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    仏教精神を生かし、心豊かな人格形成…京都女子

     「京女」の愛称で親しまれる伝統校・京都女子中学校・高等学校(京都市)は、浄土真宗の開祖・親鸞(しんらん)聖人の仏教精神を教育理念とし、豊かな心と高い教養を備えた人間の育成を目指している。女子教育への信念や現在、力を入れている取り組みなどについて林信康校長に聞いた。

    100年を超える女子教育

    • 「しなやかで力強い女性が育つ環境が整っています」と話す林校長
      「しなやかで力強い女性が育つ環境が整っています」と話す林校長

     京都女子学園は1910年の創立以来、100年を超す長い女子教育の伝統を守っている。東山七条の交差点から東に望む阿弥陀ヶ嶺へと延びる坂道は、沿道に建つ学園傘下の京都女子大学、京都女子中学校・高等学校の学生、生徒らが登下校に行き交う姿から、地域の人々に「女坂(おんなざか)」と呼ばれ、親しまれているほどだ。

    ――「京女」が考える女子教育の意義について聞かせてください。

     本校は明治時代に開学し、100年以上女子教育を続けていますが、女子の自立には現在でも、まだまだパワーが必要です。世界経済フォーラムによる2017年度の「世界ジェンダー・ギャップ報告書」を見ても、日本は対象144か国中114位というのが実情です。

     本校は、「我が国の文化の向上には、仏教精神に基づいて婦人の教養を高める必要がある」という創立者らの思いを受け継ぎ、時代とともにどんどん教育内容を進化させて、しなやかで力強い女性を育てています。

     本校は1969年という早い時期に、中高一貫教育制度を取り入れています。別学という教育環境には、生徒がジェンダーの枠にとらわれないで済むという大きなメリットがあります。男子だからリーダー、女子だからサポートなどと意識することなく、生徒たちは6年間、女子だけで伸び伸びと学校生活を送ることができます。

    ――男女別学から共学へ転換する近年の傾向についてどう考えますか。

     男女別学校が共学化すれば、受験生を男女に広げることができるため、経営の面からは有利でしょう。学校経営は(おろそ)かにできないことですが、教育そのものとのバランスに十分に注意を向けなくてはなりません。

     私学の最大の特徴は独自性、個性です。創立者の思い、建学の精神があるからこそ個性が生まれます。ですから、女子教育を掲げて創立した学校が共学になれば当然、理念も変わってしまいます。また、たとえば本校には、女子の特性を理解した上での丁寧な学習指導、生活指導の長年にわたる蓄積がありますが、仮に共学化したとすれば、理念だけでなく、こうした蓄積なども失われることになるでしょう。

     ですから、本校が100年以上引き継いできた建学の精神を変える必要は感じません。本校が取り組んできた伝統的な女子教育の内容に賛同し、中高大の10年間を京女で過ごさせたいと希望する保護者や、他大学への進学を見据え、中高は女子だけの環境で過ごさせたいと希望する保護者がいます。また、本校の卒業生に対して企業や地元の方々からも高い評価をいただいています。

    豊かな心を育む宗教教育

    • 入学式や卒業式も仏式で行われる
      入学式や卒業式も仏式で行われる

    ――「京女」の教育理念を説明してください。

     「自立・共生・感謝」という三つの柱を教育の理念としています。自分自身と向き合い、人との関わりの中で生かされ生きていることを知り、そのことに感謝するという意味です。この三つの理念に基づき、主体的に判断できる自立した女性を育てることが本校の目標です。

     本校の生徒たちは思いやりがあって、互いにとても仲が良い。自分自身と向き合う「自立」の精神を通して、自分とは異なる個性を持ったお友達をそのまま受け止める寛容性が育まれているからだと思います。逆に、互いの多様性を認め合う関係だからこそ、ありのままの自分でいられるとも言えます。思春期にはとても大切なことです。

     この考えは「自己肯定感を持たせる」という考えと似ていますが、異なるものです。自己肯定感を持たせるために褒める教育は、生徒本人の過信につながる恐れがあるからです。本校では生徒が、他者から必要とされ、存在を認められる「自己有用感」を持てるようになることを重視しています。

