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    中学受験のプロ講師たち「マナビレンジャー」がアドバイスするコーナーです。

    女子校出身者の個性…辛酸なめ子<10>

    どんな先生にもファンクラブがあった

     話していてフィーリングが合うと思ったり、自然体でいられると感じたら、同じく女子校出身というパターンが多いです。女子校育ちは個性的だったり、ギャグセンスのレベルが高めだったりする人が多いような気がします。モテよりも笑いや個性を大切にしがちなのでしょうか。そんな中でも、衣装制作や音楽など創造的な活動をしている30代女性、スジャータさん(芸名)にお話を伺いました。刺激的な内容になったので、校名は伏せさせていただきます。

     都心の歴史ある中高一貫女子校に入学したスジャータさん。まず驚いたのは、先生がモテていたということ。女子校には男性教師がモテる学校と、女性上位でウザがられる学校にわかれる気がします。もちろん先生にとっては、嫌われるよりモテるくらいの方が(うれ)しいと思われますが……。それにしてもその女子校では先生が教え子(卒業後)と結婚する率がかなり高かったようです。

    • 「先生の結婚相手の約8割は元教え子」という環境(画像はイメージです)
      「先生の結婚相手の約8割は元教え子」という環境(画像はイメージです)

     「先生の結婚相手の約8割は元教え子なんです。生徒の卒業を待って結婚というパターン。どんな先生にもファンクラブがあるのが驚きでした。例えば、ある運動部の顧問のM先生は、生徒の部活を指導していたら挙動不審で警察に職質されるほどの強烈なキャラでした。突然、『夢の中で妖精に金槌(かなづち)で頭を(たた)かれて、3日後に死ぬと予言された』とか変な話をしてきたり。そんな先生にもファンクラブがあったんですよ」と、スジャータさん。生徒さんは優しいというかストライクゾーン広すぎです。

     「すごいかわいい子でもキモい先生を狙っていたりしてハーレムでした。モテない人は女子校の先生をやったらいいと思います」とスジャータさん。それも女子校によるかもしれません。強気の進学校とかに行ったら、逆に心折れる事態に……。ちなみに、もしちょっとでもかっこいい先生だとどうなってしまうのでしょう?

     「かっこいい先生はファンが100人いて争奪戦でした。すごく校則が厳しかったので、抑圧された反動が異性への欲求になってしまっていたのかもしれません」

     そのリビドーの発露の一例として、こんな事件があったそうです。

     「近くに男子校があったのですが、うちの学校からその男子校の窓に向かってトイレットペーパーが投げ込まれる、という事件がたびたびあったようです」

     それは、のろし的ななにかのサインなのでしょうか……。トイレットペーパーではなく、花とかもっときれいなものを投げ込んでほしい気もします。

     スジャータさんに、厳しい校則の例について伺うと……。

     「夏は白い靴下をはかなきゃいけなかったんですけど、当時流行(はや)っていたルーズは絶対ダメでした。10月からは黒タイツと細かく決まっていました。冬に白い靴下をはきたい時は許可証が必要だったり、とにかく何でも許可証を出さないとならないんです。寒いからジャージをはおりたい時も許可証。茶髪検査もあって、私は地毛が茶色なのに引っかかって注意されて、反論したら反抗的な人柄だって言われたのがトラウマです」

     もちろん寄り道も禁止だとか。

     「駅の中のシュークリームを買って反省文とか。私、たまたま先生に見つかるタイプなんです。反省文は親も書かされます」

    • 誰が一番、理性を失えるか競争して戯れた(画像はイメージです)
      誰が一番、理性を失えるか競争して戯れた(画像はイメージです)

     抑圧された環境でストレスがたまると、学校の階段で誰が一番、理性を失えるか競争したりして戯れていたそうです。

     「白目をむいて駆けずり回ったり、絶叫したり、女を捨ててましたね」

     それにはかないませんが、似たようなことを私もやっていた思い出がよぎりました。受験のストレスがたまってきた頃「心労クラブ」というものを一時的に作って、屋上で丸めた新聞紙で殴り合っていました。女子校生はときどきエネルギーの発散が必要なのかもしれません。

     「まず共学だと、こんなことやらないですよね……」とスジャータさん。

     「ささやかな自己表現でいうと、当時GLAYやT.M.Revolutionの全盛期だったんですけど、白い割烹着(かっぽうぎ)に好きなミュージシャンとかアイドルの名前を書いている人がいましたね。青春っぽい思い出です」

     女子校あるあるでしょうか。私の時も、友達が上履きに「BUCK-TICK」とか書き込んでいました。このくらいの発露ならかわいいです。

    笑いのセンスを磨いたことによる副作用

     女子校出身者は、卒業後も男性との関係で苦労するんでしょうか。ぎこちなかったり、自意識過剰になってしまったり……。

     「私は苦労してますけど、女子校をうまくお嬢様学校みたいなブランディングに生かしていけばいいんですかね。でも同性とは仲良くなりやすいです。女だけの世界にいるから、自分の中にインナー異性を作り出して男の目線で女子を好意的に見たりしますよ」

     女子校など女だらけの集団では、全員が女性脳では共存できなくて男性脳のリーダーが生まれると脳研究者の本で読んだことがあります。

     一方、異性相手だと、意外な部分でライバル意識を抱いてしまうとか。

     「男性と付き合っていると、彼氏のおもしろさを凌駕(りょうが)しようとしてしまうんです。男は自分よりおもしろい女に魅力を感じないらしいですけど。つい相手よりおもしろいことを言って萎えさせて、結果、つまらない女と浮気されてしまう。世の中的にはかわいくてつまらない女の方がモテるようです。男性は女性のおもしろさは脅威にうつるんですかね」と、スジャータさん。

     webで以前、興味深い記事を読みました。笑いの研究をしているロシア系米国人物理学者のクリシュタフォビッチ博士によると、「笑いは一種の武器であり、ユーモアには常に攻撃性が秘められている」とのこと。ジョークで相手を笑わせることは、言葉による攻撃で相手より優位に立とうとする、という意味もあるそうです。そのため女性が男性を笑わせると、男性は自分のテリトリーに入ってきたように感じて、プライドが傷つくのかもしれません。

     「前にバイトしていたお店でも、私が他の人を笑わせていると店長が悔しがっていました。私がしょうがなく店長のつまんないギャグで笑ってあげると機嫌良くなる。自分の存在意義とおもしろさが比例しているのでしょうか」

     たしかに、男性を笑わせてもとくにモテにはつながらない感じがします。

     「下ネタを言われた時も、かわいく恥じらえばいいんですけど、つい、上回るネタでかぶせてしまうんです」

     女子校で鍛えた話術や批判精神を発揮すればするほど、男性は遠ざかってしまうのでしょうか……。憂慮すべき事態です。

     「女子校で無駄におもしろさを磨くと婚期遅れます。ギャグセンス高い人多いけど、はたしてそれが正解か……」

     ただスジャータさんは、日本のギャグがそんなに通じない外国人にはモテるとのこと。ジョークのジャンルがかぶっていなければ、そんなに対抗意識は生まれないのでしょうか。もしくは日本人でも、笑わせられて言い負かされても何も感じないほど覇気のない男性なら大丈夫かもしれません……。

     個性を伸ばせる女子校の環境。でも良い面もあれば弊害もあるということを、今回の取材で再確認いたしました。

    プロフィル
    辛酸 なめ子( しんさん・なめこ
     漫画家・コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は「大人のコミュニケーション術」(光文社新書)、「おしゃ修行」(双葉社)、「魂活道場」(学研プラス)など。

    2018年10月05日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
     
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