森口博子「夢に『締め切り』はない」(下)

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 掲示板「発言小町」20周年インタビュー企画の第5回は、歌手の森口博子さん。SNSの活用法や運気の引き寄せ方などについて尋ねたインタビューの後編です。

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日常に溶け込む「エゴサーチ」

 ――森口さんは、ご自身の名前を検索する「エゴサーチ」はしますか?

 エゴサ、大好きです! しょっちゅうします。もう私の中でエゴサは、日々身に着けているマスクや下着みたいなもの。日常に溶け込んでいますね。

 ――印象的なものはありましたか。

 「先日、デビュー曲をライブで聴いたけど、進化した歌声に涙が出た」とか、「ボーカルの表現力と艶が増した」とか、「今の歌声であの曲をレコーディングしてほしい」とか……。あまりにも嬉しくて、そのコメントにお返事したときもあります。過去の私ではなく、今の私を受け止めてもらえたことが、歌手としてとっても励まされました。

 ――森口さんはデビュー曲がアニメ『機動戦士Ζガンダム』のテーマ曲でした。当時と今では、アニメ自体の存在感も変わりましたね。昔は「子供のもの」と思われていたものが、今では「日本を代表するカルチャー」になっています。

 当時はアニメが日陰の存在だったので、レコード店に行くと、同期のアイドルの子の曲は派手なコーナーが設けられていたりPOPがあったりするのに、私のデビュー曲は置いてもらえなかったんです。やっと置いてもらえても、アニメの曲は端っこの方で……。前方に置いてもらえないと見てもらえない。だから見えるように、「ま」行にある、大好きな松田聖子さんの前に自分のレコードを置いたりとかしていました。

 17歳でデビューしましたが、高校卒業間近に所属事務所から「才能がない」とリストラ宣告を受けました。でも、どうしても歌がやりたかったので、どんな仕事でもきっとつながると、バラエティーをやらせて頂きました。そんな中、再びガンダムのテーマソングのお話を頂いたんです。その劇場版アニメ『機動戦士ガンダムF91』の主題歌(「ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~」)が初めてのベスト10入りして、紅白歌合戦の初出場や全国ツアーにつながりました。そこから「あ、アニソンにもいい曲があるんだね」ってみんなが認識し始めてくれました。

 昨年には、NHKで放送された番組「発表!全ガンダム大投票」で、ガンダム40年の歴史の361曲の主題歌の中から、私のデビュー曲が1位になったんです! そして3位にも私の曲が選ばれました。30年以上経っても、ファンの皆さんがぶれることなく曲を大切にしてくださって、こんなにも愛されてるんだって、涙がこぼれました。

 その番組で選ばれたベスト10の曲をカバーさせて頂いたアルバムが、今年8月にリリースされた『GUNDAM SONG COVERS』です。もちろん、1位になったデビュー曲も入っています。おかげさまでオリコン週間アルバムランキングで3位にランクインしました。

 デビュー曲をセルフカバーするって、勇気がいるじゃないですか。17歳の頃の歌声とは違いますし、アニソンは人々の思い出にリンクしたものなので、カバーすることで、その思い出が崩れないか……と心配でした。でも多くの方々が「原曲を超えた」「鳥肌が立った」とコメントをくださって、ほかの楽曲含めて「音楽的にも素晴らしい名盤」と言って頂き、心の底からうれしかったです。

 ――そのアルバムで、すごい記録を作られたんですよね。

 オリコンでアルバムのベスト10に「28年と2か月ぶり」に帰ってきたということで、「インターバル記録・日本の女性アーティスト第1位」をいただきました! 大好きな歌を、ファンの皆さん、スタッフの皆さんと大事にしていた結果が、こういう奇跡を生んだのだと思います。私は「夢には『締め切り』がないんだな」って、改めて強く思いました。

 ――皆さんで勝ち取った感じなんですね。

 母に「やったー、波が来たー!」って言ったら、「波が来たんじゃなくて、波に乗せてもらっているのよ」って言われました。本当にその通り。みんなが、このムーブメントを起こしてくれました。4歳の頃から自分の中で、唯一ぶれていないとしたら、「歌が大好き。歌いつづける」という思いですね。それは、どんな状況があっても、何があっても変わらないです。

つらい時も笑顔で

 ――いつも明るい森口さんですが、悩み事があった時は誰に相談しますか?

 私は4人姉妹の末っ子なんですが、2番目の姉に相談します。次女は的確で厳しいし、誰よりも理解してくれている。「あー、そうきたか!」という答えをくれます。

 たとえば私が愚痴を言うと、姉は「今はみんな、そんなもんだよー。あんただけじゃないよー」って言ってくれて、具体例を話してくれるんです。「なんだ、面食らったのは私だけじゃないんだ!」って言ったら、「今、そんな時代よー。そんなことで足踏みしていたら、もったいないよー」って力づけてくれます。

 ――すてきなお姉さんですね。逆に、森口さんが相談を受けることはありますか?

