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    音楽に囲まれて「自由」を学び、個性を磨け…国立音大附

     来年、創立70周年を迎える国立音楽大学附属中学校(東京都国立市)は、音大の付属中学としては珍しく、「音楽コース」だけでなく、音楽以外の進学を目指す「普通コース」を擁している。生徒たちは専門的な音楽教育だけでなく、広く音楽的な環境の中でいっしょに知性を磨き合っている。同校の基本理念や両コースの教育の特色、来年度に予定される「普通コース」の改革など、今後の教育への取り組みを聞いた。

    演奏実技試験のプレッシャーを乗り越えて成長

    • 「自由であること、個性があることが大切」と語る星野校長
      「自由であること、個性があることが大切」と語る星野校長

     国立音楽大学附属中学校には、「音楽コース」と「普通コース」がある。「音楽コース」は1949年の創立以来の歴史を誇り、義務教育の課程に加えて専門的な音楽の基礎教育を行ってきた。「普通コース」は2010年に開設され、音楽が身近にある環境で感性豊かな中学時代を望む子供たちを受け入れている。どちらのコースに入学しても、一人一人の希望や進路選択により、入学後のコース変更が可能だ。

     「音楽コース」は国立音大附属の代名詞的な存在で、音楽家や音楽業界に携わる人材を数多く輩出してきた。最近では、NHKの大河ドラマのテーマ曲を同校の卒業生が担当している。

     楽譜を速く正確に読む力を身に付けるソルフェージュ、作曲、合唱など、あらゆる角度から総合的に音楽の基礎を学ぶカリキュラムが充実している。さらに個々のレベルに合わせたマンツーマンレッスンによって、ピアノや弦楽器、打楽器といった専攻の技術を磨いていく。

     年に2回行われる実技試験は、こうした日々の学習成果を発表する場となっている。広報部副部長でピアノ科教員の五十嵐稔教諭は「学校生活の中で生徒たちがもっともプレッシャーを感じる瞬間でしょう」と語る。「約20人の試験官を前に、あれだけの緊張感の中で演奏する機会は、中学生にはなかなかないと思うんです」

    • 広報部副部長でピアノ科教員の五十嵐稔教諭
      広報部副部長でピアノ科教員の五十嵐稔教諭

     同校の卒業生でもある五十嵐教諭は、「私も経験者ですが、そのプレッシャーはかなり大きいですよ。いまだに試験の夢を見るくらいですから。きちんと準備していないと、自分にダイレクトに返ってきます」と振り返った。

     こうした厳しい試練は生徒たちに大きな成果をもたらす。星野安彦校長は、「試験が終わった途端、緊張から解放されて泣き出す生徒もいます。それを3年間で6回も経験するうちに、生徒たちは、今何をしなければいけないかを考え、しっかり自分と向き合えるようになりますね。演奏家として必要な心構えや技術はもちろん、度胸も付いてくる。こうした力が日々の生活にも生かされていると思います」と語った。

    中3生は全員が合唱曲を制作する

    • 中3生全員が取り組む合唱曲の手書き譜面
      中3生全員が取り組む合唱曲の手書き譜面

     中3生全員が取り組む合唱曲の制作は、中学での音楽学習の集大成だ。夏休みの間、自由なテーマで自ら作詞・作曲し、コーラスや伴奏を楽譜にして1曲を作り上げる。手書きの譜面には、「未来」「夢」「友情」など、いかにも中学生らしいテーマが書き込まれている。中学1、2年で合唱や作曲について学習するとは聞いたが、実際にしっかりと作り上げられた楽譜を目にすると驚かざるを得ない。

    • 3月の卒業演奏会で発表の様子
      3月の卒業演奏会で発表の様子

     優秀な作品を3、4曲選んで、3年生全員が合唱練習をする。そのうち1、2曲を全校生徒が練習し、ともに3月の卒業演奏会で発表する。星野校長は、「自分で曲を作ることで、演奏の表現が豊かになります。また、ベートーベンやリストといった音楽家たちが書いた楽譜の見方も変わってくるようですね。この合唱曲制作をきっかけに、作曲専攻に進む生徒もいます」と語った。

    来年度から生まれ変わる「普通コース」

     音楽以外の進路を目指す「普通コース」は、少人数の落ち着いた雰囲気の中でバランスよく各教科を学べるのが特徴だ。「音楽コース」の専門授業にあたる時間は、国語、数学、英語を独自のカリキュラムで学ぶ。

     特徴的なのは、複数の教科を融合した課題解決型の「コラボレーション授業」だ。例えば、音楽と社会のコラボレーション授業では、18世紀に活躍したベートーベンを題材に、当時の音楽の背景となっている歴史や、その時代の日本はどうだったかなどを多角的に学習する。グループワークを中心に、自ら調べる力、資料をまとめる力、ディスカッション力、プレゼンテーション力を身に付け、自分で考えて答えにたどり着く力を養っていくという。

     「音楽コースでは、アンサンブルやオーケストラを通して、仲間と協同して何かを作り上げる機会が多いのですが、普通コースの生徒は比較的そういった機会が少ないんです。今後はさらにグループワークやディスカッションを増やしていきたいと考えています」と星野校長は話した。

     なお、「普通コース」は2019年度から「文理コース」と改称する。国公立・難関私大合格を目指す高校普通科の特別進学コースに向けて学ぶ「特別選抜プログラム」と、基礎力を定着させて自ら考える力を伸ばす「総合プログラム」を導入する。レベルや目的に合わせて、さらなる学力の強化を目指す方針だ。

     ちなみに「音楽コース」と「普通コース」は別々のクラス編成ではなく、通常の教科はいっしょに授業を受けている。音楽を専門として研(さん)を積む音楽コースの生徒と、音楽に囲まれた環境で知性を磨く普通コースの生徒が、互いに切磋琢磨(せっさたくま)し合っている。星野校長は「こうした環境が社会に出た時に、異なる考えを持つ他者と共生する心を養うのに役立っている」と話す。

    音楽学校ならではの「自由」を学ぶ

     星野校長は、同校の教育理念を「自由」だという。

     「音楽は芸術の一つですから、自由であること、個性があることがとても大切です。何かを実行しようとする時、人は必ず取捨選択を迫られます。さまざまな場面において何を選択するかは、生徒本人の自由な意思に託されています。そうした経験を積みながら、自由とは何かを考え、見いだしていく力を身に付けていきます。本校は幼稚園から大学院までありますが、中高はちょうど真ん中で精神的に一番成長する時期。この時期に自由の意味を学びながら、個性を確立し、他人との関わり方を学んでほしいと考えています」

     すでに楽器の演奏スキルを持ち、レベルアップしたい人、これから新たに楽器や声楽を学びたい人、音楽は好きだけれど、一般入試で大学に進学したいという人。生徒たちがそれぞれの未来を(ひら)けるように、同校は広く門戸を開き、さまざまな選択肢を用意して待っている。

    (文・写真:石井りえ、一部写真:国立音楽大学附属中学高等学校提供)

     国立音楽大学附属中学高等学校について、詳しく知りたい方はこちら

    2018年07月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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