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    平和願う建学の心に新たな学びを加えて…橘学苑

     橘学苑中学校・高等学校(横浜市)は、理科、数学、歴史、英語など複数の教科を横断し、グループで取り組む「特別授業」を始めた。今年度、新校長に就任した小岩利夫氏が、グローバル時代を生きる人間の新しい学力作りのためにスタートさせた取り組みだ。「特別授業」の様子とともに小岩校長の重視する自然体験などの学習について紹介する。

    平和な社会を願う教育の伝統

    • 「特別授業」をスタートさせた小岩利夫校長
      「特別授業」をスタートさせた小岩利夫校長

     橘学苑中学校・高等学校は、第2次世界大戦最中の1942年に、70歳を超える主婦だった土光登美が、「国が滅びるのは悪でなく、その愚さによる」「平和な社会を担う子供たちを立派に育てるためには、母親となるしっかりした女性を育てることが大切」と、自ら信じる仏教の信念に基づいてほぼ独力で創設した。登美の次男は経団連会長や第2次臨時行政調査会会長を務めた同校4、7代校長の土光敏夫だ。

     「心すなおに真実を求めよう」「生命の貴さを自覚し、明日の社会を築くよろこびを人々とともにしよう」「正しく強く生きよう」。この3か条からなる言葉は、今も学校の創立の精神として受け継がれている。

     第17代校長となった小岩利夫先生は、明治大学付属中野中学・高等学校の教諭として物理を教え、同大付属中野八王子中学高等学校の教頭、日本学園中学校・高等学校の校長を経て、今年度橘学苑に赴任した。

     小岩校長が抱いた同校の第一印象は、「ふんわりとした柔らかさのある落ち着いた学校」というものだった。近隣の中学校からも、「橘学苑の生徒たちは大変礼儀正しく、あいさつがきちんとできる」という評価を受けているそうだ。開学以来、豊かな人間性を育む教育に努めてきた橘学苑の伝統を感じさせるものだ。

    新たな時代へ対応する主体的な学び

    • ネイティブの英語教員の説明に耳を傾ける
      ネイティブの英語教員の説明に耳を傾ける

     小岩校長が、創設者土光登美の「平和な社会」への願いを引き継ぎながら、新たに加えたいと考えたのは、「主体的、対話的に行われる深い学び(アクティブラーニング)」だ。この学びを通して、これからのグローバル社会を生き抜くために必要とされる多様性や創造性を生徒たちに身に付けてもらうためだ。

     この新しい学びを実現し、2020年の大学入試改革にも対応するために小岩校長がスタートさせた取り組みの一つが「特別授業」だ。現在のところ、月1回土曜日をあてて試行的に行われている。「特別授業」の特徴は、理科、数学、歴史、英語など複数の教科を横断し、グループでテーマに取り組むことにある。「たとえば、英語で物理の授業をしたとすると、生徒たちは説明に使われる英語をいつまでも忘れないものです」と小岩校長は話す。

     取材に訪れた6月30日、教室から多くの生徒たちの声が聞こえた。中学では1年生から3年生までがグループを作って、一緒に課題に取り組む。ある教室では、「学術スケッチを行う」というテーマで、生徒たちはキャンパス内でトンボやトカゲ、バッタといった生物を捕まえ、その大きさを測ったり、さまざまな角度からスケッチを行ったりしていた。また、別の教室では、ネイティブの英語教員が手順の説明を行いながら、ろ過装置を作って水をろ過し、その過程で見つかる生物を観察する実験を行っていた。

     高校生の教室でも、同様にグループを作り、英語でのディベートや和歌の現代語訳、第2次世界大戦終結時の国際情勢など、普段の授業ではなかなか時間を割けないテーマに取り組んでいた。

     小岩校長によると、グループ学習では互いに意見を発表し合うため、物事をどう分析するか、生徒それぞれが自分の観点を持つ必要がある。そのため、学習が能動的になるのだという。同校ではこのような取り組みを、来年度からは普段の授業にも取り入れていく方針だ。

    自然に触れる教育で感性を磨く

    • 「ネイチャーイン」で行われる田植え
      「ネイチャーイン」で行われる田植え

     「特別授業」と並んで小岩校長が重視しているのが自然体験学習だ。

     同校は、中高の6年間を通して長野県飯島町に保有する「長野自然研修センター」で合宿を行い、「ネイチャーイン」と呼ばれるプログラムを実施している。

     中学1年生は、地域の人たちの指導を受けながら田植えやソバ打ち、リンゴの摘果などを体験する。高校生になるとイングリッシュキャンプやスタディキャンプなどさまざまなプログラムを、大自然の中で友人たちとともに体験する。

     ここで収穫された米などの農作物は、毎年の文化祭でも販売され、人気を集める。生徒たちは接客や販売方法などに工夫を凝らす中で、社会性を身に付けていくという。収益は、次年度の肥料の購入費などにあてられる。作物の栽培から販売までをトータルに体験できるので、経済の流れを知るいい機会ともなっている。

     このほか、同校のキャンパス内にある「アグリラボ」と呼ばれる約150平方メートルの畑がある。中学部の「創造」の授業で主に活用され、野菜や果物を育て、収穫し、食べる中で、農業や生命について考えていく。先日も生徒たちがタマネギを収穫し、自宅に持ち帰って試食したそうだ。

     「自分で土に触れ、大切に育てて収穫した野菜を味わう経験によって、生徒の中に新たな感性が生まれるように思います。それに、感性を発揮して体験したことは、後になっても忘れることがありません」。小岩校長は、自然体験を通じて感性を磨くことは、学習能力を高めることにつながると考えている。勉強を進める中で、分からなかったことが分かるようになったときの感動に通じているからだという。「生徒たちが日頃楽しみながら取り組んでいる自然体験と、学習の成果がマッチしていく様子を見るのは、とても(うれ)しいことです」

     特別授業や自然体験学習以外に、グローバル時代への対応として「英語教育」にも力を入れている。英語の授業では、ネイティブの教員を交えながら教師2人体制で丁寧な授業を行っており、中3生は全員、海外でのホームステイを体験する。

     また、国語の文章力養成にも力を入れていく方針だ。新聞を教材として活用するNIE教育も取り入れながら、同校設立時からの目標である「真実を求める力」を育んでいきたいという。

     小岩校長は自分の目指す学校運営の理想について、「この学校に来てよかったと思える学校にしていきたいという思いがあります。1人でも多くの生徒に幸せになってもらいたい」と語った。「そのためには先生方がより分かりやすく、工夫した授業をすることです。そのうち僕も生徒たちに物理を教えたいと思います」と、教師らしい笑顔で結んだ。

     (文・写真:山本華子 一部写真:橘学苑中学校・高等学校)

     橘学苑中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年09月28日 05時40分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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