文字サイズ
    中学受験サポートに協賛する会員校の特色や、会員校からのお知らせなどを掲載しています。

    生きる意味を知り、夢に挑む力を育てる…横浜雙葉

     横浜雙葉中学高等学校(横浜市)で今春、昨年まで副校長を務めた藤原恵美氏が新校長に就任した。藤原校長は、英語科の教員として同校の英語教育の充実に取り組んできた。修道女マザー・マチルドらの手で1900年に開校して以来の長い女子教育の伝統とキリスト教の精神を踏まえながら、社会の変化に対応していく同校のあり方について藤原校長に聞いた。

    大学入学後を見越した学力の養成

    • 新たに校長に就任した藤原恵美氏
      新たに校長に就任した藤原恵美氏

     横浜雙葉中学高等学校は、毎年東大や難関私大に多くの合格者を出す女子の進学校として知られる。特に医学部を含めた理系進学者が多いのが特徴で、生徒の4割近くが理系に進学する年もある。

    ――どのような授業や進学指導をしていますか。

     一般に女子は理数系が苦手と思われがちですが、女子に適した学習のスタイルがあり、長年女子教育を積み重ねてきた蓄積には自負があります。ただし、進学実績はあくまで結果であって、本校の教育の目標は、その先の大学で学ぶ学力を育てることにあります。

    • アカデミックイングリッシュにも積極的に取り組んでいる
      アカデミックイングリッシュにも積極的に取り組んでいる

     特に、英語には力を入れ、英語教材には「プログレス21」(エデック刊)を採用しています。大学で扱う専門的な文献でも、辞書さえあれば読みこなせるように、ネイティブの教員を中心にアカデミックイングリッシュに積極的に取り組んでいます。英語4技能検定の「GTEC」も中1から活用し、スコアの伸び具合を見ながら、指導方法を継続的に改善しています。

     卒業生からは「論文の英語が読めます」とうれしい報告が届いています。高2の時点でのGTEC平均スコアは、海外の大学に進学できるレベルに達していますし、着実にスコアが伸びていくことで生徒のモチベーションも高まります。

    ――新校長としては今後、どういう方針で教育に臨みますか。

     世界の情勢はめまぐるしく変わり、テクノロジーの進歩も驚くほどの速さです。しかし、激しく動く世の中だからこそ、本校の教育の根本に立ち返り、変えるべきことと、変えてはならないことを見極めて対応していくことが必要だと感じています。

    ――横浜雙葉の「教育の根本」について詳しく教えてください。

     横浜雙葉の教育は、すべての人間が独自の価値を持った存在であると考えるところから始まります。私はそれを「Wonder*ful」と表現しています。Wonderfulという言葉はWonderとfulからなっています。fulには「いっぱい」という意味があり、Wonderには「不思議、驚き」という意味や「思いめぐらす、不思議だと思う」という意味があります。そのように、生徒にはみんな違った個性があり、Wonder*fulな存在だと思うのです。

     日々の学校生活の中で、自分たちの価値に気付かせたいと思っています。人は存在そのものが素晴らしく、それぞれの才能やミッションがみんな違っているからWonder*fulなのです。それがどんなミッションであっても、自分を大きく見せたり、あるいは卑下したりする必要はなく、ありのままを認め合い、お互いの得意分野を持ち寄って「共に生きる」。そのとき人は互いにかけがえのない存在になります。

     ありのままの自分が価値ある存在であると実感できるからこそ、生徒たちは自分と自分の選択に自信と誇りを持つことができます。中学、高校時代は難しい年ごろでもあります。挫折したり、友人をうらやんだり、自分の嫌な面に気付くことや、ときには仲間とぶつかり合うこともあるでしょう。しかし、根本にI’m OK.という自己肯定感があれば、失敗も成長の糧になります。