 福岡の高校時代の仲良し7人グループの子から、よく相談を受けます。悩み事相談を受けるので有名な「原宿の母」「新宿の母」とかあるじゃないですか。高校時代の友達から、私は「○○(住んでいる地名)の母」って呼ばれています(笑)。アドバイスする時には、経験談を交えて話すようにしています。「私はこうだった。そしてこうなった。だから私は今も、それを続けているよ」というふうに。

 ――経験談は説得力ありますね。

 よく「なんで博子ちゃんは、いつも笑顔でいられるの?」とか、「なんでそんな元気でいられるんですか?」って聞かれるのですが、それにはワケがあるんです。

 32歳の厄年の時に、身も心も仕事も人間関係も恋愛も、全てボロボロで四面楚歌になったんです。そのとき母が「つらい時こそ、口角を上げていなさい。絶対、運気が巡ってくるわよ。への字の口をしている人のところには、人は寄りたくないよね。運気もあなたから遠ざかっていくよ」って言ってくれて、それで笑顔で、感謝の心を忘れずにいるようにしました。すると、いろいろなことが好転してきて、もういいことしか起こらなくなった! 初舞台のお話をいただいて、芸術座で初座長をさせていただきました。すごい、ありえない!と思って。

 それからミュージカルとか新しいジャンルが広がって、CDのリリースでも配信サイトで1位を頂き、その後も信じられないこと続いています。

 厄年の気づきの時から本当に人生が変わって、いいことしか起こらなくなった。これを友達に話したら、「よし、じゃ明日から無理してでも笑ってみる」って言ってくれました。私も「うん、最初は無理することも大事だよ。本当に笑えない日は笑わなくてもいいけど、できる日には笑ってみるのもいいと思う。そのうち、作り笑いに心がついてくるから」って話しました。

 私もいまだにいいことが続いているから、これはみんなにお伝えしたいですね。起こったことをどう受け止めて、消化していくかって大事。私、「運勢も風邪をひく」って思っているんです。

 ――「運勢も風邪をひく」、面白い表現ですね。

 いい時ばかりじゃないし、運勢の免疫力が落ちるときもあるだろうし。でも、それって、人生の想定内ですよね。でも人って、悪くなったりすると悪いことにしか目が行かなくなることがある。でも、過去を振り返ってみると、悪いことの後にはちゃんといいこともあったでしょう?って思うんです。だから、うまく行かないときは「これが一生続くわけじゃないんだよ」って言い聞かせたりします。それは多分、必要な時間なんだって。

 私は歌手デビューして、リストラ宣告を受けて、「あれ?こんなはずじゃ……」と思いましたが、バラエティーで必要とされて、名前が知られるようになって、いい結果が出た。その時があったから、今がある。神様がきっと、「そんなに歌が好きならば、いろいろなやり方があるよ」って、様々な世界を見せてくれて、歌を少しでも長続きさせるための、『私ならではの方法』をくださったんだなって思うんです。

 ――やりたいことだけやっていたら、ここまで長く人の記憶に残ったか……。

 残っていない! 絶対ないと思いますね。どの世界でもそうですが、歌手として長年続けていくことは、本当に大変なことだと思います。私の場合はアニソンというジャンルでデビューして、みんなの心の中で色あせないでいられたし、私が活動を続ける中で出会ったアニソン以外の曲も、誰かのお気に入りの曲になっていることもあります。起こることには全部、意味がある。だから、その時には絶対、腐っちゃいけないんだなって思います。

 ――今回、オリコンの記録を更新したことで、勇気をもらった人もいると思います。

 そう言っていただけて、逆にまた私の勇気になります! 今、調子が悪くても、それがすべてじゃない。明日はきっと、いいことがある。10代から50代まで、年代ごとにガンダムの新しいテーマソングを歌わせていただきました。世代も国境も越えて、たくさんの人と繋がることができる永遠の宝物ですし、使命をいただいたと思っています。私は80代になっても、誰かの生きる力につながる、発展途上の現役でいたいですね。

 (聞き手/メディア局編集部・李英宜、撮影/編集局写真部・萩本朋子)

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プロフィル
森口 博子 (もりぐち・ひろこ)
 1968年、福岡県生まれ。17歳でアニメ「機動戦士Ζガンダム」の主題歌「水の星へ愛をこめて」でデビュー。91年から紅白歌合戦に6年連続出場。バラエティー番組や舞台・ラジオなどでも幅広く活躍する。今年8月には「ガンダム」シリーズの曲の中から、人気ベスト10に選ばれた曲をカバーしたアルバム「GUNDAM SONG COVERS」をリリースした。

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