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    中学受験のプロ講師たち「マナビレンジャー」がアドバイスするコーナーです。

    立教女学院の「クリスマス讃美礼拝」の霊験…辛酸なめ子<13>

    なるほど、これは頭がよくなるはず

    • 中庭のヒマラヤスギはクリスマスの時期にイルミネーションが点灯。レトロな照明がかわいいですが、LEDじゃないので電気代がかかるそうです
      中庭のヒマラヤスギはクリスマスの時期にイルミネーションが点灯。レトロな照明がかわいいですが、LEDじゃないので電気代がかかるそうです

     礼拝堂の横を通ると、女子たちの清らかな歌声が聞こえてきました。クリスマス礼拝のための最後の仕上げでしょうか。立教女学院を訪れるのは十年ぶり以上ですが、いつもキャンパス内の自然の豊かさと、クラシカルで趣ある校舎に羨望の念を抱いてしまいます。憧れの、松任谷由実さん、酒井順子さんの出身校、というのもあるように思います。

     ミッションスクールの行事の中でもホーリー感が高まるクリスマス礼拝。その中でも、プロテスタント系の立教女学院のクリスマス礼拝はかなりゴージャスで充実した内容のようです。今回、立教女学院高等学校「クリスマス讃美礼拝」の二階席に参列させていただくという光栄に預かりました。

     難易度の高い名門女子校で進学率も素晴らしい立教女学院。系列の立教大学にも内部進学できますが、そのためには卒業論文を完成させないとならないと、今回、広報の先生のお話ではじめて知りました。応接室で先生が見せてくださった「ARE学習・卒業論文」の冊子。ARE学習とは総合学習のことだそうです。その冊子の論文は1人40~50ページのボリュームで、テーマは「民族融合を果たしたシンガポール」「オーストラリアの歴史が築きあげたアボリジニの現状」「看護師不足の深刻化にみる現在の日本社会の様相」「日本における移民政策の実態と建前の剥離」……etc。社会的な視点で多くの資料を読み込んで書かれた考察に圧倒されました。チラっと見た限りでも大人顔負けの内容でした。立教女学院、校舎の雰囲気がおしゃれとか表面的な部分しか見ていなかった自分を反省。中庭の樹齢100年のヒマラヤスギや、クスノキなどの放つパワーが、生徒さんに良い影響を与えているのでしょうか。そんなパワースポット効果もあると思われますが、もちろんそれだけではなさそうです。礼拝に参加して、これは頭が良くなるはず……とキリスト教の霊験を実感させられました。

    • 聖マーガレット礼拝堂の外観。まるで建物が意識を持っているかのような存在感が。生徒たちを優しく見守っているようです
      聖マーガレット礼拝堂の外観。まるで建物が意識を持っているかのような存在感が。生徒たちを優しく見守っているようです

     聖マーガレット礼拝堂へ移動すると、キリスト教の学校からのクリスマスカードが展示されていました。恵泉女学園や女子学院、頌栄女子学院など……学校同士こんな交流があったとは知らなかったです。「皆様のうえに主の豊かな恵みをお祈りいたします」「主のご降誕を祝し、よい年をお迎えになりますよう祈ります」と、いたってまじめな内容でした。聖マーガレット礼拝堂はロマネスク様式で1932年の建造ですが、しっかりした造りで今も充分使えて、歴史的価値も高いです。70代、80代の卒業生も懐かしめるというのも素敵(すてき)です。

    厳かな礼拝堂で、全身全霊で神を讃美

    • プログラムと礼拝用書、聖書を交互に、瞬時に参照していきます。大変だけれどこなせると充実感が
      プログラムと礼拝用書、聖書を交互に、瞬時に参照していきます。大変だけれどこなせると充実感が

     14時30分頃、いよいよ「クリスマス讃美礼拝」のスタートです。プログラムを拝見すると、音楽の要素が多いです。ヘンデル「メサイヤ」を主軸に、聖歌隊や全員合唱、さらには校外からソリストを招聘(しょうへい)。ソプラノとアルトの女性ソリスト二人とも東京芸大出身で華麗な経歴でした。司会のチャプレン(牧師)二人によって、粛々とプログラムは進行。

     厳かな前奏で、旗を掲げた聖歌隊が入場しました。こちらは英国国教会の儀式と同じしきたりだそうで、そう聞くとありがたみと説得力が増してきます。続いて一同、赤い礼拝用書を開き48ページの聖歌を歌います。起立のまま礼拝用書29ページ「聖語」を読み、22ページの文言を唱和します。

     「主よ、わたしたちの口を開いてください」「わたしたちは主の誉れを現します」

     さらに矢継ぎ早に、詩編第19編を、牧師と全員で交互に朗読。

    • 二階席は高3の生徒さんたちがいて、もう高三にもなると譜面を見ずに外国曲を歌えるようで、さすがでした
      二階席は高3の生徒さんたちがいて、もう高三にもなると譜面を見ずに外国曲を歌えるようで、さすがでした

