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    中学受験のプロ講師たち「マナビレンジャー」がアドバイスするコーナーです。

    小学校6年の11月、いよいよ勝負の時です…佐藤亮子

    大変だった三男の受験、2人の兄は灘中生

     今年もあと2か月となりました。毎日何を考えながら過ごしていますか?

     この時期になると、私の胸にはさまざまな出来事や思い出が去来します。中学受験というのは、まだ12歳という小さな子供が体験するので、親がすることも多く、当時のことを思い出すと目がウルウルしてきます。

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     思い起こせば、長男と次男は年子で、あっという間に受験が終わり、灘中生になったのです。

     その2年後には、三男の受験が迫ってきました。合格を勝ち取って灘中での生活を毎日楽しそうに話す2人の兄がいる環境の中で、今から灘中の門をたたき、合格を目指す受験生の三男の心理はどのようなものか……と案じていました。

     私は、三男がプレッシャーを感じているのかどうか、まだ子供だから、自覚していないのかと思っていました。しかし、成績があまりにも、乱高下するので、「この原因はもしかしたら、プレッシャー?」と気が付きました。これは、何とかしなければ!と思い、策を巡らすことにしました。

     そこで、三男の実力を上げるというよりも、兄たちの存在のプレッシャーをはねのけ、精神的に落ち着くことができることは何かを考えました。兄たちは、灘の過去問を8年分くらいやりましたが、三男と相談して、2倍以上の19年分することにしました。1989年から三男の受験の前年までの問題で、「さすがに昭和の過去問は解かなくてもいいだろう」と三男。

     灘中は、2日入試で、1日目に算数と国語と理科、2日目に算数と国語があり、入試1年分は5科目分となります。

     (注)科目の試験時間は、年によって変更になる場合があります。 

     ということは、19年分となると5科目×19年=95科目。1度解いただけでは、絶大な自信は持てないだろうと思ったので、19年分を4回することにしました。なぜ4回なのか、といいますと「石の上にも三年」という言葉を思い出して、それを上回る4という数字に設定したというわけです。

     95科目×4回=380科目のテストを1科目1時間で解くとすると380時間かかります。採点とやり直しの時間を1回目は1科目につき40分かけることにします。

     380科目分のテスト=380時間。40分×380科目のやり直し=1万5200分=約254時間

     問題を解いて採点し見直すと、

     380時間+254時間=634時間

     1日1時間、問題を解く時間にあてるとしたら、634日!あれ?全然間に合わないではないか!1年半以上かかる……

     当時、9月1日から過去問を始めることにしたので、

       9月 30日間

      10月 31日間

      11月 30日間

      12月 31日間

     4か月の合計は122日。学校や塾がある日は、1日1時間が限界です。122日間のなかに過去問4回分をこなすのはかなり無理があることが判明したのです。

     関西の受験の本番は、1月の半ばなのでもう少し日数はあります。私は、受験に勝つために、『その年の除夜の鐘が百八つ鳴り終わるまでにすべてを終わらせる』ことをモットーにしていたので、122日間という数字は、我が家にとって絶対的な意味を持つのです。

    634日かかる計画を大幅に修正!

     三男と改めて計画を立て直すことにしました。

     (1)1回目はきっちりと決められた時間で問題を解くが、2回目以降は、状態を見てやり方を決める。

     (2)採点は、国語の記述を大手塾の浜学園の先生にお願いする。それ以外は、母がする。

     算数の記述形式の問題は、母では分からないので、自己採点。1科目の採点にかける時間は、5分とする。

     (3)全く理解できなかった問題のみ時間をかけて見直す。その他の間違いは、普段の塾の宿題をする合間に楽しんでやることにし、その時間はカウントしない。

     (4)19年分を1度したらそれなりに覚えているところもあるので、本番で50分間の算数の入試問題は、2回目では5分縮めて45分とする。3回目は、さらに縮めて40分。国語と理科も同様に時間を短縮することに。

     (5)2回目の国語は、出題の内容を覚えているので、読解問題は間違えたところだけさらっと解答し、知識問題の間違いのみやり直す。知識問題は、母がノートにまとめておいたものを、スキマ時間でチラチラみる。

     (6)三男は、算数が苦手だったので、算数のみ2回目でも、すべての問題を丁寧に解く。ただし、解答時間は5分短縮する。

     (7)理科は得意なので、2回目は間違えたところのみやる。

    電卓片手に過去問に使える時間を割り出す

     緻密な計画に基づき、過去問を解く時間を計算し、電卓を手に割り出した数字が以下。除夜の鐘が鳴り終わるまでに過去問に使える持ち時間は、122日間。土日、冬休みなどを考慮すると、202時間となる。

     過去問1回目が103時間、2回目が45時間、3回目が33時間、合計181時間。4回目は、残り時間でする。

     大幅な短縮に成功しました。これで、間に合う!後は、ひたすら、やるのみ、という状態に。

    精神論なんていらない―頭の中に具体的なビジョンはあるか

     冷静に考えると、すごく大変そうなのですが、「合格したい。だから一生懸命頑張るぞ!」と大した具体策もなく、精神論で立ち向かうより、目の前に山と積まれた大量の過去問を「征服するぞ!」とひたすら手を動かして、過去問のコピーの山を減らす方がはるかに着実に合格へと近付いていきます。精神論なんていらないのです。

     具体策のない「頑張るぞ」なんて気持ちは、あっという間に、シャボン玉のように消えてしまいます。

     そんな経験は何度もしてるでしょ。

     しかし、コピーの山は手を動かさなければ、決して消えることはありません。でも、少しずつでもやれば、大きな山は必ず小さくなっていきます。努力は裏切らないってことです。どんなにつらいことでも、ゴールがはっきり見えていたら、人間って頑張れるものなのです。

     このつらい時期は、お母さんやお父さんは、口だけではなく採点するなど自らの手を動かし、受験生を応援していただきたいと思います。

    キャー!さ、殺人事件?

     9月から毎日、塾の宿題が終わる午後11時30分から1時間を過去問の時間にあてていました。三男にとって体力の限界だったようで、午前0時30分にその日の過去問をやり終えたら息も絶え絶えに。

     すでに布団が敷いてある隣の部屋に行って、布団に入り込んだ途端、いつも意識不明になっていました。ある夜、午前0時28分になったので私はちょっと台所に行って用事を済ませて戻ると、三男の姿は机の前になく、布団の中にもなく、どこだろうと周りを見回しました。すると、布団の1メートル手前で、あと、もう少しというところで行き倒れになっていました。

     隣の部屋で寝ようとしたけれど、エネルギーを使い果たしたらしいのです。右腕は右肩付近に、左腕は何かを求めているかのように布団の方向に腕を伸ばし、両足は走っている格好で倒れ込んでいました。そこら辺に、ケチャップでもまいておいたら、テレビドラマでよく見る黄色い規制線が張られた殺人現場でしたね。私は、三男の両腕を持ちズルズル引きずって寝かせました。

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     三男の寝顔を見ながら「大変だなー」と思うより、「子供の時に自分の限界まで力を毎日毎日出し切って1日の眠りに就く」なんて「本当に素晴らしい」と思いました。

     小学生はまだまだ小さいのです。1人では頑張れません。どうぞ、お父さんもお母さんも、仕事の手を休め、お子さんのために残り少なくなった時間を有意義に送れるようにお手伝いしてあげてください。

     そうすれば、必ず、合格へとつながると思います。

    プロフィル
    佐藤 亮子( さとう・りょうこ
     大分県生まれ。津田塾大学卒業。高校の英語教師として勤務。結婚して長男、次男、三男、長女の4人の子を育て、4人とも、東京大学理科三類に進学する。現在、受験に対する親の心構えなどをテーマに講演活動を行っている。

    2018年11月14日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
     
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