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    「思考力セミナー」で子供の潜在能力を見出せ…聖学院

     聖学院中学校・高等学校(東京都北区)は今春、新たに「難関思考力」入試を導入し、「思考力入試」の幅を広げた。教科中心の学力を超え、ものづくりや観察の力が試される「思考力入試」を体験してもらうため、同校は学校説明会の場で「思考力セミナー」を開催している。レゴブロックなどを使って行われるユニークなセミナーの様子やその狙いを紹介する。

    答えのない課題の解決力が求められる

    • 学校説明会であいさつをする角田秀明校長
      学校説明会であいさつをする角田秀明校長

     聖学院中学校・高等学校は、一般入試や英語選抜入試のほかに、従来の教科中心の入試とは異なる「思考力入試」を2012年から実施している。実社会の中で起きる明確な答えのない課題を分析し、答えを導き出す「思考力」を見いだすことを目的としている。すでに導入している「創造的な思考力」の評価にウェートを置いた「思考力ものづくり」入試と、「批判的な思考力」の評価を重視した「思考力+計算力」入試に加え、今春はこの二つの思考力を総合的に問う「難関思考力(思考力+面接)」入試も登場した。

     受験生にとって、まだなじみの少ないこれらの入試の一端を体験してもらうため、同校が学校説明会の中で希望者に対し、実施しているのが「思考力セミナー」だ。

    • 緊張した面持ちで説明を聞く小学生たち
      緊張した面持ちで説明を聞く小学生たち

     取材に訪れた6月9日のセミナーは50人の小学生が参加した。学校説明会の会場で角田秀明校長のあいさつを聞いた後、参加者はセミナー会場となる教室に移動し、4人1組でテーブルを囲んだ。まず、教師が自己紹介し、セミナーでの約束事として「積極的に話をする」「他の人の話を聞く」「意見を否定しない」「『それ、いいね』をたくさん言う」「一緒に楽しむ」といったことを子供たちと確認した。

    病気の象を助ける方法を考える

    • 緊張がほぐれ、グループで協力しながら作業していく
      緊張がほぐれ、グループで協力しながら作業していく

     周りは知らない人ばかりなので、子供たちの表情は緊張感に満ちていた。そこで思考力セミナーの本題に入る前に、「アイスブレイク」として子供たちそれぞれに作業をしてもらった。まず、箱の中からブロックを一つかみし、それら全てを使って3分間でタワーを作る。作り終わったら自己紹介を兼ねて、同じテーブルのメンバーに自分のタワーの「自慢のポイント」を発表する。

     発表を聞く3人は、メンバーの名前と自慢のポイントをプリントにメモする。それぞれの発表が終わったら、「話をしていて気付いたこと」「自分が話して気を付けたこと」「話を聞いていて気付いたこと」を書き出す。自分の考えをまとめて言葉にすること、相手の名前を知ること、ブロック作業やメモなど、手を動かすことで徐々に緊張がほぐれる仕組みだ。

     緊張がほぐれたところで本題に入る。この日の課題は「ランディ君を救え!」。ランディという象が病気になってしまったため、薬を飲ませなければならないという設定だ。その方法をグループで相談しながら模索するのだが、いくつかの条件がある。「象のランディは凶暴で人には懐かない」「薬は大嫌い」「動物となら仲良くできる」「ボール遊びが好き」。これらの条件を満たした解決策を見いださなければならない。

     まず子供たちはめいめいアイデアを考えてプリントに書き出す。その後、他の人の意見を聞いてグループで一つの解決策をまとめる。多くのテーブルで議論が飛び交っている。セミナーが始まってからここまでで30分。

     次は、方向性が決まった解決策をレゴブロックで表現していく。作業時間は約7分だ。製作途中にも「もっとこうしたらどうか」「これは必要ないのではないか」と、試行錯誤を繰り返す姿が見られた。