     次に「共生」について考えてみましょう。ヒューマニズムは人間の平等や博愛を意味しますが、親鸞聖人の教えでは、「共生」の対象には人間だけでなく「いのち」を持つあらゆるものが含まれています。生命倫理や環境倫理といった現代の諸問題を考えるときも、人間以外のものも含めて共に生きるという仏教的なものの見方や考え方によって生徒たちの理解は深まることでしょう。

    教育の目的は人格の完成

    • 中3で行われるオーストラリアへの海外研修旅行
      中3で行われるオーストラリアへの海外研修旅行

    ――こうした教育理念はどういう形で授業化されますか。

     週1時間ある宗教の授業では、仏教に限らず宗教を正しく理解し、親鸞聖人の教えをはじめとして、さまざまな物の見方に触れ、自分自身について考えます。また、毎週1回、始業前に行う礼拝(らいはい)では、すべての教員がローテーションで自らの体験に基づいた短い講話をします。

     これらの機会を通じ、生徒たちに「いかに生きるか」や「生きる意味や喜び」ということを考えてもらいます。教員も生徒も考えたことを作文化して、「求道」という冊子にまとめ、毎年、全校生徒に配布しています。2017年には51冊目を数えました。広い意味では、最近、中高の教育でもしきりに耳にするようになった「キャリア教育」を先取りする教育と考えています。

     このほか、仏式の入学式や始業式、「花まつり」をはじめとした仏教行事も行います。式典を通じて仏教的な言葉や考えに触れることや、みんなで声を合わせて聖歌を歌うことは、情操を養い、豊かにします。

     教育の目的は人格の完成です。もちろん、「勉強を頑張りなさい」「知識はあった方がいいよ」と生徒に声をかけますが、勉強だけでは不足です。本校は、智徳体のバランスが取れた、心豊かな人格の育成を目指しています。

     医学部に進んだ卒業生が、「勉強ができる人はたくさんいるが、中高で仏教を通した心の教育を受けたことが、今、医師を目指す上で力になっている」と在校生の前で話してくれたことがあります。

     グローバル化が進み、科学技術が急速に進展し、時代が大きく変わります。生かし生かされることに感謝し、自分はどのように生きていくのか、それを主体的に判断できる力を養うことが、これからの時代、ますます重要となるでしょう。大学入試改革への対応が話題ですが、思考力・判断力・表現力を養い、学びに向かう力や人間性を評価する新しい学力の基準は、本校が今まで大切にしてきたものと同じです。

    英語教育とプロジェクト教育

    • プロジェクト学習では、京都水族館の展示などの企画立案を行う
      プロジェクト学習では、京都水族館の展示などの企画立案を行う

    ――現在、力を入れている教育内容について説明してください。

     本校は中学で、国公立や難関私立、京都女子大への進学を目指す「2類」、難関国公立や医・歯・薬・理系学部への進学を目指す「3類」、京都女子大への進学を前提とする「ウィステリア」コースの三つのコース制を取っています。

     特に国際教育、英語教育に力を入れているのが、学園の校章でもある藤の花を意味する「ウィステリア」コースです。中3でオーストラリア、高3でアメリカへの2週間の留学体験を必須カリキュラムとしています。このほか、高3からの必修の第2外国語授業があり、英検、TOEICなどの資格取得も積極的に支援しています。

     プロジェクト学習にも積極的に取り組んでいます。これは文部科学省が新しい学習指導要領で打ち出している「社会に開かれた教育課程」に相当するもので、本校の特徴です。なかでも「2類」の中2生のプロジェクトは、京都水族館のスタッフとして商品や展示の企画を提言する内容で、生徒たちは毎年、興味関心を持って非常に楽しそうに取り組んでいます。

     また、いろいろな形で卒業生との接触の場も作っています。社会の様々な分野で活躍する卒業生に講演してもらったり、メッセージをもらったりして生徒たちは大いに刺激を受けています。医・歯・薬・工学など京都女子大学にない学部への進学を目指す「3類」の生徒たちは、中1の特別授業でこれらの学部に進んだ卒業生にインタビューを行います。先輩たちをロールモデルとして大きなパワーをもらっているようです。思春期の女子は憧れの先輩を見つけると、大きく成長するものです。

    (文・写真:水崎真智子 一部写真:京都女子中学校・高等学校提供)

    2018年04月23日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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