はかどらない実家の片づけ…親をその気にさせるコトバ
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老親が住む実家に帰るたびに、長年にわたって親がため込んだ家財が気になるという人は少なくないようです。タンスのこやしになった大量の着物、棚の奥にしまったままの食器、ダンボールに入れっぱなしの洋服、玄関にあふれた靴……。処分しようと提案すれば、「もったいない」「ゴミじゃない」「まだ使える」などと抵抗され、しつこくとがめれば、「放っておいて」「自分でやる」などと態度を硬化させる親もいます。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、「実家の片づけ、アドバイスください」という投稿がありました。実家の片づけをはかどらせるには、どうしたらいいのでしょうか。
「10年かかっても終わらない」
投稿したトピ主の「うーん」さんの実家は、70歳代の両親が暮らす一軒屋。荷物ばかり置いてある部屋が三つと、ほかにも物置、屋根裏収納があります。にもかかわらず、廊下や階段にまで棚や段ボール箱が積み上げられ、人がすれ違うこともできない状態。両親には、少しずつ片づけてもらいたいと思っているのですが、まったくやる気にならないそうです。「ゆっくりと片づけていたら、10年かかっても終わらないと思う」と嘆く「うーん」さん。「実家の片づけに成功した方、成功の秘訣を教えてください」とアドバイスを求めました。

この投稿に、60件を超える反響が寄せられ、同じような悩みを抱える子ども世代からの意見が目立ちました。
実際に義実家の片づけをしたという「たまに」さんは、自らの経験を振り返ります。「まあ、ともかく、ものものものものもの、よくまあこれだけのものがあるものだと思いました。一軒家は危険ですね。収納があればある分(ものが)増えるだけ。食器や漆器などのもらいものが山ほど、衣類はわざわざタンスを購入してしまっていました」。収納から出すと、空間が埋め尽くされ、舞い上がったホコリやカビで、体調を崩したこともあるそうです。
両親の死後、実家を売却するために片づけをしたという「ねこじゃらし」さんは当初、自分で片づけられると高をくくっていました。ところが、想像以上にものが多く、結局、廃棄業者にお願いしたそうです。自らの経験をもとに、「廃棄処分業者でなくても、引き取りしてくれる業者などを利用してみるのも手だと思いますよ」と助言します。
「これいる?」じゃなく「これ管理できる?」

モノにあふれた実家で危険を感じたという例もありました。「さぼりんまま」さんは、離れて暮らす母親が家で転倒し、顔にけがを負ったのをきっかけに、片づける決心をしました。昔から掃除嫌いの母親が暮らす家の中は「獣道状態」。ホコリはたまり、虫もわき、臭いもひどかったそうです。「いつか使う」「もったいない」などと言って捨てるのをためらう母に、「これいる?」とは聞かずに「これ管理できる?」と聞くように工夫したそうです。そして、あちこち手をつけるのではなく、まずは玄関、次に廊下というふうに、決めた場所を集中してキレイにしていきました。片づけの成果が見えることで、「本人も気にしてくれるようになり、加速度的に片づいていきます」と「さぼりんまま」さんはアドバイスしています。
親をその気にさせる五つの声かけ

一般社団法人「実家片づけ整理協会」(東京)の代表理事・渡部亜矢さんは「親世代が実家の片づけを先延ばししてしまうと、子ども世代だけでなく、孫やおばなど親戚にも迷惑をかけることになります。実家の片づけが原因で家族や親族の間でいさかいを招きかねません」と指摘します。
親が自ら片づければ、ゴミの回収日などに合わせて、お金をかけずに少しずつ処分できるのに、業者に頼むと、費用は100万円以上かかってしまうケースも珍しくありません。親が亡くなった後なら、それらは子どもや孫へのツケとなってしまいます。子ども世代としては、遺品整理にお金と手間をかけるより、親がいつまでも元気に暮らしてもらうために片づけに取り組んでほしいものなのです。
渡部さんは、生前整理に乗り気ではない親世代をその気にさせる、子ども世代の「声のかけ方」を五つの親のタイプ別に提案します。
【1】「すべてが人生の思い出」タイプ
高齢者にとって、モノはすべて自分の人生の証です。モノを捨てることは自分の過去や歴史を捨てられるようでつらいのです。こうした親の心情に理解を示し、整理整頓を促してみましょう。
声のかけ方:「一番大切なものを、せっかくだから飾っておこう」
【2】「もったいない」タイプ
捨てるという発想を持ち合わせていないばかりか、捨てることが悪だと感じています。「だれか欲しい人がいるかもしれない」「○○ちゃんが結婚したらもたせてあげる」などと、捨てない理由を探します。モノの使い方を考える前に、しまう方法を考える傾向もあります。
声のかけ方:「寄付したら喜んでもらえるかもしれないね」
【3】「愛着で片づかない」タイプ
片づけられない高齢者の中には、自分の持っているモノが実際よりも価値があると考えているケースも少なくありません。着物、宝飾品、陶磁器などで価値の高いモノはほんの一部に過ぎません。にもかかわらず、愛着(執着)が強すぎるあまり、ため込んでしまっているのです。
声のかけ方:「捨てるわけじゃないから、一時保管箱に分けておこう」
【4】「いつか使うかも」タイプ
「何かの役に立ちそう」「高かったから」「ブランドものなのよ」……。このように、使っていないにもかかわらず、モノに実際以上の価値を与えたり、使える理由を探したりします。そして、いなくなった子どもたちの空き部屋が保管庫に。
声のかけ方:「せっかくだから、私がネットオークションに出してみようか」
【5】「今のままでいいわ」タイプ
なるべく今の状態を変えたくないと考える高齢者もいます。「自分は若いからまだまだ平気」「病院の世話になったことがないから大丈夫」「家の中で転倒なんてするはずがない」というふうに、気力や体力が衰え、身の回りの片づけができなくなるなんて考えていません。やる気になればいつだってできると思い込んでいます。
声のかけ方:「四十肩が良くなったから、片づけを手伝えるよ(子どもだっていい歳なんだよ)」
渡部さんによると、親戚や客が訪ねてこなくなるようになると、整理が滞る傾向も見られるそうです。この時期であればクーラーのクリーニングを業者に頼んだり、リフォームの見積もりを依頼したりするだけでも、片づけを始めるきっかけに。玄関や洗面所など消耗品の多い場所から手をつけると、モノを捨てる抵抗がなく、片づけの達成感を得られやすいそうです。
【紹介したトピ】
実家の片づけ、アドバイス下さい
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