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    中学受験のプロ講師たち「マナビレンジャー」がアドバイスするコーナーです。

    変わる大学入試、小中生はどう準備?…森上展安

    「新テスト」…知識を応用する力が問われる

     大学入試改革などについて検討していた文科省設置の「高大接続システム改革会議」の最終報告が3月末に発表されました。この会議は、現在の中学校2年生から小学校5年生までの生徒・児童が大学に進学するときに「大学入試のシステムを大きく変えよう」という意気込みで設置されており、世間の注目を集めていました。

     しかし、最終報告では、当初の勢いは姿を消していました。目玉は「センター試験が新しい名称のテストになる」ということくらいで、制度上の大きな変更は見送られました。

     では、大学入試は現状とほぼ変わらないのでしょうか。各大学の個別試験でも、センター試験に変わる「新テスト」(新しい名称のテストを仮に「新テスト」と呼びます)でも、もっと言えば学校での学習でも、必要とされる知識や学習内容が大きく変わるわけではありません。

     でも、新しい大学入試では、知識の理解度ではなく、それらの知識を応用する力が求められます。例えば「英語」では、「話す」「書く」などのアウトプットの能力が問われるようになるのです。

     このような「新テスト」では記述式による出題が望ましいのですが、何十万人も受験する中で記述式の採点作業を人間の手で行うことは無理です。コンピューターの手を借りなくてはならず、実務面での困難な課題が浮き彫りになっています。一方で、大学ごとの個別入試では小回りが利くので、大学入試改革の方向に沿った新しいスタイルのテストを用意することが可能です。

    小学生でも解ける? 東大入試数学…読み解けば計算はたった1行

     そこで筆者は先日、小5から中2までの生徒と保護者の方々に集まっていただいて、大学入試改革に向けて英・数・国の主要教科をどう学習していけばよいのか、大学入試問題に詳しい専門家から話してもらいました。

     数学は元開成教諭の石田浩一先生に、予備校での春期講習の合間をぬって講演していただきました。石田先生が例にあげたのが、東大の入試(文系)の中の1問です。文章題の文字数は少し多めですが、ルールを理解して手順を整理すれば小学生でも考えることができます。文章題を読んでテーマを理解することさえできれば、解答するために必要な基礎知識は小学生でも理解して身につけることができるものでした。

     石田先生は,最後にある数式を示しました。そして「これで答えです。計算はこの1行だけです」と説明しました。計算自体よりもその計算にたどり着くまでの部分が重要だということは,子供達には驚きだったかもしれません。

    数学の出題の狙いを理解する…実は読書量こそ必要

     石田先生が示したのは、基本的な知識を応用する力と、理解した内容を数式として表現する力でした。東大入試では従来から問われてきたものです。今回の問題のように難しい知識を必要としない場合には「出題の狙いをいかにつかみとるか」が特に重要になります。

     すると、石田先生は意外なアドバイスを口にしました。「出題の狙いを理解するために必要なのは、実は読書量である」というのです。多くの参加者が興味を持ったようで、講演後のアンケートに「数学の話の中で『読書量』という言葉がキーワードになるとは」という感想を記した人もいました。

    「現代」に関する英文が出題される…自分の考えを効果的に伝えるには

     英語については元東京学芸大付属高校教諭の右田邦雄先生(宝仙学園中学高等学校共学部理数インター教頭)に話していただきました。数学と同じく、「新テスト」で求められるものが「知識を応用する力」であると前置きしたうえで、「英語では『四技能』を網羅するということです。特にこれまでは『読む』『聞く』というインプットに重点が置かれていましたが、これからは『話す』『書く』というアウトプットについても評価する方向になります」と分かりやすく説明してくれました。

     とりわけ入試英語の題材については、今までの古典的な文学的文章から、現代の話題や問題に関する英文や関連図表などに変わっていくとのことです。多様な見方や考え方が可能なテーマについて読んで概要や要点を整理する。得られた情報を統合・活用して、受験生が自らの考えや文章の主題を適切な言葉で効果的に伝える。そのような能力を高く評価するようになるそうです。

     右田先生は会場の子どもたちに、英語で書かれたグレーディッドリーダー(難易度別の多読用読本)などを使って「さまざまなジャンルのものをたくさん読む機会を作ってほしい」とアドバイスしました。さらに「自分の意見などを他人に伝えることが、これまでの学習では十分ではなかった。様々な英語の学習や活動の機会を通じて、そのトレーニングをしてほしい」と強調していました。

    「新テスト」の記述式問題例…資料を読み込んで答える「面白さ」

     右田先生はいくつか具体的な例題を使って説明していましたが、その中に「国語」の問題がありました。今回の「新テスト」の記述式問題のイメージ例として公表された「交通事故に関する問題」です。事故の発生件数は増えても死者数が減ってきていることを示す資料を見て、どのようにそう裏付けることができるかを考えて、設問の文章を完成させるという内容です。これも、会場の子どもたちや保護者たちに「面白い」と受け止められたようでした。

    2016年04月08日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
    プロフィル
    森上展安  (もりがみ・のぶやす
     1953年岡山県生まれ。早稲田大学法学部卒業。東京第一法律事務所勤務を経て都内で学習塾を経営後、88年に㈱森上教育研究所を設立。中学受験、中高一貫の中等教育を対象とする調査・コンサルティング分野を開拓した。中学受験生の父母対象に「わが子が伸びる親の『技』(スキル)研究会」セミナー(oya-skill.com)をほぼ毎週開いており、読む進学マガジン『読む進学』も主宰(yomu-shingaku.com)。読売新聞教育欄でコラム『合格知恵袋』(2011年~12年)を連載したほか、研究所HP(morigami.co.jp)では『THE 対談 学校長シリーズ』を動画で発信している。森上教育研究所スキル研究会の著書は『中学受験 はじめての学校ガイド 2015』(ユーキャン学び出版など多数。
     
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