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    「答えのない課題」から「志」を見つける…新渡戸文化

     新渡戸文化学園(東京都中野区)は中学校で、独自の科目「サイエンスコミュニケーション科」を導入している。「STEAM教育」の考えを取り入れ、「答えのない課題」に取り組むのが特徴だ。目標は一人一人それぞれの生徒が「志」を見つけることにある。英会話やクラブ活動もユニークな指導方法で、その目標の実現を図っている。理事で中学校校長の林徹氏らに教育方針や指導の実際を聞いた。

    独自科目「サイエンスコミュニケーション科」

    • 静かな住宅街に立つ新渡戸文化学園
      静かな住宅街に立つ新渡戸文化学園

     新渡戸文化中学には、独自の科目「サイエンスコミュニケーション科」がある。この授業は、「日本科学未来館」(東京都江東区)でサイエンスコミュニケーターを務めていた蓮沼一美教諭が創設した科目だ。

     サイエンスコミュニケーターは、来館者に科学の話題や知識を伝える一方、一般の人の疑問や期待を科学者に伝え、双方向コミュニケーションを生み出す仕事だ。蓮沼教諭は高校や大学へ出前授業をすることも多かったが、「学校それぞれに取り組んでいる教育はよいのですが、『答えのない課題』に取り組む機会があまりない」と感じていたそうだ。

    • サイエンスや数学などさまざまな要素を統合したSTEAM教育
      サイエンスや数学などさまざまな要素を統合したSTEAM教育

     サイエンスコミュニケーターの任期が終わりに近付いた頃、知人の紹介を受けたのが新渡戸文化学園だった。同校が、地域や社会とのつながりを持った学びを大事にしていることを知り、これまでの経験を生かせると考えて2014年、同校に教師の職を得た。当時の理事や校長に相談しながら構想を練り、就任3年目の2016年に「サイエンスコミュニケーション科」の授業を開始した。

     この授業の狙いは、理科の範囲にとどまらず、実社会とリンクした「答えのない課題」に取り組み、問題解決能力を育むことにある。「突き詰めていくと、何か大きな問題が起こったとき、自分や社会の人々が生き延びるためにはどうすればいいか、そういった力を付けるのが目的です」と蓮沼教諭は話す。

     そのために授業では、関連するさまざまな分野を統合し、問題を多角的にとらえる「STEAM教育」のすべての要素(科学・技術・工学・芸術・数学)を取り入れているのが特徴だ。

     中1の授業では、エネルギー問題をテーマに、私たちが安心して生きられるには火力、原子力、再生可能エネルギーをどのような比率で使ったらよいのかという課題に取り組んだ。望ましい比率はエネルギーへの関わり方によって変わるため、他者と自分の考え方の違い、他人のメッセージを受け入れる能力を育むのに役立つという。

     授業を受けている生徒の様子について蓮沼教諭は、「意欲的に取り組み、この時間を楽しみにしている生徒が多いですね。『答えのない課題』に取り組むことが大事だと体感しているようです」と語った。

    英会話もタスクベースで指導する

     「答えのない課題」への取り組みは、サイエンスコミュニケーション科ばかりでなく、英語の指導法にも表れている。

     同校は、外国語学校の「神田外語グループ」と連携し、ネイティブスピーカーによる英会話の授業を行っている。文例の暗記などを中心とした従来の指導法ではなく、状況を分析し、自分で表現を選んで話すように指導しているという。

     たとえばタスクベースの指導法がその一つだ。従来、「どうしたのですか」という日本語を英訳するなら、「What’s the matter with you?」というフレーズを暗記しておけば正解だった。しかし、「目の前の困っている人に声を掛けなさい」という「タスク(課題)」に対しては、必ずしも十分な解答とはいえない。逆に、状況に応じて「May I help you?」や「Do you need help?」が答えとなり、あるいは「Are you OK?」でもよいことになる。

     林校長は「思考プロセスを大事にしています」と話す。「暗記したものを思い出すのではなく、自分の知っている言葉でどれが適切か選ぶ。そうしてコミュニケーションをつないでいくことが大事です。中3までに一般的な英会話ができるようにしたい。キーワードは楽しさです」

    • 有名建築デザイナーが手掛けたカフェのようなPCラウンジ
      有名建築デザイナーが手掛けたカフェのようなPCラウンジ

     こうした新しい学習を支える体制も充実している。藤井三恵子教頭は、「『Science Streetのラボ』では大学並みの実験機器をそろえ、科学的思考力を育てています。またCLIL(Content and Language Integrated Learning)を導入したプログラムや英語漬けのキャンプを企画するなど、英語4技能の習得にも力を入れています」と自信を見せた。このほか、カフェのような斬新なデザインの図書館やPCラウンジなどもあり、生徒たちが楽しく学べる設備がそろっているのも見逃せないところだ。

    • 「好きを見つけて志にしてほしい」と話す林校長
      「好きを見つけて志にしてほしい」と話す林校長

     「こうした授業は、子供の成長をもっと長い目で見た教育をしたいという思いで開発したものです」と林校長は話す。

     林校長はかつて銀行員を務め、人事部を担当していたことがある。偏差値の高い大学を卒業した新入社員が、すぐに挫折してしまう例をたくさん見てきたという。

     「今一番競争が過熱しているのは中学受験で、小学生が夜遅くまで塾に通っています。さらに高校受験、大学受験と続く中で疲れ果ててしまい、大学に入ったときには楽をすることばかり考えてしまう。これでは本末転倒です。本校では、まず生徒が自分の好きなこと、志を見つけることを大事にしています」

     好きなことを見つけて学ぶことが、長続きのする本当の成長につながるという考えだ。

    「新渡戸クラブ」で一流の講師に学ぶ

     同校が勉強と並んで力を入れているのが「新渡戸クラブ」。授業の一環として学ぶクラブ活動だ。毎週木曜の6、7限目に、生徒は好きなクラブを選択する。

     サッカー、バスケットボール、チアリーディングなどのスポーツ系や、プログラミングや英会話、サイエンスなどのスタディ系、ダンスやバレエ、ピアノ・バイオリン・フルートなどのアート系で計21のクラブがある。指導者はサッカーのJリーグやプロバスケットボールのBリーグの現役コーチら、各種大会で実績を残してきた一流の講師ぞろいだ。放課後のクラブ活動とも連携し、相乗成果を上げている。

    • 新渡戸博士の志を受け継ぐ剣道クラブは、生徒の人気が高い
      新渡戸博士の志を受け継ぐ剣道クラブは、生徒の人気が高い

     中でも人気があるのは剣道の活動で、学園の小中高生徒の1割が所属しているという。同校の初代校長・新渡戸稲造博士は、「武士道」を英語で著して日本の精神文化を欧米に紹介したことや、国際連盟の事務次長として世界平和に尽力したことで知られる。新渡戸博士の「日本人の志」を受け継ぐうえで剣道は格好の部活動なのだそうだ。「剣道に限らず、英語やサイエンスなど、新渡戸クラブで何か好きになってもらい、志を持ってほしいのです」と林校長は期待を込めた。

     新渡戸博士は「意志は人なり」という言葉を残している。受験に合格することだけを目的としていては燃え尽き症候群になってしまうことは想像に難くない。同校が掲げる「志」を育むことこそ、長い人生を生きていくうえで重要なのだと、改めて感じた。

     (文・写真:小山美香)

     新渡戸文化中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年07月19日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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