    人、自然、社会とのかかわりを学ぶ総合学習

     ありのままを認め合い、「共に生きる」ということの意味を学んでもらうために、同校はその言葉そのままをテーマとした総合学習に力を入れているという。

    • 中1校外学習での「キャンドルサービス」
      中1校外学習での「キャンドルサービス」

     「共に生きる」をテーマとした総合学習は、人とのかかわり、自然とのかかわり、世界とのかかわりを学び、その中で自分の独自性や役割を見つけ、いかに生きていくかを考える機会にしています。

     中1では学習のための基礎的なスキルを習得し、中2、中3では身近な自然や高齢者・障害者とのかかわりを考え、問いを立てて調べる経験を積みながらアカデミックスキルも伸ばします。

     高校では、地球市民としての意識付けを行い、現代社会の諸問題を調べ、その現状を把握していきます。また、難民、途上国の貧困、地球温暖化などのテーマを通して、他者と「共に生きる」ために何ができるかを考え、グループワークで討論や研究発表を行います。教科横断的な学びとなります。

     毎年の校外学習も、「共に生きる」ことを体験から学ぶ場です。

     中1では4月に行う2泊3日の校外学習で、共同生活しながら仲間づくりを行います。他小からの入学者の保護者は、雙葉小出身者と仲良くなれるか気にされるようですが、子供たちはグループ活動、レクリエーションを通して、あっという間に打ち解けるので、ご安心いただいていいのです。

     中2では自然と触れ合うことで、その恩恵を感じ、中3では奈良・京都を巡って、歴史とのかかわりを考えます。高1では清里の自然の中で自分の内面を静かに見つめ、高2では4月から「平和と巡礼」をテーマに講話や文献調査による事前学習を経て、広島・津和野・長崎を巡り、生きるということ、平和を築くことを考えていきます。

    • 「長崎」での校外学習のテーマは「平和と巡礼」
      「長崎」での校外学習のテーマは「平和と巡礼」

     事前学習の課題図書の1冊に、第2次世界大戦の際、ナチスの強制収容所に収容された精神科医ヴィクトール・フランクルが自らの過酷な体験をつづった「夜と霧」があります。高3になり宗教の時間で再び教材に取り上げました。多くの収容者が絶望とともに命を落とす中、生き延びた人は、自分には使命があり、自分を待っている大切な誰かがいるということを知っていました。自らのなすべき使命を知ることは、どれだけ人を強くするかを学んだと思います。

    上手く生きるより、善く生きる

     生徒が自らの価値を自覚し、それぞれがかけがえのない存在として「共に生きる」ことを学ぶ。こうした「変えてはならないこと」に対して、時代の変化に合わせて「変えるべきこと」もあるという。

     本校でもICTを活用した教育環境の充実を図ってきました。電子黒板型プロジェクターやタブレット端末を整備し、授業で活用しています。ただ、これらはツールであって、目的ではありません。使えるものは効果的に使いますが、現在のICTスキルが10年後に役立つかは疑問です。技術が急速に進歩し、AIが人間の知性を超えるシンギュラリティーが予測される時代には、人間にしかない「考える力」のほうがはるかに重要でしょう。

     人の一生の中には自分と向き合い、自分のミッションは何かをじっくり考える時期が必要です。世の中の慌ただしさに流されず、人間の速さで、原理原則を体に落とし込んでいく教育を大切にしたいと思っています。

    ――これから横浜雙葉の門をたたく生徒に対して、どういう姿勢を望みますか。

     1年先、10年先、30年先に夢や希望を持ち、将来の自分の姿をイメージしている子供たちを歓迎します。夢も希望もイメージも固定したものではなく、成長につれてどんどん変わっていきます。

     間違ってもいいんです。一歩前に出て、失敗を恐れずにチャレンジしてほしい。上手(うま)く生きるより、善く生きることが大切です。

     本校で暮らす6年間で、もともとのイメージに近づくのか、別のイメージに発展していくのか、どちらにしても横浜雙葉はそのゆりかごとなる場でありたいと思います。

    (文・写真:山口俊成 一部写真提供:横浜雙葉中学高等学校)

     横浜雙葉中学高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年10月10日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    おすすめ
    PR
    今週のPICK UP
    スクールヨミダス