(3)若者向けの「顔つき」作れ…博報堂「若者研」リーダー・原田曜平さん

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 若者研究が専門の原田さんに、若者と発言小町の今後についてうかがいました。

 ――発言小町をごらんになって、どういう印象をお持ちですか。

 原田曜平さん)面白いポジションだと思います。インターネットを使ったコミュニケーションの時代になって、ここ数年でニーズが細分化され、いろいろなソーシャルメディアが台頭してきました。その中で、発言小町は、「2ちゃんねるはやっぱりちょっと怖いけど、匿名で自分の話を身近じゃない人たちに言いたい」というニーズを満たす独自のポジションをうまく得ていると思います。

 ――ニーズが細分化されているというのは。

 原田)例えば、ツイッターは1~2年前に全盛期でしたが、炎上が怖くて、「若者研」の学生たちも警戒して、ツイートを非公開にするようになってきているんです。人間は本来、毒づきたいものなのに、そうなるともうツイッターは有名人のツイートをチェックするだけの使い方になってしまいます。そうしたら、通信アプリの「LINE」が普及してきて、密室コミュニケーションが盛んになった。一方で、写真については、画像共有サービス「インスタグラム」がニーズをくみ取り、世界的にもツイッターを抜いたと報じられています。そういう細分化されたニーズの中で、発言小町は、読売新聞というお墨付きがあって、本当にひどい発言は掲載されないという安心感と、でもちょっとシュールな話もしてみたいという欲求を満たしていますよね。

 ――昨年、大手小町は月間アクセスが2億ページビューを超えました。ソーシャルメディアとしては「老舗」の掲示板へのニーズが依然として高いことに、ちょっと意外な気もしています。

 原田)そうですか? むしろどんどんタイミングがあってきている気がしますけどね。LINEが普及して初めて、中高生のスマホユーザーの9割が使うという状況になり、都市部の人だけでなく、どこに住んでいても、どういうコミュニティーの人たちでも使うものができて、ようやくある程度のネットリテラシーができてきたんです。そうすると、いろいろなニーズを満たす場が必要になってきている。むしろ発言小町を作った16年前が早すぎた。今の方が、タイミング的にはあってきているのではないでしょうか。

 ――発言小町が出来たころは、自由にネットに接続できる環境がある人は限られていました。だれもがSNSを使えるようになってきた中でも、チャンネルの1つとして必要とされるものであり続けたいです。

 原田)ニーズはあります。ただ、若い人たちにマスメディア離れが起こっているのも事実なので、「読売新聞」がついているがゆえに心理的距離が遠く感じる時代がくる可能性もなくはありません。一方、新聞社が運営していることがプラスに働くかもしれない。自分はあまり接してはいないけど、すごくしっかりした場なんだ、じゃあここに相談してみようとか。ちゃんと若者の特性を理解した上で、「顔つき」を考えたほうがいいのではないかなという気がします。

拡散リスク懸念 実名SNSでは本音は話せない

 ――LINEでの若者のやり取りは、センテンスが短く、コミュニケーションが軽妙ですが、当たり障りがないというか、やり取りのみで「主張」はしていないという印象があります。主張したいという欲求はどこで解消しているんでしょうか。発言小町では割とみな言いたいことをしっかり書き込んで投稿しているので、その違いに興味があります。

 原田)「主張したい」欲求は解消できていないのでは。若者のコミュニケーションは、すごくアメリカ人的になっているんですよね。といっても、僕の勝手なイメージの「パーティーにおけるアメリカ人」。みんなすごく社交的で、相手のいいところを褒め合うあの感じなんですよ。ソーシャルメディアでつながる人間の数が増えて、ひとりひとりに割く時間が減っているので、結果的に「パーティー化」しているのだと思います。お互いに悩みを共有するとか、相手のダメなところを語り合うとか、深く交流するシーンはすごく減ってきています。若いうちは将来への不安もあるし、本当は真面目に考えたいというニーズもあるし、場が欲しいのだと思います。でもそれを解消する場が今はすごく少ないんですよ。

