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    スクールデイズ

    剣道で学んだ自律の姿勢…渡部陽一さん

    聞き手・新美舞

    戦場カメラマン

    • 渡部陽一さん(松田賢一撮影)
      渡部陽一さん(松田賢一撮影)

     マイペースで自分が好きなことに徹底的に集中する子どもでした。生まれ育った静岡県富士市の自宅の目の前が駿河湾で、小学校の登校前に魚を釣っては夕食に食べていました。少年時代に釣りのほかに夢中になったのは剣道です。

     剣豪小説が好きだった父に、小学1年生の時、剣道教室に入れられました。父の勤めていた会社が開いていた教室で、先生は20~30歳代の若い社員。容赦なく打ち込まれ、あまりの激しさにいつも泣いていました。でも子ども同士仲が良く、先生も練習後は遊んでくれ、やめたいと思ったことは一度もありません。週3日の稽古で足りず、自宅や公園で素振りなどもしていました。

     稽古の最後に必ず1分くらいの黙想の時間があり、練習を振り返りました。全力で向かわなかった時ほど、先生にこてんぱんにやられていることが分かってきました。中途半端な気持ちは見抜かれていたのだと思います。自分を律して最善を尽くせるように頑張ることを学びました。

     戦場カメラマンとしての原体験は大学1年生の夏休み、狩猟民族に会いにアフリカのザイール(現コンゴ民主共和国)を訪れた時のことです。治安が悪く、少年ゲリラに金品を奪われましたが、現地の人たちは貴重な食料を分けてくれるなど本当に親切でした。そんな人々もゲリラに食料などを強奪されていました。

     日本に戻り、家族や友人に説明してもうまく伝えることができない。それなら写真でと、3か月後に再びザイールへ。撮影するうち、剣道のように熱中している自分に気付きました。紛争地域で苦しむ人々の現状を伝えたいとの思いが強まり、友達に「戦場カメラマンになる」と宣言する絵はがきを送りました。

     剣道で学んだ「自分を律する力」や「相手を尊敬する心」は今も生きています。外国では日本の常識を捨て、何度でもその国の宗教を勉強し直し、現地の文化を敬うようにしています。何かに夢中になるというのは、強くなれるということ。子どもたちには夢中になれるものを見つけ、それにどっぷりつかってほしいと思います。

    プロフィル
    わたなべ・よういち
     1972年生まれ。イラク戦争、ルワンダ内戦など、世界の紛争地域を取材。著書に「戦場カメラマンの仕事術」(光文社)など。NHKEテレ「テレビでアラビア語」に出演中。

    (2018年9月13日付読売新聞朝刊掲載)

    2018年09月17日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun