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    中学受験のプロ講師たち「マナビレンジャー」がアドバイスするコーナーです。

    お嬢様女子校の秘話…辛酸なめ子<6>

    「自宅の噴水で溺れる」が実話って……

    • 噴水がある豪邸(写真はイメージです)
      噴水がある豪邸(写真はイメージです)

     お嬢様が多い女子校出身の友人に、先日聞いたエピソード。同級生に有名な不動産開発会社のご令嬢がいたそうですが、その同級生が友人に「誕生日にルビーかダイヤモンドどっちがいいか親に聞かれたんだけど、どっちがいいと思う?」という相談の電話をかけてきて、友人は困惑。合宿には巨大なダイヤのアクセサリーをつけて来たそうで、同じ部屋の人は、もし紛失でもされたら疑われる、と緊張したとのことでした。巨大なダイヤなんていったい何十カラットあるんでしょう。大人になって0.03カラットをやっと購入した身としては値段も想像ではません。こんな同級生がいたら格差を十代にして実感させられます。

     フェリス出身のお嬢様芸人たかまつななさんのネタに「お嬢様は自宅の噴水で溺れたことがある」というものがあり、たかまつさんの発想はすごいと思っていて、本人にお会いしたときこの話題を出したら「聞きませんか?」とノーブルな笑みを浮かべていました。どうやら実話だったみたいで驚きました。

     お嬢様学校で名高いのは聖心女子学院です。日本だけでなく世界各地にある由緒ある女子校。たしかパリス・ヒルトンとレディー・ガガもアメリカの聖心で学びました。

     十年以上前の聖心女子学院の文集「塔」を、教員だった母にもらって拝読していました。そこに掲載されていた聖心トリビアで印象的なものは……

     「初等科ではお手伝いさんのために、編み物や裁縫などの講座が開かれていた」

     「お供部屋」というスペースでは、お手伝いさん達のために、編み物や裁縫などの講座が開かれていたそうです。なんとなくお手伝いさんに感情移入してしまいます。無料講座、受けたいです。

     「授業前は『お願いいたします』、授業後は『恐れ入りました』と挨拶していた」

     しかも教室に入るのには列を作って沈黙のうちに入室。規律正しいです。先生の方はどんな挨拶をされるのか気になります。お粗末様でした、とかでしょうか。

    男子学生を視界に入れてはなりません

     「戦前の聖心には『父兄以外の男性は(たとえ兄弟といえども年少者以外は)行事の際も入場を許さない』という校則があった」

     ある時、学内での音楽会に芸大の教授をお招きしたら、男子学生も一緒に来てしまったそうです。シスターが退場を求めたけれど押し問答になり、結局男子3人が校内へ。女生徒には、決してこの3人の方に目を向けてはならないとお達しが出たそうです。視界にも入ってはいけないなんて。芸大の男子ならお嬢様のお相手にふさわしい気もしますが……。

     戦前の方がお嬢様度が徹底されていたようです。でも現代でも聖心出身の女性には品格と知性が漂っている印象があります。出版社や映画配給会社などで活躍するOGの方々に会うたび、女子力ならぬ嬢力を感じさせられます。華美にならず、でも気品があって礼儀正しいという、大和撫子(やまとなでしこ)の理想形。先日、そんな卒業生の1人であるNさんに話を伺う機会がありました。Nさんは仕事ができる編集者さんで、字がものすごくきれいな方。お手紙を見ると毎回、教科書体フォントかと思うくらいです。 

     初等科から聖心という生粋のNさん。「両親が聖心の教育が良いと聞いてきて、第1志望にしました。お受験幼稚園に通って受験しました。入学してみたら、一族郎党みんな聖心、というご家庭が多かったですね。おばあちゃん、親、いとこ、姉妹聖心とか」

    お金があるから何? という感じ

    • 自慢したところで上には上がいるというお嬢様たち(写真はイメージです)
      自慢したところで上には上がいるというお嬢様たち(写真はイメージです)

     聖心の場合札幌や関西にも姉妹校があるので、親戚みんな聖心、というのも可能かもしれません。ちなみにお金持ちの令嬢も結構いるのでしょうか? 母がよく、○○の社長の娘さんがいる、とか言っていましたが……。

     「たしかにいるにはいます。大きなメーカーの社長令嬢とか、官僚の娘さん、医者の娘さんとか。宮様もたまにいらっしゃいます。在学中は老舗和菓子店のお嬢さんもいましたね。でも制服もおしゃれじゃないし、社長の娘だからといってとくにキラキラしてるということもなかったです。わけへだてなくみんなに接してました」

     グリーンの制服、普通にかわいいと思っていましたが意外に在校生はコンプレックスあるみたいです。

     「バッグも決まっているからブランドバッグも持てませんし。ときどきブランドのお財布を持ってる人がいるくらいでしょうか」

     お友達の家に行ったらゴージャスだった体験はありますでしょうか。

     「家に遊びに行ったら結構すごかった、ということはありました。グランドピアノがどーんとあって、シャンデリアが下がっていたり。しかも田園調布で大理石の床の大きな広間のお家もありました。家にプールがある子もいましたね」

     そんなザ・お金持ちみたいな……。ところで女子校では礼儀作法とか食事のマナーの実習があるところもありますが、Nさんの記憶では聖心ではとくになかったそうで、わざわざ学校で学ぶ機会を作らなくても、各家庭で自然と身に付いているのでしょう。もしくはセレブのご家庭の友達の家で学んだりするのかもしれません。

     「聖心はシスターもそんなに喧々(けんけん)してなくてのどかでしたね。良妻賢母を育てるというよりも、自分の表現で第一線に立って才能を生かしましょう、と、自分の足で立つことを良しとするところもありました。芯がある人が多い印象でした」

     成金っぽく親の会社や職業を自慢する風潮もなかったそうです。親に頼らず自立した精神を養います。

    「別荘自慢とかそんなのもなかったですね。自慢したところで上には上がいますから……。すごい家の人が多いので、誰もあえて言わないですね」

     世の中には自分の家よりもっと名家でお金持ちがいる、と十代のうちから悟ることで生まれる謙虚さと理性。金持ち喧嘩(けんか)せずの精神に近いものがあります。お嬢様度が極まるともはや自慢しなくなるんですね。

     「とにかく華美にしなくてもいい、という風潮でした。お金があるから何? という感じでしたね」

     交流がある男子校を聞くと、兄弟がいたりする慶應や暁星、の名が上がりました。(女子校の男子交際事情のテーマはまた改めて取材したいです……)

     慶應と聖心の交流の話は以前別の卒業生に聞いたことがあり、やはり普通の進学校では入っていけない、セレブのソロリティの存在を感じます。海外ドラマ「ゴシップガール」のような……。お話を伺い、改めて聖心への憧れが高まりました。これから街でグリーンの制服を見かけたら軽く目礼してしまいそうです。

     ちなみに昔、もし聖心を受けたら、という話をしたら、母に「生活レベルの差を感じて辛くなるからやめたほうがいい」と冷静に言われました。今は亡き母のそのアドバイスに感謝しています。


    プロフィル
    辛酸 なめ子( しんさん・なめこ
     漫画家・コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は「大人のコミュニケーション術」(光文社新書)、「おしゃ修行」(双葉社)、「魂活道場」(学研プラス)など。

    2018年06月11日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
     
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