     牧師「天は神の栄光を語り 大空はみ手の業を告げる」

     一同「日は日に言葉を語り継ぎ 夜は夜に知識を伝える」

     牧師「言葉でもなく、話でもなく その声も聞こえないが」

     一同「その響きは地を覆い、その言葉は世界の果てに及ぶ 神は海に太陽の幕屋を据えられた」

     詩編というだけあって、文学的です。こんな感じで何回もやりとりがあり最後は「アーメン」でしめ。聖書は語彙(ごい)力、国語力を高めるのにも役立っていそうです(中高時代、聖書の中から「はしため」とか気になるワードを見つけて盛り上がっていたことを思い出します)。

     前半始まったばかりですが、立ったり朗読箇所を瞬時に探して読んだり、今度はプログラムを参照したり、結構な忙しさです。毎日の礼拝もこんな感じなのでしょうか? かなりの脳トレになっている気がします。反射神経も鍛えられます。

     全員合唱、聖歌隊のコーラスで、波動の高い響きに包まれましたが、その後は聖書と賛歌の朗読が交互に続きました。

    • 旗をかかげて厳かに退場していく聖歌隊。イギリスのヘンリー王子とメーガン妃の結婚式でこんな場面見たような気がします
      旗をかかげて厳かに退場していく聖歌隊。イギリスのヘンリー王子とメーガン妃の結婚式でこんな場面見たような気がします

     「イザヤ書9章1~6節」の、「ひとりのみどりご(主イエス・キリスト)」がお生まれになるという預言の箇所が代表の生徒さんによって朗読されました。続いて一同、「マリヤの賛歌」をスピーディに朗読。今度は「ルカによる福音書1章26~38節」を生徒さんが読み、皆で「シメオンの賛歌」を朗読しました。「ルカによる福音書1章26~38節」は、マリアが処女受胎する有名なシーンです。天使がマリアに妊娠を告げるのですが、その時にマリアに言ったセリフは「あなたの親類のエリザベトも、年をとっているが、男の子を身ごもっている」「神にできないことは何一つない」と、神が親類まで受胎させていたとは。今改めて読むと天使はわりと失礼な気もしますが、エリザベトが何歳だったのか気になります……。礼拝中、これらの聖書の箇所は、何ページとか言われないので、分厚い聖書から該当の箇所を自力ですぐに探し出さなければなりません(私はなぜか体が覚えていたのか見つかりました)。この行為も、生徒さんの脳細胞を活性化させているのでは? と感じました。

     後半はさらに、起立して「使徒信経(しんきょう)」の祈りの言葉を朗読したあと、不思議なメロディーの「曲譜」に合わせて歌うように朗読。さらに間髪入れず、ひざまずいて「主の祈り」を厳かに読み上げてから、起立して聖歌、という一連の流れもなかなかの忙しさでした。ひざまずき用クッションもありましたが、老体にはやや厳しい動作でした。心や体、脳など全身全霊を鍛えられる礼拝です。

    そのとき、高次元の扉が開いた

    • 校長室には東郷青児画伯による聖マーガレット礼拝堂の絵が。ご令嬢が立教女学院に通われていたそうです。校長先生に呼び出された生徒だけが見ることができる絵です
      校長室には東郷青児画伯による聖マーガレット礼拝堂の絵が。ご令嬢が立教女学院に通われていたそうです。校長先生に呼び出された生徒だけが見ることができる絵です

     今回、東京・練馬の教会からいらした牧師が説教をされ、誰もが心の中に飼い葉桶(お生まれになったイエス・キリストが安置された桶)を持っているので、清らかに保たなければならない、というお話が印象的で、生徒さんたちも静かに聞き入っていました。インナー飼い葉桶、これから意識してみます。

     プログラムで何より癒やされたのは、やはり歌の時間です。ソリスト二人の大人ボイスと、少女たちの合唱のハーモニーは素晴らしく、全員合唱の「Hallelujah!」で、高次元の扉が開いたかのようでした。最後の「ハンドベル奉奏」もこの世のものとは思えない音色でした。一時間半のプログラムはあっという間で、魂も肉体もアップグレードしたような感覚が。ミッションスクールの礼拝には実はすごいメリット……というと現世的ですが、効果があることが改めてわかりました。礼拝が終わった後、しばらく廊下には生徒さんたちが自主的に歌う声が響いていました。その力強い歌声を聞くと、人間として勝てる気がしません。クリスマス礼拝で、目に見えない恩恵を授かれるのが、何よりもクリスマスプレゼントです。

    プロフィル
    辛酸 なめ子( しんさん・なめこ
     漫画家・コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は「大人のコミュニケーション術」(光文社新書)、「おしゃ修行」(双葉社)、「魂活道場」(学研プラス)など。

    2019年01月08日 11時48分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
     
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