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    「将来へ何かが残る」研究発表型文化祭…神奈川学園

     神奈川学園中学校・高等学校(横浜市)は毎年9月、「祭り」の色合いを抑え、研究発表を重視した文化祭を開催している。文化祭は6月の球技大会、11月の音楽会と並ぶ「神奈川学園の三大行事」とされ、最も力が入る行事だという。この文化祭の特色や運営方法などについて及川正俊教頭や生徒たちに話を聞いた。

    「祭り」より「文化」を重視した文化祭

    • 来訪者を迎えるために文化祭実行委員のアート班が制作したアーチ
      来訪者を迎えるために文化祭実行委員のアート班が制作したアーチ

     神奈川学園でもかつては、多くの学校がそうであるように、「祭り」の色合いが濃い文化祭を開いていた。それが研究発表中心へと姿を変え、「文化」に重きが置かれたのは1980年代半ば頃だったという。

     当時の経緯について及川教頭が説明する。「文化祭という行事を通して生徒が成長し、将来に役立つような何かが残る形にできないものかと考え、当時の実行委員会の生徒たちと話し合って、研究発表という方向性を見いだしました。各クラスでテーマを決め、それに沿って研究調査を行い、成果を展示する。この形で文化祭を数年続けていくうちに、いくつかのクラスから『これは!』と思える内容の展示が出てきました。気が付けば、研究発表の文化祭が本校の伝統になっていたというわけです」

     同校の文化祭は、関係者以外にも開放されている。中には、文化祭のテーマや発表内容を楽しみにしている「常連」もいるそうだ。そうした一般来場者も加わって、昨年の文化祭は2日間で約6000人が訪れた。

     ただ、文化祭の内容すべてが研究発表一色で塗り潰されるわけではない。「全学年の全クラスが教室を使って研究発表をしてしまうと、来校者も生徒も休むところがなくなってしまうのです。ですから、基本的には入学したばかりで研究発表がない中1は大食堂で、その他に全校で5団体程度は教室で喫茶を担当してもらうようにしています」と及川教頭は話す。

     また、高3も受験を控えているので、研究発表を行うのは中2から高2が中心ということになる。

    初めて尽くしの経験が将来の役に立つ

    • 文化祭担当の佐藤岳教諭
      文化祭担当の佐藤岳教諭

     取材に訪れた6月は、まだ文化祭に向けてクラスでテーマを決めている真っ最中だった。どのようにしてテーマを決めていくのだろう。

     文化祭担当の佐藤岳教諭によると、1クラスの生徒は35~40人。比較的多くのクラスが行うのは、まず全員が企画書を提出し、1人ずつプレゼンテーションを行う形だ。その後、投票で上位の数テーマに絞り込み、さらに切り口や実現性などを検討し、最終的には多数決や話し合いで一つのテーマに決めるという。担任は指示を出したりせず、「こういう方向もある」という程度のアドバイスにとどめる。生徒の自主性に委ねているのだ。

     6月中にクラスのテーマを決めたら、生徒たちは5、6班のグループに分かれ、夏休み中に手分けして調査を行う。テーマによっては大学や企業、官公庁などへ取材することも珍しくない。その取材の趣旨説明やアポイント取りも、生徒自身が行う。8月いっぱい調査を行って、9月にその結果を持ち寄り、文化祭でクラスとしてどのような打ち出し方をするかを決める。

     「今の中高生にとっては、何かを調べる=インターネットです。しかし、取材では、先方に趣旨を説明し、時間調整をし、理解してもらって初めて専門家や企業の人たちに会うことができる。直接に話を聞くというのも初めてでしょう。その取材から、自分たちなりの答えを導き出していくことも初めて。こうした初めて尽くしの経験が、生徒たちの将来に役立つことを願いながら指導しています」と佐藤教諭。

    • 研究展示発表を通じてプレゼンテーションの能力が向上する
      研究展示発表を通じてプレゼンテーションの能力が向上する

     研究発表では、内容だけでなく、発表方法にも生徒たちは工夫を凝らす。2年ほど前に、「生命の誕生」をテーマにしたクラスが、模造紙を使った普通の展示だけでなく、劇に仕立てて発表したことがあるという。展示発表とディベートによる発表を行ったクラスもある。「発表方法の独創性には、指導する側の教師も驚かされることがあります。文化祭を経験した後の生徒たちからは、プレゼンテーション能力やコミュニケーション能力の向上を実感します」と及川教頭は目を細める。

    裏方として文化祭を支える実行委員会

     文化祭は、中1から高3までの生徒代表約40人で組織される「文化祭実行委員会」が中心となって運営する。研究発表は各クラスでテーマを決めるが、その年の文化祭全体のテーマとなる「大目標」は実行委員会が決める。

     今年の実行委員長である高2のMさんによると、今年の「大目標」は「ホライズンズ」だという。「ホライズンには、地平線とか水平線という意味がありますが、複数形になると、視野とか展望といった意味になります。文化祭を通して、みんなに視野を広げてもらいたいという意味を込めて、今年の『大目標』にしました」

     文化祭実行委員は「大目標」を決めるほか、展示班、アート班、公演班の3グループに分かれて、文化祭の裏方的な活動をする。

     展示班は、学園の正面玄関に、文化祭開催までのカウントダウン用の垂れ幕を飾り付け、学校全体の発表をサポートしていく。その垂れ幕は、「大目標」をモチーフとしてデザインする。アート班は、文化祭当日に飾り付けるアーチや、縦2メートル横9メートルの壁画を制作する。公演班は、演劇や軽音楽、吹奏楽などの部活動の公演をサポートする役目だ。

     また、実行委員会は例年、「文化祭実行委員会新聞」を発行する。今年の新聞はA3判の用紙を二つ折りにした4ページ建てで、ぎっしりと文化祭関連情報を掲載している。

    • 文化祭後も発行される「文化祭実行委員会新聞」
      文化祭後も発行される「文化祭実行委員会新聞」

     「新聞は6月から文化祭が開かれる9月まで、ほぼ1か月に1~2回のペースで発行します。『大目標』の決定過程や夏休みの活用方法、生徒からの改善要望への回答などを掲載して、文化祭への関心を維持することも発行の狙いです」とMさんは話す。新聞は文化祭が終わった後も発行され、反省点や来年に持ち越す課題などを取り上げていくという。

     昨年の実行委員長を務め、高3になって文化祭活動を引退したFさんは、高2の時に「ファストフード」というテーマで日本マクドナルドを取材した。その際、病気で入院している子供に付き添う家族をサポートする「ドナルド・マクドナルド・ハウス」という施設を訪ねたという。

     「ハンバーガーを売るお店というイメージしかありませんでしたが、社会に利益を還元するこのような活動もしていることを、その時知りました。研究発表中心の『文化祭』を経験すると、それまで知らなかったことを知ることができます。私たちが見たり聞いたりして知っていることは、ごく表面的なことに過ぎないということも実感しました。『文化祭』は、視野を広げる点で確かに役に立ちました」

     「文化祭活動で高揚した雰囲気や充実感を味わえたのは神奈川学園で学べたおかげです。何十年たってもいい思い出として残ると思います」とFさんは笑顔で話した。

     生徒たちは文化祭を通して、社会への視野を広げ、仲間とのよい思い出を作っている。この経験が豊かな心を育んでいることは間違いない。新旧実行委員長の笑顔が、何よりの証拠だ。

     (文・写真:山田雅庸 一部写真提供:神奈川学園中学校・高等学校)

     神奈川学園中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年08月21日 14時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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