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    中学受験のプロ講師たち「マナビレンジャー」がアドバイスするコーナーです。

    中学入試多様化の背景にある教育の変化とは?…北一成<1>

    既に「適性検査型入試」136校、「英語入試」112校

     この2~3年、首都圏を中心に私立中学入試の形態が急速に多様化しています。これまで長い間、「国・算・社・理」の4科目、もしくは「国・算」2科目の入試が中学入試の主流でしたが、これらに加えて、教科の枠組みにとらわれない新たな入試形態が増えつつあるのです。その典型が「適性検査型入試」や「英語入試」です。

     「適性検査型入試」は、これまで公立中高一貫校で採用されてきた入試形態です。「与えられた知識を柔軟に使い、その場で考え、自分の言葉で表現する力」が問われます。出題の形式も、いわゆる「適性検査」と似た構成で組み立てられています。

     ですから、公立中高一貫校を志望して、「4科目」「2科目」の受験勉強をしてこなかった小学生も、力試しや練習として私立の「適性検査型入試」を受けることで、公立の「適性検査型試験」本番のために役立てることができます。

     その中には、まさに「公立一貫対応型入試」という名称で行われるものや、「総合型入試」「合科型・論述入試」「思考力入試」と呼ばれるオリジナルな形式の入試もあり、合わせて数えると、既に今春の2018年入試で136校もの私立中が、こうした入試を導入しています。

     「英語入試」もこの数年、急速に増加しています。かなり以前から、私立中が実施する「帰国生のための別枠入試」で、国・算などの科目のほかに英語を課すケースは少なくありませんでしたが、今では、国内で過ごしてきた小学生を対象にした一般入試でも、こうした「英語入試」を行う私立中が急速に増加しています。今春の18年入試では、首都圏で112校の私立中が、何らかの形で「英語入試」を実施しました。

     以上二つの入試のほかにも、ユニークな入試形態として、「自己アピール(プレゼンテーション型)入試」や、「国・算・社・理」の4科目ないし、それに「英語」を加えた5科目の中から、得意な3~1科目を選んで受験できる「得意科目選択型入試」という形態も非常に多くなっています。

     また、この1~2年で、受験生同士でグループワークやプレゼンテーションなどを行う「アクティブラーニング型入試」や「グループワーク型入試」、さらには「プログラミング入試」というユニークな入試まで登場しています。

    「中学の多様化」は「変わる大学入試」の反映

     こうした「中学入試の多様化」の背景には、20年以降の「大学入試の変化」や、それを契機とした「日本の教育の変化」があり、さらには現在の小学生が中高~大学や大学院を卒業して社会に出る28~30年以降、AI(人工知能)時代の到来がもたらす「将来の社会で求められる力の変化」があります。

     これから先の大学入試や日本の教育、そして将来の社会では、知識の多寡や正確なアウトプットの力だけが問われるのではなく、未知の課題と出会ったときに、「与えられた情報を整理し」、「その場で自分の頭で考え」、「自分の意見やアイデアを自分の言葉で表現する」力が必要になるといわれています。また、世界の人々とともに力を合わせて「協調」「協働」して現実の諸課題の解決を図っていくためには、「英語力」を大前提とした「コミュニケーション力」も不可欠となってきます。

     そうした力を、今の子供たちが身に付けていけるように、今、「20年からの大学入試改革」を一つの転機として、「日本の教育改革」が行われようとしているわけです。

     20年から現在の大学入試センター試験に代わって実施される「大学入学共通テスト」のモデル問題が昨年5月、文部科学省から公表されましたが、その問題の形式が、冒頭で触れた公立中高一貫校の「適性検査」の出題とそっくりであることが話題になりました。

     この新しい大学入試では、「知識・技術」と「思考力・表現力・判断力」に加えて、「主体性・多様性・協働性」も問われます。文部科学省はさらに、各大学が個別入試で問うべき力として「創造性・独創性・芸術性」を挙げていて、これらの力を評価できる入試(出題)の形式として、「解答の自由度の高い記述式」問題や、小論文、プレゼンテーション、集団討論、面接、推薦書、資格試験などを、実際にイメージ図にまとめています。

     現在の小学6年以下の学年は、大学入試改革から5年目の24年以降に大学入試に挑んでいく学年です。「英語の民間検定」のスコアが大学入試に採用され、全面実施される年以降の大学受験生に当たります。それならば、早くから「英語力」を育てる教育に注目が集まるのも当然のことでしょう。

     こうした、将来の大学入試の変化を、いち早く先取りしているのが、現在の「中学入試の多様化」だと私たちは解釈しています。

    「新タイプ入試」は潜在的な力に光を当ててくれる入試

     とはいえ、「中学入試の多様化」について、今の小学生と保護者の皆さんは、決して難しく考える必要はありません。そういう変化が加速しているならば、そこで登場してきた、多様な「新タイプ入試」の中から、「自分の得意なことを評価してくれる入試」や、「わが子の強味や才能、良いところを評価してくれる入試」を積極的に見つけ出し、それを私立中への「合格のチャンス」を広げることに結び付けていけば良いのです。

     もちろん、これまで3年間ないし2年間、4科目や2科目の受験勉強を積み重ねてきた受験生は、自信を持ってそれらの入試に挑んでいってください。ただ、「もしかすると、自分は何か新しいタイプの入試の方が、本来持っている力が発揮できるかも……」と思ったときには、親子でよく研究したうえで、そうした多様な「新タイプ入試」へもチャレンジしてみることをお勧めします。

     ちなみに、18年12月2日(日)には、首都圏模試センターの小6・小5「統一合判」模試会場の一つである相模女子大学中高本校舎で、「新入試体験!私立中コラボフェスタ」という、ここで述べてきたような「新タイプ入試」の体験イベントがあります。関心のあるご家庭は、お子さんと一緒に参加してみてはいかがでしょうか?

    プロフィル
    北 一成( きた・かずなり
     首都圏模試センター教務情報部長。1985年に首都圏の大手中学受験専門塾に入社。同塾の広報や進学情報誌の編集などに携わり、2013年8月に退職。翌月「日本Web情報出版」を設立し、同時に「日本Web学校情報センター」及び「JWSIC教育研究所」を開設。学校情報・入試情報を専門とし、取材等で約400校の中高一貫校をのべ3000回以上訪問。2000人以上の保護者から学校選びに関しての相談を受けてきた。2013年11月から現職。

    2018年11月27日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
     
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