 ――私の場合は、人生について相談したり、怒られたりしたのは親友でした。

 原田)今は親もいい相談相手なんですよ。例えば娘が彼氏の話をしてきても、自分も自由恋愛をしてきた経験があるので、「私も昔、若いころね」という話もできる。今の親は優しいので、昔の親のように過剰に怒ったりしないんです。自由恋愛がお見合い結婚を初めて超えたのは団塊世代だといわれますが、その大半は職場の先輩からの紹介など「疑似お見合い」みたいなものだったそうです。その下の世代、新人類ぐらいから、日本は自由恋愛が始まったと言われていて、今の時代は、若者が親と初めて自由恋愛から結婚についての悩みを共有できる時代になってきたといえます。また、恋愛に限らず理解度の高い親が増えていますので、親にも相談しやすくなっているんです。

 ――親に恋愛相談ですか……。

 原田)もう一つ大きな要因は、若者たちがソーシャルメディアでつながりすぎてしまっているがゆえに、情報がすぐに回ってしまうこと。僕はよく「ソーシャル村社会」と言うんですが、初めて会う人のことをネットで調べて、「こういう人らしいよ」という話をするんです。「あの人、めちゃくちゃ男遊びがすごいらしいよ」という感じで周囲に話してしまう。

 ――いちいち調べるんですか。

 原田)調べるんです。だってフェイスブックで名前を入れたら、だれだれの知り合いとかで共通の友達が出てくるじゃないですか。その共通の友達に聞くとか、フェイスブックやツイッターをくまなく見て、男性の写真がいっぱい写っていたりすると……。

 ――自分の人生にだれかが簡単にアクセスして、勝手に判断していくのは怖いですね。

 原田)そういう状況になっているので、大変です。友達に情報を漏らすと、どこかに伝わってしまうリスクがあまりにも大きいので、とりわけ恋愛のような深いテーマは友達には相談できない。結果、僕のような他人に相談したりする。

 ――安心なんですね。拡散しないから。

 原田)そうなんです。もちろんいいアドバイスをくれる、というのもあるかもしれませんが、拡散リスクが少ないという点もかなり大きいと思いますよ。その点でいえば、親のほうがもっと安全です。友達とつながっていないので、親に「彼とセックスしちゃったんだけど、その後連絡が取れない」と相談したほうが、拡散される心配がないですから。

 ――そういう時代なんですね……。発言小町も匿名サイトならではの厳しい意見がくることもありますが、バーチャルなつながりなので、嫌ならやり取りをやめることもできます。リアルな世界でもつながっていると、それができないからつらいですね。

 原田)やっぱりリアルの世界のほうが怖いし面倒くさいですよ。知らない人や、すぐに縁が切れる人と深い話をしたり、リアルな話をしたりするほうが、「逃げられる」からリスクが少ない。そういうニーズはあります。前、同じような話を若者研で議論していて、こういう図を書いた学生がいました。

 ――SNSの分布図ですね。

 原田)ここまできれいに分けられない部分もありますが、おおまかにいうとこういう感じです。

 「知っている人と深い話をする」のが例えばLINE。「知っている人と浅い話をする」のがフェイスブック。ツイッターも実は知っている人とつながっているケースが日本は多いですが、知らない人にフォローされることが多いので、「知らない人と浅い話をする」に分類する。そうすると、「知らない人と深い話をする」部分で、若者にぴったりくる主要ソーシャルメディアが今ないんですよ。学生たちは、あまり発言小町に触れたことがないので、「ここのポジションがない」という話になっていましたが、ここに発言小町が入るんじゃないですか。女性版が発言小町だとすると、男性版が2ちゃんねるなのかもしれません。ここは重要なポジションなので、実はおいしいポジションにいるのではないでしょうか。

 ――この分け方はおもしろいですね。このポジションを担うことができるよう、さらに楽しく、役立つ場になるようがんばっていきたいと思います。ありがとうございました。

 (取材、写真 津秦幸江)

 大手小町15周年企画として、1年間連載してきた「私の『発言』」は今回で終了です。(2015年3月25日掲載)

プロフィル

 原田曜平(はらだ・ようへい) 1977年東京都出身。慶応大学卒業後、(株)博報堂入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、現在、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。多摩大学非常勤講師。2003年JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。専門は若者研究で、日本およびアジア各国で若者へのマーケティングや若者向け商品開発を行っている。著書に「さとり世代」「ヤンキー経済」「女子力男子」など。

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507899 0 15周年 2015/03/25 15:00:00 2015/03/25 15:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2017/05/20170516-OYT8I50032-T.jpg?type=thumbnail

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