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    生徒が自ら作って成長する修学旅行…桐朋

     桐朋中学校・桐朋高等学校(東京都国立市)で毎年10月に行われる高2の修学旅行は、生徒たちが自ら行き先を決め、宿泊先の選定や旅行会社との折衝まで行う。こうした過程が、生徒の成長を促す契機にもなっているという。昨年、修学旅行を実施した高3生と現在準備を進めている高2生、それぞれの学年の担当教員に聞いた。

    準備は大変でも自由さが楽しい

    • 広報委員会の河村理人教諭
      広報委員会の河村理人教諭

     同校広報委員会の河村理人教諭によると、生徒自ら企画運営する修学旅行は戦後間もなく始まった。「中学の修学旅行が実施されることになった時、高校生から『僕たちも修学旅行に行きたい』と声が上がったのがきっかけです。自主性を尊ぶ校風もあって、『すべて生徒自身でやるならOK』という話になったそうです」

     現在は、前半の3日間でクラスごとに決めたコースを巡り、その後京都を2日間見学する4泊5日の日程が定着している。各クラスで「総務」「パンフレット・広報」「京都」担当の修学旅行委員を選ぶ。さらにその中から学年リーダーを選出し、彼らを中心に情報収集から行き先決定、宿や交通機関の手配まで行う。学年の担当教員は、夏休みに行き先を下見したり、外部との打ち合わせ日程を調整したり、クラス会議に立ち会ったりと、補助に徹する。

     高1の3学期に修学旅行準備委員会を発足させ、サンプルコースの作成・発表などを行う。高2に進級後、新たなクラスで修学旅行委員を選び、準備が本格的にスタートする。行き先は、予算や移動時間がかかりすぎる地域を除くなど、制限はあるが、基本的に自由だ。修学旅行委員が地域候補をクラスでプレゼンテーションして行き先を決め、コースの詳細を作っていく。

     昨年の前半日程を見ると、瀬戸内海を挟む4県や、京阪神3府県の瀬戸内海側・日本海側といった広範囲の周遊コースから、広島の原爆関連史跡や名古屋・安土・彦根の城巡りなどテーマ性を押し出したコースまで、さまざまだ。

     コース作りには、外部の人々との連絡や問い合わせ、時に交渉も必要だ。昨年の修学旅行委員長を務めた萩原一樹君は、「大人と話す機会がとても多い。きちんとやりとりできるよう頑張りました。スケジュールも予想以上に厳しく、計画性の大切さを痛感しました」と話す。その一方、「中学の修学旅行に比べてすごく自由。自分たちで作ると、こんなに楽しいのかと思いました」とも。苦労が多いぶん、喜びも大きいようだ。

     旅行会社との連絡や行程の取りまとめを行った総務チームのリーダー西川真寛君は、「行き先について随分勉強しました。知識がないと旅行会社の人に希望を主張できず、本当に行きたい場所に気付けないまま提案された動きになってしまうので」と、生徒たちが修学旅行にかける意気込みをうかがわせた。

    旅のエッセンスを込めるパンフレット

     パンフレット作りも重要な仕事だ。教員が下見で撮影してきた現地の写真や、各クラスのコース図と実施要項、さらに全コースの見所ガイドなどを盛り込み、A5判で150ページほどにまとめる。

     パンフレットのタイトルには、修学旅行全体のテーマをあてる。昨年は「思索西知」。「管子」を出典とする「思索生知(筋道を立ててじっくり考えると良い知恵が生まれるの意)」に、今回の行き先である「西日本」を組み合わせた造語だ。テーマを考案したのはパンフレットチームのリーダー由布ジュディ君。「この旅行でいろんな人と知り合い、考えを深めたいという気持ちを込めました」

     7月から夏休みにかけて構成を練り、9月に生徒が手分けして原稿を作る。特に手間がかかるのが見所ガイドの部分で、ガイドブックやウェブサイトの情報を単に引用するのではなく、旅の目的を意識しつつ文章にまとめるという。

