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    ICTを駆使し、新しい価値を生み出せ…聖徳学園

     聖徳学園中学・高等学校(東京都武蔵野市)は2年前から「STEAM教育」に取り組み、「新しいものを生み出せる人材」を育てることに注力している。映画制作をテーマとする中1の「シネマ・アクティブ・ラーニング」の授業を「STEAM教育」のケースとして取り上げ、ICT(情報通信技術)を活用して創造性を育む同校の教育と生徒の変化をリポートする。

    映画制作を通してアクティブ・ラーニング

    • 「新しいものを生み出せる人材」を目指す学校改革本部長の品田健先生
      「新しいものを生み出せる人材」を目指す学校改革本部長の品田健先生

     同校は、中学の「ICT」という独自の授業で、「シネマ・アクティブ・ラーニング」という学びを実践している。ICTを活用しながらコマ撮り映画を制作し、その作業を通して生徒たちの主体性やコミュニケーション力、表現力などを高めようという取り組みだ。

     この授業は「シネマ・アクティブ・ラーニング」の考えを提唱している気鋭の映画監督・古新(こにい)(しゅん)氏の協力を得て2014年から実施している。制作した映画は毎年3月に校内で開かれる「聖徳映画祭」で上映される。17年も上映時間約3分の15作品が上映された。古新監督は毎回、審査員として参加しており、制作した生徒のプレゼンテーションを聞いて評を与える。日本映画界の第一線で活躍する監督の評価を受けることは子供たちにとって大きな刺激だ。

     取材に訪れた10月10日は、この映画制作の授業の初日だった。17年に完成したばかりの新校舎13号館にある「Learning Commons(ラーニング・コモンズ)」に、中1生34人が椅子を3列に並べて着席していた。

    • 情報システムセンター長の横濱友一先生
      情報システムセンター長の横濱友一先生

     授業を行うのは、同校全体のICTを管理・運営する情報システムセンター長の横濱友一先生だ。横濱先生は導入として、美術・音楽・情報の3科合同の授業であること、映画制作の流れ、集大成となる聖徳映画祭の概要などカリキュラムを説明。さらに、「映画を見ようと思ったとき、まず何を考えますか」と生徒たちに問いかけた。生徒たちは着座したまま、「あらすじ」「キャストが誰か」「監督の名前」などの答えを口々に返す。いかにもリラックスした様子だが、自身も聖徳学園の卒業生である横濱先生によると、先生と生徒が自然に会話ができる校風は聖徳学園の特長なのだそうだ。

     次に、正面の4台のモニターを使って、昨年開かれた聖徳映画祭のグランプリ作品を鑑賞した。作品のタイトルはわざと伏せてある。内容はオタマジャクシがカエルになり、カエルは蛇に食べられる。その蛇は(たか)に襲われ、鷹は人間に撃たれて死ぬ。土に返った鷹の栄養で育った虫をカエルが食べるというものだ。

     映画が終了すると横濱先生は、「この映画のタイトルは何でしょう」と聞いた。「食物連鎖」という声がいくつか上がる。「正解です。この作品のタイトルは『食物連鎖~命をつなぐバトンリレー~』でした。作品を見終わった時にタイトルが分かるということは、タイトルから映画の内容が想像できるということでもあります。タイトルの重要性が分かると思います」

    • 昨年開かれた聖徳映画祭の作品を鑑賞する
      昨年開かれた聖徳映画祭の作品を鑑賞する

     モニターには続いてアニメ映画「君の名は。」の予告編が上映される。今度は「この映画に込められたテーマは何でしょうか」と横濱先生は質問を投げかけた。生徒たちは真剣に考え込んだり、互に話し合ったりした後、各自のタブレットで「ロイロノート」というアプリを起動して回答を送信した。「絆の物語」「男の子と女の子の物語」などの答えが、リアルタイムで正面のモニターに映し出されていく。この映画を制作した新海誠監督は、インタビューで映画のテーマを「運命の人は、必ずいる」と答えているが、その答えは生徒から送られてこなかった。しかし、正解を出すことよりも思考するプロセスがアクティブ・ラーニングでは重要なのだという。

