(3)イクメンは理想の男なのか…男性学者・田中俊之さん

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「もう『男は黙って…』という時代ではありません。男性だってみえを張らず、弱音を吐いたり、相談したりしていけるといいなあと思います」
「もう『男は黙って…』という時代ではありません。男性だってみえを張らず、弱音を吐いたり、相談したりしていけるといいなあと思います」

 ――男性の「生きづらさ」って、時代とともに変わっているのでしょうか?

 田中俊之さん)変わっていると思います。長く男性は「稼ぎ手」であることを求められてきたので、ワンパターンの生き方しか認められませんでした。「フルタイムで40年間働く」という以外の選択肢がなく、多様性は限りなくゼロに近い。そういう時代には、男の子は将来の夢を聞かれたら「プロ野球選手」とか「宇宙飛行士」とか大きなことを言わなければならないし、会社に勤めたら、その中で生き残り、勝ち上がっていかねばなりません。

男性への要求水準を上げたのは誰?

 ――出世競争から「やーめた」と言えず、なかなか弱音を吐けないつらさということですね。でも逆に言えば、「稼いでいればそれでOK!」なら、ある意味ラクなのではとも思います。

 田中)そうですね。「亭主元気で留守がいい」の時代、1980年代半ばくらいなら、確かに「働いていれば許される」というところもあったかもしれません。「稼ぐ」という責任さえ果たしていれば文句も言われなかったでしょう。

 それが最近では、稼いだうえに家事も育児も求められるようになってきました。こんなに男性への要求水準を上げたのは、某アイドルグループのテレビ番組ではないかと分析しています。格好いいアイドルが料理を作って、しかもコントまでやってしまう……家事もできて、しかも面白い。そんなマルチな能力、なかなか兼ね備えていませんよねえ。

田中俊之さん(武蔵大学江古田キャンパスで)
田中俊之さん(武蔵大学江古田キャンパスで)

 ――確かに。「イクメン」が流行語になって、若いお父さんたちに取材させてもらうと家事、育児への意識が高まっているのは感じます。発言小町でも、今年は「大変なのは妻だけじゃない」とか、「『ブラック妻』の増加について」とか、男性が不満を訴える投稿もありました。

 田中)そうですね。「もっと家事や育児を分担したい」「男もやるのが当たり前」と考える男性は、特に若い世代で増えていると思います。日本で男性の家事時間、育児時間が伸びないのは、一つには「男性の意識の問題」があったので、そこはかなり変わっていくのではないでしょうか。

 ただ、「イクメン」については気になっていることもあって、最近は「会社でフルタイムで働き、さらに育児にも協力的な男性」というイメージになりつつあるように感じるんです。日本の男性は週50時間以上働いている人の割合が約4割です。こうした長時間労働を見直さないままに、男性も家事や育児をしてくださいというのは無理がある。男性の意識を変えるだけではどうしようもなくて、家事時間、育児時間を増やすには社会構造から変えていかなければなりません。

あなたの中にも「性別役割」意識がありませんか?

 ――でも、もともと共働きの女性は「仕事も家事も」ですし、子どもが生まれたらさらに「子育ても」という状態です。

 田中)そうなんです。「男性が仕事、女性が家事」という性別役割の意識は、男性にも女性にも深く刷り込まれています。一部のまじめでバリバリ働ける優秀な女性は、家事も育児も、頑張ればこなせてしまったのかもしれません。しかし、大多数の働く母親たちは、家事・育児も完璧にこなさなければというプレッシャーに押しつぶされそうになっているのではないでしょうか。

 「男は仕事」という側面については、今の女子学生もそうした意識はそれほど変わっていないようで、「出世欲のない男性についてどう思うか」と尋ねると、「評価しない」という回答が多数派なんです。男性には、やはり<男らしい働き方>や向上心を求めているんですね。

 ――お互いに求めすぎて、共倒れしそうですね。

 田中)本当にキツイですよね。「自分のほうが大変」などと言い合って“どっちが大変か競争”をしたり、我慢比べ大会みたいになったりしては、長続きしないと思います。「稼ぐだけではなく家事も育児も求めるブラック妻」「稼ぎが足りず、妻に働かせるブラック夫」……そう責め合って終わり。

 ――そうならないためにはどうしたら?

 田中)やはり「多様性」を認めることだと思います。夫より妻の収入が多くたっていい、パートタイムで働くことを選ぶ男性がいたっていい。もちろん専業主婦の家庭だっていいと思います。「大変なのは妻だけじゃない」のトピへの回答で、「たまにはちゃんと腹を割って話さないと(わか)り合えないよ」とありましたが、まさにその通り。夫婦がお互いどう考えているのか、まず分かり合うことからではないでしょうか。

 ――先生の講義を受ける学生さんたちに、ぜひ新しい男性像、女性像をつくっていってもらいたいです。

 田中)最近の就職活動を見ていると、「優しい」「まじめ」「細かいことに気づける」 ――そんな男の子たちはスイスイ内定をもらっているように感じます。これってどれも、“女性的”でしょう。向こう見ずで大ざっぱ、そんな男らしさを今の社会はあまり評価しないのかもしれません。

 また、僕たちのような40歳前後だと、「ダンス」というと女性のものという感じですが、20歳代では男性も「ダンス」への抵抗感がほとんどありません。女向け、男向けという垣根をたやすく越えている感じです。ぜひ、こういうところは若い世代に期待したいですよね。

プロフィル

田中俊之(たなか・としゆき) 1975年生まれ。社会学博士。武蔵大学人文学部を卒業し、現在は同大社会学部助教。著書に「男性学の新展開」(青弓社)、共著に「大学生と語る性」(晃洋書房)などがある。近く「男がつらい(仮題)」をKADOKAWAより出版予定。

(2014年12月23日掲載)

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508552 0 15周年 2014/12/23 15:00:00 2014/12/23 15:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2017/05/20170516-OYT8I50051-T.jpg?type=thumbnail

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