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大学入試シーズンの幕開けとなる、総合型選抜(旧AO入試)の出願受け付けが今月15日から始まった。今年は新型コロナウイルスの感染防止を目的に、オンラインで面接や試験を行う大学が目立っている。ただ、大学側の説明不足もあり、受験生から不安の声も聞かれる。
(伊藤史彦、岡本裕輔)
■画面上で表現
「うなずき方や手の挙げ方など、画面の中の自分をしっかり確認しましょう」
16日夕、東京・池袋の受験予備校「早稲田塾」。パソコン画面を通じて、講師が生徒に語りかけた。同塾では、志望動機の書き方や面接対策など、総合型選抜で求められる力を指導している。中川敏和・執行役員は「感染状況次第で、オンライン面接に切り替える大学が増える可能性もある。様々な状況に対応できる準備が大切だ」と語る。
受験生は、オンライン面接を高校で受けるケースが多いとみられている。ある神奈川県立高校では今月、ウェブ会議システムへの接続方法や通信トラブル時の対応などを校内研修で学ぶ予定だ。校長は「教員がシステムに精通しないと、生徒の不安を解消できない」と焦りをのぞかせた。
■大学の対応迷走
生徒の不安の背景には、オンライン面接中の通信トラブルを巡り、一部の大学が示した方針がある。
実践女子大(東京)や武蔵野大(同)は「通信不良の場合、試験が成立しない可能性があることを了承する」との書面の提出を受験生に求めていた。実践女子大はその後、機器や通信環境を準備できない場合、大学が用意することを明記。武蔵野大は「受験生の責任ではないトラブルなら、個別に対応を検討する」としている。同大を受ける都内の私立高3年の女子生徒(18)は「自分の試験中にトラブルが起きたら、と思うと不安」と漏らした。
文部科学省は今月9日、全国の大学に受験生が不利にならないよう求める通知を出した。信州大(長野)繊維学部は「機器や回線の不良で試験続行不可能と判断した場合、面接を打ち切る場合がある」と注意事項に記載していたが、10日に学部長名で「言葉足らずな表現があり、不安と不信感を与えた」との文章をホームページに掲載した。
■不正防止は?
オンラインの試験では、公正さの確保も課題となる。
学習院大(東京)国際社会科学部では、試験当日に大学のサイトから課題と解答用紙をダウンロードし、英文で論述した解答をメールで送ってもらう。担当者は「感染予防と受験機会の確保を最優先に考えた」と答えた。
一方、昭和女子大(同)で入試を担当する藤島
大学入試に詳しいリクルート進学総研の小林浩所長は「感染拡大で短期間での検討を強いられたとはいえ、大学側からの情報不足が、高校側に不安を与えている。大学はどのような学生を求め、そのためにオンラインでどう選考をし、不測の事態にどう備えるのかなど、受験生の疑問に丁寧に答えるべきだ」と指摘した。
志望理由 動画提出も
総合型選抜では、受験生に動画の提出を求める大学もある。
慶応大総合政策、環境情報両学部(神奈川)は3分間の「プレゼンテーションビデオ」の提出を課す。志望理由や入学後の学習計画、将来の目標などを話してもらい、編集や創意工夫も認めるという。動画の提出は、主に留学生向けの入試で10年近く行っているが、審査基準は公表していない。
国立音楽大(東京)はピアノなど楽器演奏の実技は試験会場で演奏するか、演奏動画を提出するかを受験生が選ぶ。日本体育大(同)スポーツ文化学部武道教育学科では、相撲や剣道、柔道などの試技の動画を提出してもらう。例えば柔道なら座礼と立ち礼、受け身などを側面から撮影した5分以内の動画で、同大は「柔道などを経験しているのか確認するのが目的で、評価には直接関係しない」としている。