     昨年のパンフレットチームのサブリーダー高山慎太朗君は、原稿のスケジュール管理について「原稿を頼む時は、いつまでにどのくらい進めてほしいとか、具体的に示しながら話すようにしました」と話す。準備の進捗(しんちょく)を報告する広報紙もまめに発行したそうだ。授業や部活などで日々忙しい中、修学旅行への参加意識を維持するためだ。

    先生たちが生徒に「出会い」を提案

    • 「能」を体験する生徒たち
      「能」を体験する生徒たち

     後半日程の京都の行き先は「京都」チームが提案して決めていく。昨年は全員で能を鑑賞したほか、座禅体験や和菓子製作体験、新撰(しんせん)組の史跡訪問、京都大学見学などさまざまな選択コースを楽しんだ。また、担当教員から自由行動の時間を利用した特別企画の提案もあった。「出会いのチケット」と題し、京都で特色ある仕事や活動を行っている人々を訪問するプログラムだ。

     「京都に住む独立研究者の森田真生さんが桐朋の卒業生で、訪問を打診したところ、さまざまな方面のお知り合いを紹介してくれて8コースを用意できました。皆さん歓迎してくださり、いろんなものを惜しみなく見せてくださいました」と、昨年修学旅行を担当した田中敦英教諭は話す。

     由布君は出版社「ミシマ社」の三島邦弘代表を訪問した。古民家を改装した書店兼社屋で出版の話を聞き、書店に置く本をアピールするポップ看板を制作した。「何を重点に伝えるか考えるのが面白く、午前中で終わる予定が午後2時くらいになりました」

    • 京都大学白眉センターで大学の研究に触れる
      京都大学白眉センターで大学の研究に触れる

     高山君が訪ねたのは、小惑星イトカワを研究している京都大学白眉センターの瀧川晶助教。「1台数億円の電子顕微鏡をのぞいたり、月の鉱物に触ったり、大学院の人の話を聞いたりして、大学の研究の現場に触れました」という。

    • 笑顔で生徒の成長のエピソードを話す田中教諭
      笑顔で生徒の成長のエピソードを話す田中教諭

     上原隼教諭は「協力してくださった方々は、高校生にやさしいですね。そして、全力で支えてくださる。これは高校生の特権だと思います」と話し、「見学する態度をとっても、大人になった感じ。信頼できる人間になったなあと思いました」と感慨深げだった。田中教諭は、「私たちが準備の流れを把握していなくて生徒にたしなめられることもありました。でもそれはそれでうれしいことです」と笑顔を見せた。

    今年の委員も意気込みたっぷり

     今年修学旅行へ行く高2生は、取材した7月上旬の時点で各クラスの行き先がほぼ固まっていた。今年の修学旅行委員長の東舜一朗君は、「委員会の活動と一般生徒の意識が離れないようにしたい」と意気込みを語った。

     高2生たちは、高1時から広報に力を入れ、過去の行き先を紹介したり、アンケートで生徒の意見を募ったり、行き先候補別の見所スポットもランキング形式で紹介したりするなど、工夫してきたという。取材の場に同席した高3生からも「僕らの時よりちゃんとやってる」と感心の声が上がっていた。

     総務チームのリーダー吉橋隆哉君は、「準備の面では特に不安はありません」としながらも、「全員が節度と品位を持って楽しめるよう意識の向上を図っていきたい」と気を引き締める。

     今年の修学旅行担当の小野島正道教諭は、「途中、ギクシャクもあったが、意見がぶつかっても最終的に理解し合い、仲間になっていく。これが桐朋の修学旅行の良さですね」と話した。

     大きな行事を自ら作ることで、社会で生きる力を身に付けていく。生徒も教員も「大変なんですよ」と言いながら、その過程を楽しんでいた。

    (文・写真:上田大朗、一部写真提供:桐朋中学校・桐朋高等学校)

     桐朋中学校・桐朋高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年10月02日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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