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[聞いてみました]「対話と共感」で好循環作る…東京大学学長 藤井輝夫さん 

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 4月から東京大学の新しい学長に、理事・副学長として企業などとの連携や財務などを担当してきた藤井輝夫さん(57)が就任しました。他大学への影響力も大きい東大のトップとして、どうかじ取りを進めていくのか、聞いてみました。(岡本裕輔)

 ――任期は6年間、大学運営の展望は。

1964年、東京都出身。理化学研究所研究員などを経て、東大生産技術研究所教授や同所長、社会連携本部長などを歴任。海中を調べるロボットを研究した。専門は応用マイクロ流体システム。
1964年、東京都出身。理化学研究所研究員などを経て、東大生産技術研究所教授や同所長、社会連携本部長などを歴任。海中を調べるロボットを研究した。専門は応用マイクロ流体システム。

 「国からの運営費交付金が増えないなかで、『対話と共感』によるサイクルで自律した経営を進めていく。大学の持つ知や研究内容などの多くは無形の知的資産であり、経済界や自治体などと対話し、その意義や成果、価値を伝える。共感を得て支援を集め、次の研究や人材の育成につなげていきたい。多様な人材が集まる学内でも対話を進め、優秀な学生や教職員が来たくなるような魅力的な大学にしたい」

 ――企業との連携を進めるメリットや狙いは。

 「昨年ソフトバンクと始めた人工知能(AI)の共同研究では、10年間で200億円規模の資金を企業に拠出してもらい、医療などの分野で事業化を目指している。新たな技術が生まれれば社会貢献や研究力向上につながるだけでなく、大学にも収益が還元される」

 ――新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が発令されたが、授業のあり方は。

 「現在はオンライン授業が中心だが、実験や実技など対面でないと実施が難しい授業もあり、対面授業も一部で行っている。教室や食堂の混雑状況などが分かる大学独自のアプリも開発した。特に1年生は学生間のつながりを作るため、週2回ほど登校している。宣言によって授業の割合を大きく変えることは現時点では考えていない」

 ――教育面で充実させたい部分は。

 「学生にとって重要なのは、大学での学びを実際の社会課題とつなげ、キャンパス内だけではできない経験を積むこと。大学が世界各地の企業や自治体などと連携していくことで、学生のグローバルな就業体験も可能になる」

 ――8人の理事の過半数が女性となり、今春の学部入学者のうち、女性比率は過去最高(21・2%)となった。

 「理事は女性を理由に決めたわけでなく、適任だと思う人材を登用した結果、そうなった。性別だけではなく、多様な人材が入ることで、物事を決める際に共感性の高い発想や判断ができるようになるのではないか」

 「(女子の割合は)国際的には『どうして2割しかいないの』と見られる。多様な意見を交わし、考え方や学問をより高めていくには女子学生はもっと増えてしかるべきだ」

 ――英国の教育専門誌が昨年発表した「世界大学ランキング」で東大は36位。アジア最上位は中国・清華大(20位)だった。

 「本学の国際的な評判は高い位置にあると認識しているが、さらに押し上げる必要がある。4月から、顕著な業績を持つ海外の教員らが、オンラインで学生に最先端の授業や研究指導などを行う『グローバルフェロー』制度を始めた。コロナ収束後も見据え、今のうちから国際的な交流や研究機関との組織的なつながりを強化し、世界の中で後退しないようにしなければいけない」

学生や卒業生の起業支援

 東大は、大学で生まれた技術や研究成果、学業を生かして学生や卒業生が起業するなどした大学関連ベンチャー(新興企業)へのスタートアップ支援にも力を入れる。投資した企業が上場すれば、株式の売却などで大きなリターンが得られる。

 東大は世界でも活躍できる起業家教育を行うとともに、成長が見込める企業へ投資を行うベンチャーキャピタルと連携するなどしている。これまでに約400社が起業し、上位5社の時価総額は約1.4兆円に上ると試算している。

コロナ禍の学びの姿は

 藤井学長が掲げる「対話と共感」。対話の相手は企業だけではない。コロナ禍でキャンパスライフの制限が続く学生の声を聞き、展望を語りかけていくことも重要だ。多様な学生から共感を得ることも含め、他大学のモデルになる運営を実践するリーダー像を期待したい。(岡)

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2041932 1 教育 2021/05/11 05:00:00 2021/05/12 11:51:15 藤井輝夫・東京大学新学長インタビュー(26日、東京都文京区・東京大学で)=園田寛志郎撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210510-OYT8I50119-T.jpg?type=thumbnail

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