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    豊かな心を育み、自学自習の姿勢を確立する…狭山ヶ丘

     狭山ヶ丘高等学校付属中学校(埼玉県入間市)の小川義男校長は、「あらすじで読む日本の名著」(中経出版)など数多くの著作を持つ名物校長として知られる。同校の創立以来の教育の柱である「豊かな心を育む教育」と「自学自習の姿勢の確立」、並びに小川校長ならではの読書教育についての考えを聞いた。

    内観や名画鑑賞で豊かな心を育てる

    • 「しっかり教えるが、自らも学んでほしい」と語る小川校長
      「しっかり教えるが、自らも学んでほしい」と語る小川校長

     同校は、創立者の近藤ちよが説いた「事にあたって意義を感ぜよ」という教えにもとづき、開校以来「内観教育」(自己観察教育)を実行していることで知られる。内観とは、自己を見つめ、世話になった父母・教師・友人など、身近な人との交流を思い起こし、本来のあるべき自己の姿に気づくことを主眼とした、心の教育だ。

     「内観のほかにも、授業の始めに目を閉じ、心を落ちつかせる黙想をしています。これを3年間続けているうちに、集中力がつき、将来の自分の進むべき道を見定められるようになります。当校では、心を落ち着かせたり、豊かな心を育てたりすることに力を注いでいるのです」と小川校長は話す。

     高校3年の1年間、生徒たちは校内にある本格的な茶室「悠久(あん)」で、週1回茶道の授業を受ける。茶道の作法を学んで、その心得である「和敬清寂(わけいせいじゃく)」の精神を体得し、社会人として必要な豊かな人間性を培うという。

     「学校は、いうまでもなく授業が中心の教育機関ですが、いくら学力優秀でも、人と上手にコミュニケーションが取れない半人前の心の持ち主では社会に貢献することはできないでしょう。学力もあり、人間性も豊か。生徒たちにはそういう人になってもらいたいと考えています」

    • 学園内のいたるところに名画が掲げられている
      学園内のいたるところに名画が掲げられている

     同校の校舎に入ると、すぐに目に付くものがある。廊下の壁などに掲示された国内外の名画の複製だ。玄関にはラファエロの「アテナイの学堂」、廊下にはゴッホの「向日葵」「自画像」、モネの「睡蓮(すいれん)」、ルノアールの「ピアノに寄る少女たち」、フェルメールの「青いターバンの少女」、黒田清輝の「舞妓(まいこ)」などが掲げられている。

     「あちこちに日本と世界の名画の複製を数多く展示しています。これも日ごろから優れた芸術作品に触れて、豊かな人間性を養ってもらえればという思いからなのです」

    「しっかり教えるが、自らも学んでほしい」

     豊かな心を育てる教育と並んで、もう一つ、小川校長が大切にしている教育方針がある。それは「自学自習の姿勢の確立」だ。同校の授業、ゼミ、講習、学習施設などは、この基本姿勢を確立させることを最終目標としている。

     「人間には、自発的に動いた時にもっとも大きな成果を出すという特質があり、自学自習こそ真の実力が付く方法だと考えているからです。だからといって、教師はただ見守っているだけではない。しっかり教えるが、自らも学んでほしい。これが狭山ヶ丘の考え方なのです」

     同校には、授業の中だけでなく朝ゼミ、放課後ゼミ、夏期・春期・冬期の休み中に行われる長期講習など、さまざまに自発的な学習を進めるチャンスが準備されている。

    • ゼミ、講習、図書館、自習室と、自学自習のチャンスと環境は万全
      ゼミ、講習、図書館、自習室と、自学自習のチャンスと環境は万全

     「当校には蔵書2万5000冊の中央図書館、自習室、300人収容可能の生徒ホール、小図書館などがあります。これらは365日開室が原則で、本校生徒なら誰でも利用できます。自発的に学ぶゼミや講習はもちろん、自習ができる環境整備にも力を入れているのです」

     ゼミや講習は、そこで使う教師作成のプリント代を含めて、すべて無料だという。さらに、小川校長と山崎校長補佐が行っている原書講読もある。テキスト代(800円)は自己負担だが、学年に関係なく誰でも自由に参加することができる。

     1年間で5冊の英語原書を読み、英字紙「The Japan Times」を読める読解力を付けること、全員に1年間で英検準1級を取得させることが狙いだという。「大学入試にTOEFL、TOEIC、英検などが取り入れられる傾向があります。私たちは、それに対処できる力を生徒たちに付けさせたいと考えています」

    「学問とは、行き着くところ、自ら学ぶ姿勢の確立」

     中間考査や期末考査間近を迎えると、図書館、自習室、生徒ホールは自習する生徒たちでいっぱいになる。「自学自習」をモットーとする同校らしい光景だ。勉強熱心な生徒たちを目にすると、小川校長はうれしさを覚える反面、あることに寂しさを覚えるともいう。それは図書館で本を読みふけっている生徒の姿を見かけないことだ。

     「勉強オンリー、読書はごくわずかという最近の傾向が心配です。これは本校の生徒に限らず一般的な傾向なのかもしれませんが、私の中学高校時代は図書館にこもって、むさぼるように本を読んだものです」と、小川校長は表情を曇らせた。

     「中学高校の6年間を本校で学び、難関大学に合格した生徒たちは、例外なく読書好きであったように思います。本校では教職員が行き届いた指導をしますので、予備校に通わずとも、学習の実力は『自学自習』の中で身に付いていきます。勉強は大事ですが、柔軟な心を持つ中学、高校時代に、名画だけではなく、名著や名文に数多く触れることが、後の人生でどれほど役立つか。この点をさらに指導していきたいと思っています」

     小川校長には同校の職員とまとめた「あらすじで読む日本の名著」(中経出版、2003年刊)という、80万部を超えるベストセラーがある。これはシリーズ化され第2弾、3弾が刊行されただけではなく、「あらすじで読む世界の名著」も第3弾まで刊行された。おおよそのストーリーを把握しておけば、作品全体を読破する時のハードルが低くなるとの思いで、このシリーズを企画したのだという。このほかにも「気品のある生き方」(中経の文庫)、「学校崩壊なんかさせるか!」(致知出版社)などの著書がある。

     「よい作品には音読に堪えるリズムがあります。リズムがよければ、内容がスッと頭に入ります。文章をリズムよく読むことの楽しさを発見し、生徒が自ら進んで優れた文学作品に親しむきっかけになればと、私自身が教壇に立ち、朗読の授業を行っています」

      この授業は週に1時間、ホームルームの時間を活用して行っている。小川校長自らがテキストとして使用する文章を書くこともあるという熱の入れようだ。

     「学問は、行き着くところ、自ら学ぶ姿勢の確立です」と小川校長は話す。読む者は、自ら関心を抱いて良書を探し、さまざまな思想、感情を学んで、心を豊かにしていく。小川校長にとって読書は、豊かな心の教育と自学自習を結び合わせる貴重な営みなのだと思われた。

     (文:山田雅庸 写真提供:狭山ヶ丘高等学校付属中学校)

     狭山ヶ丘高等学校・狭山ヶ丘高等学校付属中学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年10月17日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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