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    中学受験のプロ講師たち「マナビレンジャー」がアドバイスするコーナーです。

    名古屋のお嬢様学校の式典に潜入…辛酸なめ子<12>

    熱意にほだされてお引き受けしたものの

     先日、身に余るご依頼がありました。南山学園系列のカトリックの女子校、聖霊中学校・高等学校から、創立記念日に講演をしてほしい、という依頼です。話下手ですし、そのような厳粛な式を汚してしまいそうなので最初はお断りさせていただいたのですが、熱意を持ってくださっている教頭先生のお言葉に、つつしんでお引き受けすることに。それにしても私の講演内容によっては呼んでくださった先生の立場が危うくならないか心配です。

     ただ、思い返せば、母校JGでも時々校外の方を招いて講演がありました。ただその内容を今となってはほとんど覚えておりません。ですので、私の拙い話も、脳細胞の新陳代謝とともにいつかは忘却の彼方に消えていくので、そんなに懸念しなくても大丈夫かもしれないと思えてきました。

     前もって送っていただいた聖霊中学校・高等学校のパンフを拝見。なんといっても校名に「霊」という字が入っているのがスピリチュアル系としては心()かれます。

     1949年に創立された歴史ある女子校。モットーは聖書のみ言葉「光の子として生活せよ」。宗教教育・外国語教育・情操教育の三本柱を大切にしています。一日は「朝の祈り」で始まり「終業の祈り」で終わります。キリスト教の行事を通して、ボランティア活動などでホスピタリティを実践。パンフを読んでいるだけでも波動の高まりを感じます。

     ところで創立記念式典は、朝9時半スタートだそうです。名古屋から30キロ位の場所に位置する学校なので、物理的に間に合うかという不安がありました。都内で9時集合でも結構危ういので……。学校の方にご助言いただき、始発の6時の新幹線で名古屋7時半に到着し、そこからタクシーで向かえば間に合うとのこと。教えていただいたルートで向かい、タクシーの運転手さんが道に迷ってしまいましたが、なんとかギリギリで到着。ちなみに生徒さんは、各地から11系統で26台も運行している学園バスで登校しているそうです。あとで教頭先生に伺ったら、生徒さんの親御さんが、ガソリンスタンドを経営されていて、その方の尽力によってスクールバスができたとのこと。半端ないインフラ力です。

    聖霊を感じるサンクチュアリでの厳かな儀式

    • 広大なグラウンド。スポーツの部活も盛んだそうです
      広大なグラウンド。スポーツの部活も盛んだそうです

     第69回創立記念式典は、9時半から始まります。講堂に向かうとき、あまりにも敷地が広大で驚きました。

     「野生動物もいそうですね」と教頭先生に伺うと

     「イノシシやリスなどが目撃されています」とのこと。グラウンドも広く、都心の学校とは比べ物にならない大自然に囲まれています。門から校舎までも1キロくらいあります。もちろんマリア像も設置されていて、サンクチュアリ感が。

     緊張しつつ会場の第一体育館へ。荘厳なオーケストラの演奏が流れています。まず演奏で始まるなんて豪華です。たいていの学校はオルガンとかパイプオルガンの演奏のところ、会場の後ろの方でオーケストラ部が生演奏。聖歌隊と共に、評判が高い部だそうです。

     「奏楽」に続いて教頭先生が「開会の辞」を宣言されました。そしてプログラムは「校歌」に移りました。

     

     「少女(おとめ)ぐさ 操も高く生ひ立たん (きよ)きみ霊の加護(まも)るまにまに」

     

     という歌詞で始まる校歌は結構萌え系なフレーズが多いような。「操」とか「少女」が出てくるイノセントな歌詞を、清らかな女子たちのキー高めのピュアな声で歌われると、脳内が洗われるようです。ちなみに制服もかわいくて、ベレー帽に紺のジャンパースカート、ボレロという組み合わせがお嬢様オーラを放っています。

     続いて「聖書朗読」。「マルコによる福音書第4章30~32節」の、「神の国」を「からし種」に例えた箇所です。学校長先生がその聖書の言葉について解説されました。

     「からし種は最初とても小さくて目立たないですが、大きな木に成長します。神の国も最初は小さくても、時間が()てばおおぜいの人が神の国に入って、守られるようになります」「生徒たちは先生、先輩たちに温かく見守られながら育っていきます」など、素晴らしいお話を伺い、もうこれで創立記念日は完成しているからいいじゃないですか……むしろこれで美しく終わりにしたほうが……という気持ちになってまいりました。

    本当に私で良いんでしょうか?

