激をもらっています。私も同様です。「京」は開発中の2011年に世界最速の座を獲得したのですが、その真価は人々の役に立つ答えを出す点にあります。地球規模の気候変動シミュレーションでも「京」は大きな役割を果たしています。産業界では、車の安全性や機能部品の設計などに「京」が関わっていると聞きます。

     井上先生から「よく言われる『他国に負けないように』ではなく、人類にとってプラスかマイナスかという考えで、『京』は世界一のスーパーコンピューターになった」と聞いたとき、「世のため、人のために尽くす人を育てる」という本校の理念に重なると感じ、感動しました。また、井上先生は「日本におけるこの分野の進化を考えると、大学生やエンジニアになってからでは遅い。中高でこそ本質を知る教育が必要」と実感していたそうです。思いが重なるところがあり、2017年4月から本校の常勤顧問にお迎えしました。

    生徒の学びたい気持ちに火を付ける専門家の言葉

     「京」の現地見学会で、ある生徒が「どうやったら理化学研究所に入れますか」と質問すると、「ここは難しいよ。でも越えられないハードルではない。私も入れた。あなた次第です。待っています」という答えがあり、その生徒にとって大きな刺激になりました。

     先端分野で活躍する技術者の講演で、「今、日本の、世界の技術はここまできている。次を作るのは君らだ」というメッセージを受け取り、目を輝かせた生徒もいます。一緒に学校生活をしている教員はでなく、外部の、それも最先端で活躍する人からの言葉は、生徒の心に響きます。ですから技術分野だけでなく、各分野の第一人者に講演に来ていただくようにしています。

     本校のIT・ICT教育では全校生徒にタブレットを持たせることはしませんし、「このキーを押すと改行します、さあ、やってみましょう」という授業もしません。清風には、時流に右往左往することなく根本を見定めるという開校以来変わることのない姿勢があります。もちろん大学受験も大切に考えていますが、今風に言えば「人間教育によって大学に合格させる学校」です。

    校内の食堂は自然栽培のご飯が自慢

    • 成長盛りの生徒を応援する学校内の食堂
      成長盛りの生徒を応援する学校内の食堂

    ――食育にも力を入れているそうですね。

     2016年の校舎の建て替え時に食堂を開設しました。この食堂では、岡山県倉敷市で栽培される自然農法によるお米を使っています。学校が農家から米を買うというだけの関係ではなく、生産者と消費者が毎月、会議で顔を合わしています。

     本校は、何か新しいことに取り組む時、その物事の根本を見定めるということをします。中学高等学校は成長期のお子さんをお預かりしています。「親御さんに安心して任せていただけるような食堂にする」と強く心に誓い、本物を探し求めました。

     自然農法に注目したのは、ネオニコチノイド系農薬の報道を知ったからです。野生生物や人への影響が指摘されており、欧州では2013年以降、一部の種類の使用禁止が始まり、2018年4月、EU(欧州連合)はネオニコチノイド系農薬3種類の屋外使用を全面禁止にしました。特にフランスでは9月に、全種類が全面禁止となっています。

     自然栽培米からスタートしたのですが、今では味噌(みそ)、オリーブオイル、玉ネギ、ニンジンも有機栽培のものを使用できるようになりました。秋の文化祭では自然栽培米のおにぎり・自然栽培味噌のお味噌汁・自然栽培梅干しのセットを600食用意し、完売しました。文化祭や学校説明会の機会には、ぜひ食堂もご覧になってください。

     この食堂は、本校の卒業生が運営しています。「おかわり自由にしたいのですが、副校長、どうですか」という提案を受け、大盛りもできるし、お代わりもできるようにしました。ただ、食堂を使うルールは厳しくしています。きちんと列を作る、横入りはしない、荷物で席取りをしない、テーブルを汚したら自分で拭くということになっています。

     IT教育同様、食堂についても保護者のみなさんの意識は高く、理解があります。本校は頭髪検査をしますし、携帯電話・スマホの持ち込みは禁止。ルールに厳しい学校ですが、それは子供の将来を真剣に考えているからとご理解の上、本校をお選びいただいています。

    ――「物事の根本を見定める」ということについてあらためて。

     物事には根源に眠る本来の目的というものがあります。本校には、「社会のすべてから安心、尊敬、信頼される人間を育てる」という変わることのない教育方針があります。たとえば、誰もいない山の中でゴミを捨てるか捨てないか。そういうことは人間の根本に関わることです。学校はこれを教えなければならないと清風では考えます。人としてどうあるべきか、人に尽くすにはどうすべきか、仕事は、勉強は、と根本を追求するのです。

    (文・写真:水崎真智子 写真提供:清風中学校・高等学校)

     清風中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年11月02日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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