     「ボール遊びで水飲み場まで象を誘い出し、薬を溶かした水を飲ませる」「クレーンを使って象に近付かずに薬を飲ませる」「象が寝ている間にプレハブを建てて逃げられなくする」など、各テーブルでさまざまな解決策が飛び出した。

    • レゴ・シリアス・プレイ・メソッドと教材活用トレーニングの修了認定者の内田真哉教諭
      レゴ・シリアス・プレイ・メソッドと教材活用トレーニングの修了認定者の内田真哉教諭

     なぜ、レゴブロックを使うのか。セミナーを担当した技術科主任の内田真哉先生によると、このセミナーには「自分の意見を伝える」「他人の話をしっかり聞く」「自分と他人の意見をコラボレートし、新しい考えを導き出す」という三つのポイントがあるが、これらは中学受験世代の男子にとって苦手な領分なのだという。しかし、レゴブロックの作業を入れて、いわばワンクッション置くことで、驚くほど自分の考えを表現したり、他者と対話したりすることがスムーズになるという。レゴ・シリアス・プレイ・メソッドと教材活用トレーニングの修了認定者である内田先生の本領が発揮される場面だ。

     これらの作業が終わったら、今度は最終的な解決方法をプリントにまとめる。隣り合ったテーブル同士で、自分たちの方法を発表し合い、この日に学んだことを200字にまとめ、セミナーは終了した。

     再び説明会会場へ戻る頃には緊張していた生徒の顔には笑顔があふれ、昔からの友達同士のように会話が弾んでいた。子供たちに感想を尋ねると、「楽しかった」と多くが笑顔を見せた。このセミナーはリピーターも多く、回を重ねるごとに顔見知りが増える。入学する時には友達になっていることも少なくないという。

    思考力入試は「自分の思いを伝えられる入試」

     セミナーの特徴、目的について内田先生が説明する。「2020年の教育改革、2045年に訪れると言われるシンギュラリティ(技術的特異点)を見据え、どのような子供を育てなければならないのか。2科・4科の試験では測れない子供の能力を発掘するにはどうしたらよいかという議論から始まり、私たちは『思考力入試』という一つの答えにたどり着きました。ただ、いきなり思考力を重視した入試をしますと公布しても、受験する子供も保護者も混乱してしまいます。そこから生まれたのが今回の思考力セミナーです」

     「2科・4科の学力試験は一発勝負なので、緊張で実力が発揮できないことも少なくありません。『思考力入試』は、そんな受験生にもチャンスを与えることができます。また、決められた答えを書く試験では不可能な『自分の思いを伝えられる入試』だと思います。柔軟な思考力、発想力を持っている子は高い潜在能力を秘めています。そのため、入学の時点で多少、学力が伴わないとしても、入学後の6年間で私たちがじっくり育てればいいと考えています」

     思考力入試について心配されることの一つに、採点の客観性がある。これについて内田先生は「一つの答えがない入試のため、採点が難しいのではという声をいただきますが、明確な基準を設けています」と保証する。点数にばらつきが出ないよう、複数人の教師が1人の受験生の答えを採点するほか、問題の理解力や表現、社会問題への関心などチェック項目を設け、各教員が相談の上で点数を決めるという。「例えば、今回のセミナーで実施した『ランディ君を救え!』では、用意された条件を無視して、麻酔銃で象を眠らせて薬を飲ませるといった、ありきたりな回答では得点は低くなります」

     当初、思考力セミナーは5人の教員で始まったが、現在では20人の教員が取り組んでいる。レゴブロックを使った指導も、入試だけでなく通常授業でも展開されていて、良い影響が表れているそうだ。教師間で行われる研修会でも、知識を与えることを目的とするのではなく、生徒の考え、思いを引き出そうとする取り組みが増えているという。

     生徒だけでなく、教師の成長も促す「思考力セミナー」を通し、同校は21世紀を担う人材を育てる学び舎として、今後も発展していくに違いない。

    (文・写真:安達悠 一部写真提供:聖学院中学校・高等学校)

     聖学院中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年08月10日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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