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    大学生との英語討論で見えてきたCLILの成果…横浜女学院

     横浜女学院中学校高等学校(横浜市)で8月、生徒たちと東京大学及びソウル大学の学生、サレジオ学院中学校高等学校(同市)の生徒による英語討論会が開催された。「理想の教育」をテーマに学生、生徒たちは真剣な議論を繰り広げた。横浜女学院がCLIL(内容言語統合型学習)を導入して2年目、目に見える成果が表れてきた。

    大学生らとの討論を知的な刺激に

    • FICS副代表の宋さん(中央)の司会進行で、議論が進む
      FICS副代表の宋さん(中央)の司会進行で、議論が進む

     この英語討論会を呼びかけたのは、東京大学及びソウル大学の学生で作る学術文化交流サークル「FICS」副代表の宋恩知(ソンウンジ)さん(東京大2年)。宋さんは横浜女学院の卒業生で、「理想の教育」について英語で討論する「Discussion Meeting」を企画し、母校での開催を実現した。

     「教育とは、高校生にも大学生にも身近な問題で、話しやすいテーマです。日本と韓国の若者同士が直接向きあってお互いの意見を出して交流することで、若者から日韓関係を良くしていきたい」と宋さんは開催の目的を話す。英語科主任の白井龍馬教諭も「日頃のCLILの学習成果を発揮できるチャンスでもあり、大学生らとの交流で知的刺激を受け、勉強に対するモチベーションアップにもなる」と快諾した。

     英語討論会には、東京大学から8人、ソウル大学から11人の学生と、サレジオ学院から高3生12人、横浜女学院からは高1生と中3生の12人が参加した。

     開催直前の2日間、サレジオ学院と横浜女学院の生徒らはCLIL形式の準備活動を一緒に行い、日韓の教育制度の違いや、日本の教育制度を英語でまとめ、問いを立てるなどして、討論会に備えた。

    • 膝を突き合わせ、英語で討論する大学生と中高生たち
      膝を突き合わせ、英語で討論する大学生と中高生たち

     当日は、全員の自己紹介の後、宋さんの司会進行で討論が始まった。まず5、6人からなるグループを作り、各グループ内に東大、ソウル大、サレジオ学院、横浜女学院の学生、生徒を配し、英語で意見を交わし合った。

     最初のテーマは「日韓の学校制度の比較」。日本の中学受験や中高一貫校が話題になった。ソウル大生が「日本では、なぜ小学生が猛勉強しなければならないのか。小学生に受験をさせるのはかわいそう」と意見を述べると、サレジオ学院の生徒は「僕の場合は、周りがみんなやっていたから自然だった。そんなに大変だったという気持ちはない」と答えた。さらに、「なぜ私立の中高一貫校を選んだのか」などと活発に議論が続いた。

     次いで「日韓の大学入試制度」にテーマを移した。韓国では学力だけでなく、ボランティアの経験や面接などで総合的に評価される入試制度だという。東大生が「日本もAO入試や推薦入試が導入されているけれども、推薦入試では筆記試験が重視されないという特徴から『あくまで一般入試を補完するもの』という認識をする人が多く、まだまだ一般受験が王道だという考えがある」と日本の入試事情を説明した。高校生たちからは「2020年の大学入試改革では、記憶力よりも思考力を試す試験に変わる。より良い方向へ向かっているのではないか」という意見があり、議論はだんだん白熱していった。

    • 英語で堂々と意見を述べる横浜女学院の生徒
      英語で堂々と意見を述べる横浜女学院の生徒

     部活動や委員会、生徒会などの「課外活動」についても話し合われた。日本の部活動は、世界的に見ても激しい活動といわれ、「私が所属しているテニス部では週5日活動している」と横浜女学院の生徒が話すと、「おお、それはハードだね」とソウル大生が驚く場面もあった。また、ソウル大生が「韓国の文化祭はステージ発表が中心になる場合が多いです。日本の文化祭はバリエーション豊かで素晴らしい。韓国では、お化け屋敷のような出し物は許可されないことがある」などと話した。

     議論に熱が入ってくると、ついつい日本語や韓国語も飛び出し、ときには身ぶり手ぶりも交えながら、お互いの意見を伝え合っていた。

    ミスを恐れずに発言することの大切さ

     討論会の最後に、全員が輪になって教育についてさまざまな意見を出し合った。

     「日本は教育をもっと変えていくべきだと思う。入試に大きなウエートを置き過ぎる。できる人の才能だけを伸ばすのではなく、誰もが自分の才能を伸ばせるようにするべきだ」

     「日本では都会では教育が盛んでも、田舎では塾などもほとんどなく、教育の地域格差、経済格差がある。機会均等のために是正するべきだと思う」

     「韓国は学歴社会で、大学受験のためだけの教育になっている。高3ではクラブ活動もやらず、受験一色になる。勉強だけではなく、生徒会やクラブ活動などから得られる学びも大切だと思う」

     「韓国の高校生が大学受験のために、熾烈(しれつ)な受験勉強をしているので驚いた。韓国では小学校から高校まで、ほとんどが国立だが、日本では小学校から大学まで、国公立か私立か選べる。選べることが大事だ」

     「今日は大学生から中学生まで、日本と韓国のさまざまなバックグラウンドを持つ人たちがこうして交流できた。大事なのはこうしたダイバーシティーだ。そして考え続けることだ」

     討論会を企画した宋さんは「自分の想像以上に深いディスカッションができて良かった」と満足そうに話した。また、中高校生たちが懸命に発言する姿に接し、大学生たちも、「ミスを恐れずに勇気をもって話すのが、英語が上達するためにも、ダイバーシティーの中でさまざまな人々と交流するためにも大事なこと」とあらためて確認し合っていた。

    問題意識が広がり、英語へのモチベーションが高まる

     討論会に参加した横浜女学院の高1生、河村玲奈さんは、「自由に意見を交わすオープンディスカッションに初めて参加したので、いい勉強になりました」と話す。「大学生に、『答えを出すことがすべてではなく、その過程や意思が大事だ』と言われたのが心に響きました」。ますます英語を勉強したいという気持ちが強まったという。

     中3の波田野優子さんも討論に参加して、「韓国のことはあまり知らなかったのですが、韓国の大学生と話して、とても身近になりました。彼らの経験したことがリアルに伝わってきて、自分の視野が広がりました」と話す。波田野さんは実用英語技能検定(英検)準1級を持っているが、今回、相手の話す内容は分かっても、自分の意見や質問をうまく話せなかったことを反省点とし、「さらに英語力を伸ばしたい」と話していた。

    • 「CLILの成果が見えてきた」と話す白井教諭
      「CLILの成果が見えてきた」と話す白井教諭

     白井教諭は「『大学生を相手に話せた』と自分の成功体験にできた生徒も、『もっと話したかった』と悔しい思いをした生徒もいたと思います。どちらも、その気持ちがさらに頑張ろうというポジティブな気持ちにつながったようです」と話す。

     「今回の討論会で改めて、CLILの効果を感じました。本校の生徒は英語で学ぶことが当たり前になっているので、ディスカッションする機会をさらに設けて、単なる英語教育だけでなく、討論の仕方を学び、学ぶ内容もさらに深めていきたい」

     英語技能を身に付けるだけでなく、さまざまな分野の問題を学び、考える姿勢を養う同校のCLILの授業は2年目に入ったばかりだが、すでにその効果が見えてきた。今後の展開も大いに期待できそうだ。

    (文・写真:小山美香)

     横浜女学院中学校高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年10月29日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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