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[最前線]家で動画予習 学校で応用…「反転授業」 学習の遅れ挽回

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 学校で教わり、家庭で復習するという従来の学習スタイルを逆転させた「反転授業」を小中学校に導入する動きが出てきた。家庭で予習を済ませ、学校の授業では主に復習や応用問題に取り組む方式だ。コロナ禍による長期休校で生じた学習の遅れを挽回する上で、効果的な手法として注目を集めている。(新美舞)

 ■授業でAL

 反転授業は、児童生徒が自宅でパソコンなどを使い、動画教材を見て予習する。学校の授業では、予習でわからなかった部分を教員に尋ねたり、討論や発表などのアクティブ・ラーニング(AL)を行ったりする時間を確保しやすいという。

 コロナ禍による緊急事態宣言の解除後の6月、茨城県笠間市は市立小中学校など16校で導入した。動画教材は、県教委が作成したものと各校が作成したものを学校間で共有し、その中から選ぶ。

 「この数字は何て読むかな」。7月14日、市立宍戸小4年2組の算数の授業で山田敏晴教諭(37)が黒板に13桁の数字を書いた。

 「億」「兆」といった大きな数がテーマだ。授業は子供たちが動画教材を使った予習でどの程度理解しているか、確認することから始まった。その後、3人1組になり、配られた数字のカードを使って「ゼロを6個含む16桁の数を作り、読み上げる」といった課題に挑戦した。

 飛沫ひまつ防止策をとった上で、45分授業の20分近くをグループ活動に使い、その間、山田教諭は理解が不十分な児童の個別指導にもあたった。

 前田悠貴君(9)は「みんなで意見を言いながら考える時間は勉強というよりゲームみたい」と楽しそうだ。「理解が不十分な児童には補足のプリントを渡すなど試行錯誤している」と山田教諭は話す。

 宍戸小は、体育や家庭科などにも反転授業を取り入れた。例えば、体育は、子供たちが家庭で様々な運動の説明動画を見ることで授業では実技に多くの時間を使える。

 ■教員の負担も

 反転授業は、佐賀県武雄市が2014~15年度に市立小中全校に導入したことなどで知られるようになった。

 武雄市は、小学校では3年生以上の算数、4年生以上の理科などで取り入れ、授業ではALを積極的に行う。

 小学6年生を対象にした15年の調査では、「自分の考えや意見を発表することが得意になった」と回答した児童は、反転授業の実施率が低い3校では53%だったのに対し、実施率が高い3校は65%に上った。現在、予習では過去の学習記録をもとに学力に合った内容を学べるオンライン教材を使っている。

 今回のコロナ禍では、小中高校などの休校が最長3か月に及び、学習の遅れへの対応が課題になった。その対策として笠間市のほかにも、反転授業の導入を検討する自治体が出てきた。

 大阪府泉大津市は休校期間中、市立の小中全11校で家庭学習用に民間のオンライン教材を使った。学校再開後も利用を続けており、家庭での予習状況や授業への効果を検証した上で、早ければ来年度にも反転授業を導入する。

 だが、課題もある。

 教員らが動画教材を作成する場合、負担が大きい。インターネット環境が整っていない家庭もあり、動画教材をDVDに収録して渡すといった配慮が必要だ。反転授業は家庭での予習が前提で、予習をしていない子供は授業についていくのが難しいこともある。

 宮城県内の小学校で反転授業に携わった稲垣忠・東北学院大教授(教育工学)は「休校中に子供の学力差は広がっていて、個別指導の時間を確保できる反転授業は有効な対応策になる。動画教材で全て教えるのではなく、授業で考える楽しみを引き出すなど適切な組み合わせを見極めてほしい」と話す。

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1361722 1 その他連載 2020/07/24 05:00:00 2020/07/24 16:12:31 2020/07/24 16:12:31 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200723-OYT8I50040-T.jpg?type=thumbnail

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