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    「文章検」で思考力を伸ばし、大学入試改革にも対応…漢検

     国語は勉強しても成果が表れにくく、つい後回しになりがちだが、国語の論理的思考こそ、すべての教科の基礎になる。その対策として「文章読解・作成能力検定(以下、文章検)」を導入し、生徒の国語力、思考力を伸ばしているのが、白百合学園中学高等学校(東京都千代田区)だ。「文章検」は、これまで曖昧だった文章能力を「基礎力」「読解力」「作成力」の三つの力に分け、それぞれの知識・能力を測り、育てることを目標にしている。導入した同校に、その成果を聞いた。

    導入のきっかけは2020年大学入試改革の対策

    • 「日本語が思考の基礎」と話す国語科の堀江教諭
      「日本語が思考の基礎」と話す国語科の堀江教諭

     「文章検」は2013年から、公益財団法人「日本漢字能力検定協会(漢検)」(本部・京都市)が実施しており、「漢検」で培った漢字能力・語彙(ごい)能力を運用して、文章でのコミュニケーション能力、論理的思考能力を高めることを目的としている。主に中学校・高校における団体受検や、企業の社員教育(2017年度実績のべ130社超)、大学・短期大学(460校がAO・推薦入試などに活用)に採用され、2017年度からは公開会場での個人受検も開始している。

     白百合学園が導入したのは2016年度。担当の堀江芽美子教諭は、「2020年の大学入試改革で新しく始まる共通テストを意識したのがきっかけでした」と話す。

    外国語教育に力を入れるからこそ、国語が重要

    • 「優しい雰囲気の生徒が多い」と話す田畑入試広報部長
      「優しい雰囲気の生徒が多い」と話す田畑入試広報部長

     もともと同校は記述力を大切にしてきた。同校の入学試験では、国語において記述問題を毎年出題している。「自分の言葉で自分の考えを書けるか見ています。定期テストでも記述問題は必ず出します」という。

     中学生には、古典から芥川賞作品まで、さまざまなジャンルの本を読ませて、読書ノートを書かせる。夏休みには全学年でコンクールに出品する作文を課題とし、自分が薦める本の魅力をプレゼンテーションする「ビブリオバトル」や、自分の意見を自分の言葉で表現する「私の主張」スピーチ大会を実施する学年もある。「選択制夫婦別姓、芸術保護の必要性、本校の文化祭のあり方など様々なテーマがあがります。表現するのを嫌がるどころか、むしろ積極的に刺激を受けあっているようです」(堀江教諭)。

     白百合学園というと、フランス語を重視しているというイメージが強く、これだけ国語に力を入れていることに驚く向きもあるだろう。

     「本校は明治時代にフランス発祥の修道会のシスターが創立し、英語とフランス語の両方を学んで複眼的に世界を見る目を養う教育をしてきました」と田畑文明入試広報部長が話す。伝統ある、お嬢様のミッションスクールと見られがちだが、「世間が思っているように大人しいだけではないですよ。素直で明るく、人のために何かしようというところが全体の優しい雰囲気につながるのでしょう」と、その校風を語る。卒業生である堀江教諭も、「いろいろなタイプの子がいて、それぞれ居場所がある学校です。男子がいないので、たくましく自立する面もあります」という。

     同校では中学3年間は英語とフランス語が必修で、高校はどちらかを第一外国語に選択する。国際教育にも力を入れ、語学教育には定評があるが、国語を大事にするのには理由がある。

     「いくら英語やフランス語が上手になっても、思考するときは母語である日本語で行っているのです。日本語が曖昧では、すべてが立ち行かなくなります。国語の成績がよくない生徒は、すべての教科で振るわないことがよく見受けられます。卒業後に外国語を使って活躍できても、語学はあくまでツールです。母語である日本語で思考し、生きていくのです」と、堀江教諭は説明する。

    事実と意見に区別して、文章を読み解く

    • 文章検は専用のテキストや過去問集もあり、学べる検定だ
      文章検は専用のテキストや過去問集もあり、学べる検定だ

     その訓練にちょうどよいのが「文章検」だという。

     堀江教諭によると、問題はシンプルで、文章作成の条件も具体的、字数も長すぎない。文章について様々な視点から学べ、全国規模で客観的に能力を測れ、資格が取れるのも魅力だ。高校生は小論文の模試を受けるが、そのステップとしてもちょうどいいという。

     同校の中学1年生の生徒が受検する4級の合格率は99~100%。一般的に4級は中3程度のレベルで、合格率の全国平均は75.5%(2017年度総計、日本漢字能力検定協会調べ)というから、同校の合格率は群を抜いている。

     堀江教諭は、「最初からできたわけではありません。過去問を解かせたら、最初はひどい状態でした。条件に従っていなかったり、事実と意見がごちゃ混ぜになっていたり。その出来は、普段の成績とは関係ありませんでした」と振り返る。

     4級は「語彙・文法」「図表の読み取り」「文章の読み取り」「手紙文の知識・作成」「意見文の作成」の五つの大問で構成されている。難しいのが意見文だ。2015年の第1回の問題を例にすると、「『ふろ洗い、1回10円』『テストで目標の点数を取れたらケーキ』のように、家の手伝いや勉強など、何かをがんばったときに、ほうびがある場合があります。これについて、『ほうびは必要だ』という意見と『ほうびは必要ない』という意見があります。どちらかの立場に立って、意見文を書きなさい」という具合だ。2段落に分け、第1段落は体験や知識を、第2段落は意見を述べ、制限字数内で書くというもの。

     堀江教諭は、「事実と意見の区別の仕方から指導しました。また、生徒たちが最初に書いた文は、事実の段落が短く、具体例が少ないのです。大事なのはいかに事実を詳しく書くか。それに気付いてないのです」と指摘する。

     指導後は論説文の読解の時も、これは事実か意見かを意識するようになったという。「書き方を知るだけでなく、書くことで体得しているんですね。意識を持って読み、文章のテーマをつかめるようになりました。生徒の大きな成長につながりました」

    母語で思考して生きていくための訓練としての文章検

    • 特徴あるアーチが美しい白百合学園の校舎
      特徴あるアーチが美しい白百合学園の校舎

     「受験対策としてはもちろん、これからも母語で思考して生きていくには、事実と意見を区別し、自分の意見を事実で肉付けして、明晰(めいせき)に筋立てて話したり書いたりできることが大事です。「文章検」を取り入れてからは、定期テストで応用問題を出しても文章が読めるようになってきました」と、堀江教諭は手ごたえを感じている。

     「文章検」を導入して今年で3年目。小説を書きたい生徒が増え、文語で難しい森鴎外の『舞姫』の授業にも生徒が積極的に取り組むなど、国語好きな生徒が、白百合学園に育っているという。

     近い将来、知識だけならAIに聞けば済む時代が来る。そんな時代を生きる生徒たちが、今、何を学ぶべきか。答えが見つからない今こそ、思考力の基礎となる国語が重要になってくるのではないだろうか。「文章検」がその一助となるのかもしれない。

     (文と写真:小山美香)

    2018年06月04日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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