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    変化に対応「21世紀型教育」19年度から…聖ドミニコ

     聖ドミニコ学園中学高等学校(東京都世田谷区)は、新学習指導要領の実施に先駆け、2019年度から新しい教育カリキュラムを開始する。キリスト教に基づく心の教育をバックボーンに、グローバル化やAI(人工知能)などかつてない変化に直面する現代社会を生き抜く力を育む。二つのコース制導入など同校独自の「21世紀型教育」について、高橋幸子校長とカリキュラムマネジャーに就任した石川一郎氏に話を聞いた。

    対話と自主的な学び ルーツは13世紀のキリスト教聖人

    • 新しい教育カリキュラムを開始する聖ドミニコ学園
      新しい教育カリキュラムを開始する聖ドミニコ学園

    ――聖ドミニコ学園の教育理念について聞かせてください。

    高橋校長(以後、高橋) 本学園のルーツは13世紀のスペイン人、聖ドミニコにさかのぼります。聖ドミニコは異端者には権威や圧力ではなく、対話によって真理を伝えようとした人でした。また、聖ドミニコ会は労働に代わり、学問に大きなウェートを置いていたため、学ぶ意欲のある若者が多く集いました。本学園はその思いを受け継ぎ、対話と自主的な学びを尊重しています。

    ――ベースには対話と教育を大切にした精神がある。

    高橋 そうです。真理の探究こそが本当の幸せであるという教えに変わりはありません。その上で、グローバル化やAIの進化など、社会がこれまでにない変化に直面している今、私たちには、生徒一人一人が新しい時代を生き抜くための教育を行う責任があります。

    • 「対話と自主的な学びを尊重する」と話す高橋幸子校長
      「対話と自主的な学びを尊重する」と話す高橋幸子校長

    ――時代の変化に対応する必要があったということでしょうか。

    高橋 国の教育改革も進む中、何度も職員会議で話し合い、ステークホルダーにご説明し、一つ一つ対話しながら新しい形を作ってきました。もちろんこれまでも、生徒たちの希望に応えて教育内容の充実を図ってきましたし、生徒たちの自分で考え、自分で決め、生きていく力を育ててきた自負はあります。

    石川カリキュラムマネジャー(以後、石川) 就任早々、本学園の卒業生でロンドン大学(UCL。ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン)に合格した人がいると聞かされ、驚きました。世界でも上位にランクされる大学で、試験では高度な英語力とクリティカルシンキングが問われますから、かなり難関のはずです。

    高橋 実は石川先生に言われるまで、その価値を意識していませんでした。

    石川 もともとそういう生徒を育む素地があることを知り、本学園の伝統的な教育を、現代的にバージョンアップすればそれがベストだと考えました。唐突に新しい教育プログラムを立ち上げるよりも、学園の良いところを伸ばすことのほうがずっと自然ですから。

    「英語にひたる」「世界標準の学び」2コース制導入へ

    • カリキュラムマネジャーの石川一郎氏
      カリキュラムマネジャーの石川一郎氏

    ――新しい教育カリキュラムの概要はどのようなものですか。

    高橋 新教育で土台となるのは、Sustainability(持続可能性)・Design(デザインする)・Connect(つながる)の三つの精神です。

    石川 現代社会には環境問題や格差の問題など解決すべき課題がたくさんあり、どれもが複雑な利害や対立を抱えています。持続可能な社会作りというテーマはその反省から生まれました。長期的な視野に立ったサステナブルなものの見方、ひらめきや思考を表現できるデザイン力、対話によって物事を解決するつながる力とその基礎になる語学力。この三つを育てることが目標です。

    高橋 いずれも生徒たちが将来、自立して生きていける人になるために必要な力です。未来の社会でより良い変化をもたらす人になってほしいという願いを込めました。

    石川 また、思考力を育てる時間として「ドミニコ学」を設け、学びに向かう力を育てます。さらに、英語力を集中的に高める「イマージョンコース」と、世界標準の学びを実現する「グローバルスタンダードコース」の二つのコースを設けました。教育の方法は違っても、共通するのは異なる意見を交わし、互いを尊重しながら解決をめざす対話重視の学びです。

    ――二つのコースの具体的な内容を説明してください。

    石川 まず「イマージョンコース」は英語、数学、理科の週14時間の授業を、英語のネイティブスピーカーの教員が担当します。イマージョン教育はもともとフランス語圏で英語を学ぶために発達した教育方法で、イマージョンとは「浸ること」という意味です。英語の世界に浸かって思考方法や文化も学び、高い創造性を養います。中1から高1までの4年間、週14時間の授業を受けると、合計で約2000時間になります。海外に1年間留学した際に学ぶ時間がおおよそ2000時間と言われていて、英語力が向上する目安になると思っています。

    高橋 英語「を」学ぶのではなく、英語「で」学ぶことで、論理的思考力や英語による表現力が培われ、それによって生まれた自信は、海外も含めたより広い進路選択を可能にするでしょう。

    石川 現代社会の問題は、一つの国だけでは解決できないものがほとんどです。英語力は、さまざまな国の人と対話する基礎になり、他者を理解し、他者のために生きるというキリスト教的価値観にもぴたりとマッチします。

    ――グローバルスタンダードコースについてはどうでしょう。

    石川 「グローバルスタンダードコース」は世界標準の学びを可能にするため、授業時間数を増やし、週35時間を確保しました。またPBL(課題解決型学習)を中心にすえ、生徒たちがさまざまな場面で主体的に学ぶ活動を行います。PBLは、学んだ知識を使って、自分ならどうするのかを問うものです。そこに正解はありません。生徒が正解のない問いについて考える環境をつくることが私たちの大事な役割になります。

    言葉や文化の違い乗り越え 新時代を築く女性に

    ――今後どのような生徒を育てたいですか。

    高橋 自ら問いを立て、自分ならどう解決するかを考えることは、自分はどう生きるかを考えることへとつながっていきます。誰にも存在理由があり、生まれてきた役割があります。一人一人のペースでじっくりと学べる少人数教育の中で、自己肯定感を高め、そして、言葉や文化が違う相手であっても、共通の目的に向かって協力し合える人を育てたいと思っています。

    石川 機械的な処理能力では、人間はAIには勝てません。ですからこれからは、知識の量や正確さではなく、自分の人生をどう生きていくのかという問いに向き合い、自分の人生を「主体的」に考えることが、ますます重要になるでしょう。

    高橋 ゆるぎない価値観を持っている人は、どんな社会でもしなやかに強く生きていけます。将来、社会のさまざまな場で、問題を見いだし、他者と話し合って何かを創りあげていく過程で、本学園で学んだ意味が明らかになるはずです。本学園で過ごす6年間を通して、異なる意見を尊重し、その違いを乗り越えて新しい時代を築く女性に育っていく。それが明日の社会への希望になることを願っています。

     対話と自主的な学びを大切にしてきた聖ドミニコ会の伝統は、生徒たちのコミュニケーション力や思考力を育む学びの場として、800年の歳月を経て、聖ドミニコ学園に受け継がれている。建学の理念のもと、大きく変化する時代の中で、新たな「主体的で対話的な深い学び」に期待したい。

    (文・写真:山口俊成、一部写真提供:聖ドミニコ学園中学高等学校)

     聖ドミニコ学園中学高等学校について、詳しく知りたい方はこちら

    2018年07月24日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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