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    「和の心」受け継ぎ女子のリーディング校へ…四天王寺

     四天王寺高等学校・四天王寺中学校(大阪市)は関西屈指の女子進学校だ。特に医・歯・薬系への大学進学率の高さで知られるが、単なる受験勉強を超えた教育に古くから取り組んでいる。指導の礎となるのは聖徳太子の説いた「和の心」だ。「真の学力には多様な体験が欠かせない」と語る稲葉良一校長に教育論を聞いた。

     

     同校は、聖徳太子が創建した四天王寺の境内にある。その歴史は、聖徳太子の没後1300年にあたる1922年、四天王寺管主だった吉田源應大僧正が創設した天王寺高等女学校に始まる。第2次世界大戦後の学制改革に伴って1947年に中学を設立し、翌48年に天王寺高女を高校と改称した。聖徳太子の精神を礎としているのが同校の教育の特色で、学園訓にも聖徳太子の十七条憲法にある「和を(もっ)て貴しとなす」を掲げている。

     

    聖徳太子が敬慕した勝鬘夫人を手本に

    • 倫理・道徳観の涵養(かんよう)と情操教育が大切と語る稲葉良一校長
      倫理・道徳観の涵養(かんよう)と情操教育が大切と語る稲葉良一校長

     男女共学化する私立校が多い中で、なぜ女子教育かとよく聞かれます。天王寺高女が創設された当時、社会的に立場の弱かった女性の自立は大きな問題でした。そこで、太子様が四天王寺を創建した際、「四箇院(しかいん)」と呼ばれる四つの施設を設け、療養・福祉・教育などの慈悲救済事業を提起されたことを踏まえ、この中の教育部門「敬田(きょうでん)院」の精神を受け継いで、高女を創設したのです。

     人は集まれば党派を組み、争う。太子様はこうした人間の本性を見抜き、十七条の憲法や冠位十二階の制度を定め、その戒めとして「和の心」を説かれました。この「和の心」は、自分のことを忘れて他人のために尽くすという、仏教の「忘己利他(もうこりた)」の教えでもあります。

     古来、その教えを体現してきたのは女性でした。太子様が敬慕された仏教の先達にも、インドの勝鬘夫人(しょうまんぶにん)という方がおられました。この方は人間性豊かな(りん)とした信念のある賢夫人でした。私たちはこのような、社会に資する女子の育成こそ肝要と考え、高女以来、その精神を継承しています。

     太子様の説いた1400年前の教えは今も不動です。むしろ変化の激しい先行き不透明な時代を迎え、女性の特性を生かした教育が今まで以上に必要だと受け止めています。平成の今日、女性活躍社会への期待が日増しに高まる中、女子教育に専念している本校にこそ、むしろ「先見の明」があったと自負しています。

    生徒はiPS細胞のようなもの

     今春の中学入試の受験者総数は前年度の512人を大きく上回る621人に膨らみ、特に、医・歯・薬系学部への進学を目指す「医志コース」では、前年度の402人から459人となった。今春は「英数I・II」「医志」各コース共通の試験方式を、4科だけから、4科か3科(国語、算数、理科)の選択方式に切り替えた。入試の間口の広がりも人気の理由の一つだろうが、やはり高い大学進学実績が評価されていることは間違いない。2018年度の同校の大学進学実績は、国公立大医学部(医学科)への合格者が63人(前年度50人)と過去最多を記録。国公立大全体でも過去10年間で最多の293人(同234人)が合格し、難関私大への合格者数も大きく伸びている。

     

     地道な努力が評価されたと思います。入試は合格すれば全て良しではありません。合格後の伸びしろにもキメ細かく配慮して、試験問題を考えています。中学は人生の土台を作る時期です。生徒はいわばiPS細胞のようなもので、何にでも変わる能力、可能性があります。この成長期に、チャンスがあればまず挑戦し、できるだけ多くの体験をする。そういう中から自らの特性や将来何をしたいかも見えてくるのです。

    • 大阪大学の研究室を訪問し、質問する四天王寺生
      大阪大学の研究室を訪問し、質問する四天王寺生

     4年前に「医志コース」を設置した狙いも、将来の医師うんぬんの考えからではなく、文字通り広く慈悲救済、人助けの志を育むという思いからです。本校は大学をゴ―ルとする進学校ではありません。それは、教育内容や生徒の姿を見ていただければ一目瞭然でしょう。そうした本校の取り組み姿勢が受験者増の大きな要因と受け止めています。

     

     受験勉強ばかりでなく、さまざまな体験学習に力を入れているのも特色だ。中高の学校案内には、年間計画で京大医学部研究室訪問・法学部ツアー、大阪大出張講義、病院研修ツアー、卒業生の弁護士らによる講演、中3の修学旅行では、東大・早稲田大ツアーなどのプログラムが目白押しだ。また、部活動でも健闘していて、日本生物学オリンピックや絵本翻訳、衛星設計、声楽アンサンブルコンクールなど全国大会での数々の受賞に加え、昨年度から始まった大阪大SEEDSプログラム(探究コース)に自然科学部生物班が選ばれている。

     

    • 声楽アンサンブルコンクール前に円陣を組む四天王寺生
      声楽アンサンブルコンクール前に円陣を組む四天王寺生

     地道に努力する、決して諦めない、失敗は気にしない、お互いを認め合う、世話好き、横の(つな)がり作りが大変上手。こうした女性の特性を踏まえ、何より生徒の自主性を大切にしています。自ら進んで学び、考え、行動し、課題を克服する。それが本校の伝統、校風であり、授業や部活、学校行事、課外活動など全ての分野で該当します。失敗も含め、幅広い体験をして初めて、生徒は自ら判断、対応できる能力を身に付けることができます。その成果はレポート作成やプレゼンテーション、討論授業などではっきり見て取れます。またどの部活でも、教え、教えられる関係で切磋琢磨(せっさたくま)しながら、上級生がうまくチームをまとめ、中高一貫6年の良さをフルに発揮しています。

    AIと英語で対話する授業の試み

     こうした体験学習や部活動での取り組みは、大学入試改革で問われる「思考力・判断力・表現力」を養う教育と一致するものではないでしょうか。大学後をにらんだ我々の「真の学力」作りの取り組みは、むしろ、それに先行しています。真価は既に実証済みであり、自信を深めているところです。

    • 生徒によるプレゼンテーション大会
      生徒によるプレゼンテーション大会

     今春、日頃から交流のある大学教員の呼び掛けがきっかけで、AI(人工知能)と英語で対話する授業の実験を始めました。デジタル・ナレッジ社(本社・東京)との提携で、中高の生徒と教員が英語教材とAI授業をセットで開発します。全国初のチャレンジングな試みです。生徒は皆、自分のことと受け止めて前向きに協力してくれています。AI時代の新たな学校現場を切り開くカギになると(ひそ)かに期待しています。

     本校は4年後に創立100周年を迎えます。女子教育のリーディング校を目指して、これからも励んでいきたいと思います。

    (文:佐藤徳夫 写真:中学受験サポート 一部写真提供:四天王寺高等学校・四天王寺中学校)

     四天王寺高等学校・四天王寺中学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年08月01日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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