文字サイズ
    中学受験のプロ講師たち「マナビレンジャー」がアドバイスするコーナーです。

    全国最大規模の中学入試・市川/栄東……広野雅明<5>

     サピックス小学部の児童はここ数年平均すると、1人あたりの出願校数がのべ約7校、受験校数は約5校です。東京都と神奈川県の入試が2月1日に始まりますが、埼玉県、千葉県の入試や地方校の首都圏での会場入試は1月以前に、さらに帰国生入試や千葉県の専願入試は12月に始まります。受験を一度体験し、早めに合格校を確保できると安心して2月以後の入試に臨めます。今回は1月に入試のある千葉県の市川中学校(市川学園)と埼玉県の栄東中学校を取り上げます。

     まずは、サピックス小学部主催の第2回合格力判定サピックスオープンで両校の志願状況を見てみます。

     栄東の東大1は、ここ最近の難化が原因か若干数を減らしていますが、1月校の志願者は他校も増加傾向です。両校を例にその理由を探ってみましょう。

    常に進化する共学校 市川学園

     市川学園は1937年に男子校として開校した伝統校です。地方校の首都圏入試や埼玉県内で私立中学校が多数開校する前は、長らく男子にとって最初の入試は市川から始まる時代が続きました。今でも1月20日に幕張メッセで実施される入試は1会場では全国最大規模の入試です。2003年に中学校を共学化し、同時に新校舎に移転しました。移転前はJR・東京メトロ「本八幡駅」や京成電鉄「京成八幡駅」から歩く生徒が多数いましたが、若干駅から遠くなりましたので、バスを利用する生徒が多くなり、JR「市川大野駅」やJR・東京メトロ・東葉高速「西船橋駅」からバスで通学する生徒も増え、通学圏が広くなったように思います。06年には高等学校を共学化、09年にはスーパーサイエンスハイスクールに指定、12年にはユネスコスクールに認定されるなど毎年のように進化する学校です。

     ここ最近では東京大学の合格者も毎年10人を超え、難関国公立大学・医学部医学科・早慶上理などの難関私大の合格者数も安定しています。

     市川学園のキーワードの一つは、「第三教育」です。家庭における「第一教育」、学校における「第二教育」に対し、「第三教育」は自分で自分を教育すること。その象徴として、校舎内の入口近くの1階に約12万冊の蔵書を誇る図書館(第三教育センター)があり、読書だけではなく、さまざまな授業に積極的に活用しています。今でこそ図書館を重視し、調べ学習などに活用している学校が増加しましたが、受け身で吸収型の授業が多かった時代に同校の取り組みは進歩的でした。

     また、最近では「ALICE(Active Learning for ICHIKAWA Creative Education)プロジェクト」と題したアクティブラーニングを実施しています。これは電子黒板機能付き高輝度プロジェクター&大型ホワイトボード3面、タブレット端末を生徒1人につき1台常設している「ALICEマルチルーム」3教室をベースとし、グローバル社会で必要となる思考力、表現力、コミュニケーション力を養成するためのプログラムです。最先端の施設が生徒の成長を支えています。

     同校の特徴の一つが、各界の第一線で活躍する著名人を招いて、講演してもらう「土曜講座」や医学部志望の生徒のための「医進ゼミ」など各種の講座が充実していることです。海外研修も充実しており、カナダでのホームステイや英国研修などを希望者対象に実施しています。

     また、市川学園の魅力として注目されるのは施設が充実していること。総合グラウンド(16,136平方メートル)、第1グラウンド(25,487平方メートル)、第2グラウンド(15,711平方メートル)のほかに、市川市大野町には野球場があり、体育館も充実しています。野球、サッカー、テニス、陸上など各運動部が目いっぱい活動できます。

     市川学園の生徒は、とにかく明るい。また先生方も非常に教育熱心で、生徒たちに手厚く接します。学校全体が、これからの時代に必要な生徒を育てるために日々進化しています。最近では2月以後の東京などの入試は受験せず、千葉県内の学校に進学する児童も年々増えています。それはやはり、千葉県内各校のそれぞれの魅力が保護者に十分に伝わっていることが大きいと思われます。市川学園の先生方は「まだまだ、これがゴールではないですよ」とおっしゃいます。進化はさらに続きます。

    生徒も先生も一生懸命頑張る進学校 栄東中

     県立浦和高校22人、栄東中学校27人。2016年度の東京大学合格者数は各界に衝撃を与えました。「公立王国」埼玉県で私立高校が初めて公立高校を超えたのです(その後は県立浦和22→32→22、栄東27→15→14となっており、県立浦和が埼玉で最多の合格者数を維持)。同じ私立の開智高校も17→18→18と東大合格者2桁を続け、今や埼玉県でも私立高校の実力が確実に上昇しています。

     栄東高校は、1978年に埼玉栄東高校として開校した比較的新しい学校です。92年には中学を開校し、94年から共学化しました。最近では中学から特進コースなどのコース制を取り入れる学校が増えました。栄東は「東大クラス」と「難関大クラス」、一方の開智は「先端クラス」と「一貫クラス」を設けています。クラス名にも両校のカラーが表れます。

     栄東の「東大クラス」は、設置当初こそ名称の評判があまりよくありませんでしたが、まずは宣言して、その目標に向け先生方も生徒もモチベーションが高まり、結果も出ましたので、大成功だったと思います。2001年に湘南新宿ライン、15年に上野東京ラインが開通し、同校最寄りのJR「東大宮駅」と、東京都や神奈川県のターミナルが直通で結ばれ、一気に通学圏が広がりました。また、埼玉県の入試解禁日が1月10日と千葉県よりも10日早いため、前受け校としての需要も大きくここ最近は合計4回の入試で10,000人を超える受験者があります。

     栄東の教育の特徴はいち早くアクティブラーニングを導入したこと。学校での授業とさまざまな校外学習を有機的に結合し、課題研究やグループワーク、ディスカッション、プレゼンテーションなど、生徒の能動的な学習を取り込んでいます。中1では箱根、中2では奈良・京都、中3ではオーストラリア、高1では芦ノ湖、高2ではアメリカを訪れ、校内で学習したさまざまな学習をベースに現地で学びをより深めていきます。各先生方も競って生徒の興味を伸ばす授業を展開します。そして、予習、復習、小テスト、ノートやリポートの提出と学習面での面倒見は非常によいです。

     クラブ活動も非常に盛んで、最近では特にクイズ研究部などの活動が目立ちます。学校でもクラブ活動を推奨していますので、運動部も文化部も熱心です。生徒も部活を楽しみに毎日通っているようです。JRの車両基地に隣接した広い校地に野球場、運動場、体育館、屋内プールなど施設も非常に充実しています。これらの恵まれた各施設を利用し、文化部も運動部も十分な活動ができます。中学校の特徴の一つが完全給食制、通学時間も伸び、共働きのご家庭が増えている現在では非常にありがたい配慮です。

     校長先生は今でも授業を担当され、毎年、検定試験を受験されているそうです。非常にパワフルかついつまでも学ぶ姿勢には敬服します。「本校は歴史も伝統もない学校です」というのが口癖ですが、先生方の熱意ある取り組みが栄東ならではの歴史や伝統を育てていると感じます。

    プロフィル
    広野 雅明( ひろの・まさあき
     サピックス教育事業本部本部長。サピックス草創期から、一貫して算数を指導。算数科教科責任者・教務部長などを歴任。現在は、入試情報、広報活動、新規教育事業を担当。

    2018年11月07日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
     
    おすすめ
    PR
    今週のPICK UP