     タイトルやテーマについての講義が終わると、いよいよ18年の「聖徳映画祭」のテーマが発表された。今年のテーマは「SDGs」だ。15年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際目標だ。横濱先生は「SDGs」について簡単に説明した後、タブレットに指示を送信して生徒たちを7班に分ける。じゃんけんなどが必要ないので実にスピーディーだ。

     次回の授業は、各班が調べ上げた「SDGs」に関する情報を発表し、制作する映画の内容をプレゼンテーションする予定だという。授業の残り10分は「SDGs」についての班ごとの調べ学習となった。タブレットで外務省や国連のホームページにアクセスし、テキストを読んだり、YouTubeの広報映像を見たりして、思い思いに情報を収集する。横濱先生は生徒の質問に答え、検索のヒントを与えながら教室を巡回するだけだ。

     最後に、各自が集めた情報をグループ内で話し合い、1週間後の授業でのプレゼンテーションに向けて打ち合わせするという宿題が出された。同校は「トークノート」というSNSサービスを導入しているので、部活などで放課後に集まれなかったり、休日だったりしてもチーム内で意見を交換できる。先生が打ち合わせの進捗(しんちょく)状況を確認することも可能だ。

     映画制作というテーマとICTの活用が、いかにコミュニケーションを加速するかがよく分かる授業だった。

    「やればできるかも」行動できる生徒が増えた

     学校改革本部長の品田健先生によると、「シネマ・アクティブ・ラーニング」やプログラミングの授業など、ICTを活用した同校のさまざまな取り組みは、2年前にスタートした「STEAM教育」として位置付けられているという。「STEAM」は、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)のそれぞれの単語の頭文字を取った言葉だ。

    • 生徒各自がタブレットでアプリを起動して回答を送信する
      生徒各自がタブレットでアプリを起動して回答を送信する

     同校ではとりわけArtを「芸術」ではなく、デザイン思考から生まれる「創造性」と解釈し、重要視している。「たとえば将来、『Amazon Go』のようなレジなしストアが普及したとすれば、今のレジ打ちの仕事はなくなるわけです。そんな時代に生き残れるのは、当校の教育目標である『新しいものを生み出せる人材』だと考えています」と品田先生は語る。「ICTはその創造性を養うためのツールの一つです。やりたいことを実現するためにアプリやプログラムがあるというだけで、その過程は自由なのです。目的達成のための引き出しが増えることは、子供たちが社会に出たとき、きっと役に立つはずです」

     ICT導入後、フットワークの軽い生徒が増えたという。「以前は『やりたくてもできない』『やってはいけない』という考えの生徒が多かったように思いますが、導入から2年、『やればできるかもしれない』『まず、やってみよう』と思い、行動できる生徒が増えました」と品田先生は話す。

     その中から創造性にあふれた2人の生徒のケースを紹介しよう。1人は英語のボキャブラリーが少ないことを弱点だと感じていた女子生徒だ。辞書を持ち歩くのが大変だったので、自分専用にカスタマイズした英語の対義語・類義語アプリ(iOS)を制作したという。もう1人は同校に在籍する13歳のユーチューバー。「ある日、『ユーチューバーになります』と宣言してきたのです。ネットには子供を中傷したがる大人がいることや、同年代の子から心ないコメントが届くかもしれないといったリスクも考えさせましたが、ユーチューバーになってはいけないという校則はありませんから禁止していません。このことはもちろん保護者も把握しています」

    2019年度から二つの「アピール入試」を開始

     同校は2019年度募集から従来の入試に加えて「中学アピール入試」を実施する。内容は「プログラミング入試」と「コミュニケーション英語入試」の二つに分かれている。横濱先生によると、どちらの入試もゴールに達しなければ不合格というわけではなく、ゴールまでの過程にどう積極的に取り組めるかが合否のポイントだという。

     「小学6年生にしてこのような長所を持っている生徒は、『自らの強みを伸ばし、世界とつながり、新しい価値を生み出す』ことができる素養を持っている。私たちはそう考えています」

    (文:安達悠 写真:中学受験サポート)

     聖徳学園中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2019年01月08日 17時15分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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