    • 「花の奉献」の儀式。こんなに大量の花束を見たのははじめてです
      「花の奉献」の儀式。こんなに大量の花束を見たのははじめてです

     はじめて拝見した「花の奉献」という儀式は、宗教委員の生徒さんたちが厳かに花束を持って前に歩んでいき、壇上に花束を捧げる美しい行為。学校によって独自に発展した儀式があるんですね。大量の花束が70束くらい、壇上の端から端まで並べられました。この花束は地域の病院や保育園、老人ホームなどに届けられるそうです。この儀式のBGMはパッヘルベルのカノンで、さらに波動が高まり、目頭が熱くなりましたが、その後の自分の講演を思うと涙もスーッと引いてゆきます。

     続いて「創立記念の祈り」は、学校長先生、中学生、高校生などで、朗読のパートが交代される、昔懐かしい卒業式の言葉のような形式。その祈りの中には「私たちがいつも苦しんでいる人々に目を向け、援助を惜しまない人間に成長できますように」「きょうの奉仕活動を祝福し、導いてください」といった、志の高い文章もありました。

     聖歌「ごらんよ空の鳥」という、スピリチュアルな曲が奏でられ、清らかな歌声が響きました。自分の番が近付き、そろそろ観念してきました。

     休憩時間が10分ほどあって、その時は静まり返っていた生徒さんたちがにぎやかに談笑。静かな時と元気な時が、ちゃんと切り替えられるようです。生徒さんに「『ムー』読んでます」と話しかけていただき、少し緊張が和らぎました。

     そしていよいよ講演です。本当に私で良いんでしょうか? 覚悟を決めるしかありません……。

     

     「今日はここに来るとき道に迷いましたが、聖霊の導きでたどりつきました」

     

     しーん……。

     

     いきなり外した感がありましたが、最初に自己紹介代わりに最近のイラストなど紹介したら少しずつ空気が温まっていきました。

     そしてお話させていただいたのは、女子校で自分のやりたいことが見つかった話。異性の目を気にせず好きなことができてよかったという話。これまで取材した素敵な女子校エピソード。反対に、女子校の副作用(がさつになったり、異性に対して自意識過剰になったり)、でも同窓会に行くと、女子校の友達は運命共同体やソウルメイトのように感じられて、誰かの幸せを自分のことのように喜べるという話。そしてミッションスクールでの6年間は神に祝福されていて、人生の力の源になるという話。祈りのパワーについて。など、できる限り長く話したつもりが40分でしたが、拙い話ながら、放送事故的な沈黙にもならず、無事に終わりました。

     ただその後、壇上に花束を渡しに来てくださった生徒さんが感想を伝えてくれたのですが、彼女のほうがよほど堂々としていたことを書き添えておきます。

     おそらく最初で最後の、女子校での講演。40分話すのもやっとなので、学校の先生はすごい、と改めて尊敬の念が芽生えました。体力的に、長く話し続けるには、生徒さんたちから若いエネルギーを吸収しながらでないとできません。生徒さんに役に立つ話をするどころか、生命力をわけてもらったようです。中高の先生がアンチエイジングな理由がわかりました。

    プロフィル
    辛酸 なめ子( しんさん・なめこ
     漫画家・コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は「大人のコミュニケーション術」(光文社新書)、「おしゃ修行」(双葉社)、「魂活道場」(学研プラス)など。

    2018年11月30日 17時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
     
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