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    体験型学習で興味を広げろ、「知」を耕せ…農大一

     東京農業大学第一高等学校・中等部(東京都世田谷区)は、母体である東京農業大学と連携し、米や味噌(みそ)などの食品作りを通して科学的な思考を学ぶ、ユニークな体験型授業を行っている。同校の教育理念である「知耕実学」を文字通り実践している授業だ。体験型授業の実際や、中3で取り組む「課題研究発表」などについて紹介する。

    農大教授の指導で稲作や味噌作りを科学的に学ぶ

    • 農大で15年間教鞭を執ってきた経歴を持つ田中校長
      農大で15年間教鞭を執ってきた経歴を持つ田中校長

     同校は「知耕実学」を教育理念としている。実際に体験することで自分の「知」を耕し、深めるという意味だ。多くの体験を通して、自分の「知」を耕し、深めてほしいという願いが込められている。

     同校には、文字通り「耕す」を実践する独自のカリキュラムがある。中1の総合学習の時間で行われる稲作体験だ。年に3回、東京農業大学厚木キャンパスにある3000平方メートルの農場に赴き、6月に田植え、7月に除草、9月に稲刈りを体験する。

     中3の総合学習では、同大の研究室で味噌作りに挑戦する。米に味噌とくれば一見、食育が目標のようだが、「あくまでも化学的な学習という要素が強いです」と入試広報部部長の川崎剛教諭は強調する。

     「農大教授の指導のもと、顕微鏡で米を見たり、種類や鮮度による味の違いを比べたりするなど、お米を科学的に学びます。また味噌作りでは、大豆や発酵について教授から講義を受けた上で実習を行います。専門の先生から直接話を聞くことで、生徒たちはいっそう興味が湧くようです」

     教室での座学と体験型学習の相乗効果によって、自ら考える力を養うのだという。大学と連携しているからこそできる貴重な授業だ。

    • 中1の総合学習の時間で行われる稲作体験
      中1の総合学習の時間で行われる稲作体験

     作った米や味噌は、もちろん自分たちで調理し、試食する。これらの授業は、理科的な実習であると同時に家庭科の授業にもなっているのだ。田中越郎校長は「食べることは、これだけ時間や手間がかかるということを学びながら、食の大切さを実感してほしいですね」と話す。

     ちなみに田中校長は、もともと内科の医師だったが、栄養学の教授として農大で15年間教壇に立った経歴の持ち主。2016年に同校校長に就任した。「本校では、理科の授業の約半分が実習や実験です。そのためか、理科が嫌いな生徒はほとんどいません。むしろ、『この学校なら、子供も理科が好きになってくれるかもしれない』とおっしゃって入学を希望する保護者もいらっしゃいます」と頬を緩ませた。

     授業で耕した「知」をさらに一歩深める機会がある。中3の9月に行われる3泊4日の北海道研修旅行だ。ここでも同校らしい体験重視のプログラムが盛り込まれている。世界遺産の知床では、自然を観察し、野生動物との遭遇を楽しむ。さらに、網走にある農大オホーツクキャンパスで、新巻鮭(あらまきざけ)作りや、ジャガイモやトウモロコシの収穫を体験する。東京ではなかなかできない体験を通し、学びの面白さを体感するとともに、食文化や第一次産業への理解を深めることができるという。

     なお、作った新巻鮭は後日、生徒の各家庭に送られる。自分が作った食品を家族とともに味わい、楽しむことで大きな達成感が得られる。

    自由なテーマで「課題研究発表」

    • 進学状況を説明する入試広報部部長の川崎教諭
      進学状況を説明する入試広報部部長の川崎教諭

     中3では「課題研究発表」が行われる。生徒たちは興味や関心のあるテーマを自由に設定し、1年間かけて調査・研究する。その成果はパワーポイントにまとめ、3月にプレゼンテーションを行う。そのテーマの幅は実に広い。

     2017年度の課題研究のまとめを見せてもらうと、毎日飲む牛乳の有用説・有害説を検証した「牛乳における人体への有用性の研究」、より甘い自家製の甘酒の作り方を模索した「甘酒をうまく作るには」など、同校らしい研究テーマがあるかと思えば、「尊厳死は幸福か」「憲法9条の問題点とこれからの日本」など社会問題を取り上げたものもある。なかには「チョコレートで世界を救えるか」「女子力とは何か」といった奇抜なテーマも混じる。

     「何年か前に、サメの研究をした生徒が、発表の時に自宅で飼っているサメを水槽ごと持って来たこともありましたよ」と田中校長。エピソードには事欠かないようだ。

     生徒たちの関心の広さを反映するように、進学状況も必ずしも理系に偏ってはいない。川崎教諭によると「以前は理系への進学が多かったのですが、今は55%くらい」とのことだ。

    「相手の立場になって考えられる人に」

    • 中3の「課題研究発表」のプレゼンテーション
      中3の「課題研究発表」のプレゼンテーション

     「進路に関しても、生徒の思いや希望を一番、尊重しています」と田中校長は語る。「東大に合格する力がある生徒でも、本人が別の大学を志望していたら、それを全力でサポートするのが本校の指導方針です。大切なのは、将来社会の役に立てる人材になること。一つの道を究めてスペシャリストとして活躍してほしいですね」

     また、教育の理想とする人物像については、「相手の立場になって考えられる人です」と語る。「例えば、待ち合わせに遅れた時に、なんと言って謝りますか?『遅れてごめん』これは自分本位の言い方ですよね。相手の気持ちになったら『待たせてごめん』なんです。社会に出た時に必要なのは、相手の痛みを理解できる社会性と、折れない心、そして強い体。この三つを身に付けてほしいと考えています」

     体験授業や課題研究を通して、さまざまなテーマに興味を広げることは、社会への関心を広げることにもつながる。これらの学習を通して、社会に出たときに求められる人間性をも大いに養ってほしい。

    (文・写真:石井りえ、一部写真:東京農業大学第一高等学校・中等部提供)

     東京農業大学第一高等学校・中等部について、詳しく知りたい方はこちら

    2018年05月18日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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