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    「品女メソッド」で大学進学実績アップ…品川女子

     品川女子学院中等部・高等部(東京都品川区)は昨年度から、大学進学実績を伸ばすため独自の学力向上策「品女メソッド」を導入した。これは、同校独自のキャリア教育「28プロジェクト」を学習の面から補完するシステムだ。メソッド導入の指揮を執る仙田直人校長に、その仕組みや生徒の受け止め方を聞いた。

    一つの理念のもと、スピーディーに改革が進む

    • 人工芝の中庭は、品女の中心スペース
      人工芝の中庭は、品女の中心スペース

     「ここに赴任してから困ったことは一度もありません」と仙田校長は笑顔で話した。「改革を進めても、理念が共有化できていれば、教員も同じ目標に向けて熱心に取り組んでくれます。また、都立学校に比べると早く意思決定することができ、何事にもスピード感を持って対応するため、その面でのストレスは感じません。生徒たちもとても人懐こくて元気がよく、何事にも一生懸命頑張ってくれています」

    • 「品女メソッド」の指揮を執る仙田校長
      「品女メソッド」の指揮を執る仙田校長

     仙田校長は長年にわたり、都立高校の日本史の教師として教鞭(きょうべん)を執ってきた。都教育委員会では主任指導主事を務め、前任の都立三鷹中等教育学校では校長として、中等教育の最前線でキャリア教育、ICT教育などを充実させ、進学実績を大きく伸ばした経歴を持つ。品川女子学院の(うるし)()()()理事長にその手腕を買われ、昨年度から高等部校長として赴任。今年度から中等部の校長も兼ねた統括校長に就任した。

     「私立には、公立の良さとは違った良さがあります。本校でいえば『28プロジェクト』といった、一つの理念に学校の方向性が既にまとまっているため、スピーディーに改革への対応ができるのです」

     「28プロジェクト」は漆理事長の提唱で、女性にとって人生のターニングポイントとなる28歳という年齢から逆算し、人生設計を考えさせるというユニークな構想だ。

     理想とする人生を実現するための第一歩として、生徒たちに必要なものはやはり、自分の望む進路を実現することだろう。学校の立場でいえば進学実績を向上させることにほかならない。「品女メソッド」は、そのために経験豊富な仙田校長が取り組み始めた学習システムだ。

    目標設定と結果検証、対策で実力を付ける

     「品女メソッド」では、まず学校としての到達目標を設定し、生徒、教員、保護者の全員が、模擬試験の偏差値によってその到達度を共有する。

     「生徒・保護者は、Sゾーン(偏差値約70以上)、Aゾーン(偏差値約60以上)といったカスタマイズされた成績表によって全国と学校内での自分の立ち位置を把握します。そこで、教員はSゾーンの生徒〇%・Aゾーンの生徒〇%と、学校全体の目標を設定し、その達成に向けて対策を練り、指導していくのです」

     目標達成に向けて、補習や講習を組むほか、生徒が所有するタブレットで自学自習できるサービス「スタディサプリ」を活用して、効果を上げている。

     「例えば、中間テストで点数が取れなかった生徒が20人いるとします。でも、全員が同じ間違いをしてはいません。それならば、画一的な補習授業をするのではなく、20人それぞれに『あなたはスタディサプリのここを勉強しなさい』と指定して、間違いを確認させながら、対処した方が効果的なのです」

     到達度は学年によっても差があるため、熱心に取り組んでいる学年の情報をシェアすることも大事にしている。ある学年ではスタディサプリに沿った小テストを作って実施し、成果を検証することで成績を向上させた。そうした取り組みを全学年で共有化しているという。

     到達目標を設定するだけでは十分ではない。目標に向けて学習していった結果を検証し、対策を立てることが必要だ。同校は、6年生(高3)のために年に3回「品女ケース会議」を実施している。会議では6年生全員の模試成績、到達度、志望大学の情報を担任が説明し、教員全員でその状況を把握する。

     7月は夏の講習に向けての対策、11月は文系・理系に分かれて会議をし、3学期にはセンター試験の結果を受けて2次試験の対策を練る。

     「本校の教員はみな生徒思いであり、生徒について話し出すと止まりません。センター試験で成功した子、失敗した子、それぞれに細かく対策を練ります」

     「授業や講習でも、こうした情報を事前に把握していると、その内容が違ってきます」。担当以外の教員も情報を共有することで、生徒を支える学校全体の指導力が上がるという。

     また、外部機関を利用した生徒による授業評価も取り入れた。

     「これまで本校でも授業アンケートは行っていましたが、昨年度から外部の業者に委託して、より客観的に教員が自分の授業を分析してもらい、授業改善につなげています。また、若い教員がベテラン教員の授業を見学する機会も増えており、さらなる授業の資質向上を目指しています」

     さらに、担任との面談を定期的に行うほか、校長自らが5年生(高2)全員と面談して、受験勉強へのモチベーションアップを図り、「学校全体であなたたちを応援する」というメッセージを生徒たちに伝えている。

    大学の先を見据えてモチベーションを高める

     「品女メソッド」の導入の成果はどうか。昨年度の卒業生(211人)は国公立大学へ過去最高の23人が現役合格した。私立大学は文部科学省の指導で定員が厳格化され、合格者数が減る傾向にあったが、早慶上理に57人、GMARCHに111人、医学部医学科に6人が現役合格しており、大いに効果を上げたようだ。

     「品女メソッド」が成功したのは教師の努力だけでなく、生徒自身のモチベーションが大きく関わっている。たとえば生徒たちの要望を受け、今年度から放課後に利用できる自習室の開館時間を延長した。

     「驚いたのは、廊下のロッカーを机代わりにして、立って勉強する生徒がたくさんいることです。眠くなったら、廊下で立って勉強して、眠気が覚めたら戻ります。自学自習の姿勢がしっかり根付いてきたといえます」

     「大学受験を頑張り通すためには、大学卒業後に自分が何をしたいのか考えるキャリア教育が大事です。それがないと、ただ単に受験だけが目標になってしまいます。本校に入学したばかりの生徒を対象としたアンケートで、自分の性格が『積極的』と答えた生徒は4割ですが、他の生徒の影響を受け、徐々に積極的な姿勢に変わっていきます。やはり、『28プロジェクト』によるさまざまな体験を通して、将来に対する自覚が育まれてくるからでしょう」と仙田校長は分析する。

    • 「28プロジェクト」の一環で起業の流れを経験する
      「28プロジェクト」の一環で起業の流れを経験する

     「28プロジェクト」は、大学を卒業した後の28歳の時点を見据え、生徒に自分の人生を考えてもらう同校のキャリア教育の取り組みだ。企業とコラボレーションした総合学習や、文化祭に向けて模擬会社を起こす「起業体験プログラム」などで、将来に目を向けさせる。また、中等部の時から、スタンフォード大学などが取り入れているデザイン思考を学び、数字で測れない生徒たちの非認知能力を高めている。社会の第一線で活躍している人々の特別講座も数多く開設し、常に新鮮な刺激を与える仕掛けを用意している。

     生徒たちは人生を見通す長い視点を「28プロジェクト」で学び、大学受験へのモチベーションを高める。「品女メソッド」はそのとき、力強いサポートになる。

    (文:小山美香 写真:品川女子学院中等部・高等部提供)

     品川女子学院中等部・高等部について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年07月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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