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    中学受験のプロ講師たち「マナビレンジャー」がアドバイスするコーナーです。

    タブレット授業でも変わらない国語のツボ…尾方康記

    ICT教育の「不易流行」

     みなさん、「不易流行」という言葉を知っていますか。

     中学受験のための勉強をしているみなさんなら、松尾(まつお)芭蕉(ばしょう)はご存知でしょう。現代の俳句がまだ俳諧(はいかい)と呼ばれていた江戸時代前期の俳人ですね。「不易(ふえき)流行(りゅうこう)」は、その松尾芭蕉が、向井(むかい)去来(きょらい)服部(はっとり)土芳(とほう)といった弟子たちに俳諧のあり方を語ったときの言葉です。

     この言葉は、現代では、ものの考え方を表現するのにしばしば使用されます。新しいやり方やスタイルを追い求めていく姿勢(流行)の中にも、ずっと変わることのない本質的なもの(不易)がある、ということです。

     ここ数年、学校訪問をすると、電子黒板やタブレットはいうまでもなく、CALL教室(コンピューターを活用した外国語学習を行う設備を整えた教室)をはじめとしたICT教育に関わる施設、そして、その運用の具体例としての授業を見せていただく機会が増えました。(ICTは、「インフォーメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー」の頭文字をとったものです。)

    電子黒板で生徒の解答案を検討…「同時性」の利点

     先日訪問した東京都の多摩(たま)地区にある女子校の取り組みでは、先生が出した課題に対して、それぞれの生徒がタブレットに入力した考え(解答案)を電子黒板に投影し、その内容を検討するという授業を行っていました。その授業を通して、生徒は、他の人の考えと自分の考えのちがいや共通点を知ったり、先生が教えている教科内容の「原理・原則」を理解したりといった活用がなされていました。

     もちろん従来の黒板を使ったり、紙に書いたものを集めて発表したりする方法でも、このような授業は可能だと思います。しかし、みんながいっせいに自らの考えを示すという「同時性」があることで、生徒はそれぞれが他の人の考えに影響を受けていない「その時の自分の考え」と向き合わなければならないという点が大きく異なります。

     また、瞬時(しゅんじ)に行えることで、時間も有効活用できます。「自分の考えが至らない、足りない」という感覚は、劣等感(れっとうかん)につながる面もありますが、「それを解決しよう」という心の働きにもつながります。従来の黒板を使ったやり方だと、他の人の発言を受けて自分の考えを修正したり、他の人の考えが自分の考えだったという錯覚(さっかく)を起こしたりして、いわゆる「わかっていたつもり」という中途半端な状況を起こしかねません。(小学生を指導しているとそういう場面は日常茶飯事です)

     しかしながら、このような「同時性」があることで、「わかっていたつもり」という気持ちを小さくし、「向上したい」という気持ちを大きくできるのではないかと感じました。もちろん、とんちんかんな考えを示したりする人もいるでしょう。他の人と比較して「自分が劣っている」と感じる気持ちも、従来のやり方よりは大きくなると思います。実際に、見学していた授業でもそんな事態が起こっていました。

    生徒たちの劣等感…先生のユーモアあふれる評価とフォロー

     でも、それを和らげて、解決へ導いていたのが、指導する先生のユーモアあふれる評価の言葉やフォローです。

     単純に情報設備や機器システムを使用するという「流行」だけではなく、先生と生徒の関係やみなさんが「学ぶ」という気持ちを大切にするという「不易」が根本にあることで、今までのやり方を超えた学習効果が生まれるのではないかと思いました。

    今の自分と向き合う力をつける…国語で心がける二つのこと

     小学校でも電子黒板やタブレットを使用した授業が取り入れられつつあると思いますが、本格的な学びを始める中高校生になる前に、受験生であるみなさんは何をしておくべきでしょうか。

     いくつかあると思いますが、今回は「今の自分と向き合う力をつけること」についてお話ししておきましょう。

     「今の自分」と向き合うことは、学びが本格化する中学生以降のみならず、受験勉強に取り組む六年生にとっても大切なことです。そのために、国語という教科で心がけることが二つあります。

    「見直し」「書き直し」…別の自分の視点で見直す

     まず、一つ目は、「見直し」や「書き直し」です。

     みなさんは、作文でもテストの答案でも、書き終わったら、「終わった!」という気持ちでいっぱいになり、見直さないことが多くありませんか。なかには「二度と見たくない」と思っている人もいるかもしれません。作文などは書いた直後は気分が高ぶっているし、「これでいいんだ」という思いも強いので、書き直すことはおろか、見直すことさえ難しいものです。

     でも、少し時間が経てば、「あれっ?」と思うほど自分のそんなこだわりがなくなって、頭がやわらかくなるものです。テストなどで最後の最後に見直しをするように指導されるのは、そんな気持ちの働きを見越しているのです。

     少し時間が経つだけで、前の自分は「過去の自分=他人」になります。書いたのは確かに自分なのですが、それを別の自分の視点で見直す。もちろん、信頼できる大人の助言をもらうことも方法の一つです。でも、まずは自分の習慣として取り入れてみましょう。

    2016年05月17日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
    プロフィル
    尾方康記  (おがた・やすのり
     中学受験塾アクセスの国語科専任。1965年生まれ。大手進学塾専任講師として最難関校選抜クラスを担当後、香港に移住、小中高生の受験指導を行う。帰国後の2001年にアクセスに参画。偏差値ではなく、子ども一人一人の適性に合った学校選びや受験を保護者に提案している。学研『言葉力』シリーズ監修者の一人。
     
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