コロナ下でも、つながりを途切れさせない…勉強も会話もできる[中高生の居場所〈5〉]

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 中学高校生に放課後の「居場所」を提供する活動は、新型コロナウイルスの感染拡大に大きな影響を受けている。利用人数や食事の提供を制限せざるを得ないからだ。東京都足立区が困窮家庭の生徒らを対象に実施する「居場所を兼ねた学習支援事業」は、タブレット端末を活用しながら、支援の継続に工夫を凝らす。(編集委員・古沢由紀子、写真・鈴木竜三)

放課後支援 求められるもの…専門家に聞く[中高生の居場所〈7〉]

タブレット端末、早急に確保

オンラインと併用して対面授業を行っている(6月)=写真はいずれも東京都足立区で
オンラインと併用して対面授業を行っている(6月)=写真はいずれも東京都足立区で

 「英語の宿題で分からないところを教えて」。5月上旬の午後5時過ぎ、区内のビルの一室にパソコンがずらりと並び、画面には自宅で勉強する生徒の姿が映し出されていた。部屋や顔を見られるのが恥ずかしいのか、天井を映したままの生徒もいる。

 ボランティアの大学生に英語や数学の個別指導を受けたり、グループで会話をしたり。時にはオンラインの「食事会」で交流を楽しむこともある。ビデオ会議のシステムを使い、ネット上の「受付」でスタッフが迎える仕組みだ。

 コロナの感染拡大を受け、支援のあり方は大きく変わった。昨年2月末に一斉休校が発表されたのを受け、区から居場所の運営を委託されているNPO法人「カタリバ」のスタッフらは、生徒に貸与するタブレット端末や通信機器の確保に奔走した。区内4か所の施設のうち、担当する2か所の利用登録者に連絡し、まず希望者約100人に端末を配布。短時間で使い方も説明した。

 「休校期間中も学習を支援し、生徒たちを孤立させない。何とかつながりを保ち、学びに向かう姿勢を止めたくないと必死だった」と北部の施設で責任者を務める佐渡加奈子さん(37)は振り返る。

冷凍したパンを配布する学生スタッフ(6月)
冷凍したパンを配布する学生スタッフ(6月)

 幸い生徒たちは端末を使いこなし、双方向のオンラインで学習指導を実施できた。「朝の会」や「おやすみ」のあいさつも行い、生活リズムの維持を心がけた。

 その一方で画面上の交流には限界があり、雑談などに積極的に参加する生徒は一部だ。対面でないと生徒の様子を把握しきれない懸念もあり、昨年夏以降はタブレット端末と対面の学習支援を併用している。現在は火~土曜の午後8時、日曜は午後7時まで、来所者数を制限しながら開設する。以前はボードゲームや卓球などを楽しんでいたが、感染防止のため休止した。

 「本来は勉強の合間のさりげない会話が大切で、学習意欲が持てない子には生徒同士の横のつながりも効果的だ。オンラインではこうした交流が難しく、きっかけ作りに試行錯誤している」と佐渡さんは話す。

キッチンでの調理は休止

 コロナの感染拡大前、居場所ではボランティアの人たちがキッチンで調理するのを生徒たちが手伝い、皆で大きなテーブルを囲んで夕食を取っていた。

 利用者の家庭の多くは学用品や給食費などの就学援助の対象で、経済状況が厳しい。ひとり親世帯は約6割に上る。普段はカップ麺などで夕食を済ませる生徒もおり、食事作りの過程に接するのも貴重な機会だという。

 感染防止のため、現在は希望者に弁当を無料で配布。施設内で食べる場合は、アクリル板で仕切られた机での「黙食」がルールだ。学生スタッフらの発案で、近隣のベーカリーに余ったパンを提供してもらい、冷凍して配る取り組みも始めた。

「一人は寂しい また皆で夕食を…」

感染予防のため、用意された弁当を別々に食べる。施設内での調理は休止中だ(5月)
感染予防のため、用意された弁当を別々に食べる。施設内での調理は休止中だ(5月)

 東京都に4回目の緊急事態宣言が発令される中、「居場所」を利用する生徒たちは、元のような活動の再開を心待ちにしている。

 区内中心部の施設に冷凍の弁当を受け取りに来た都立高校2年生の滋君(16)(仮名)も、その一人。以前はほぼ毎日、現在も週3~4回は訪れる常連だ。

 父子家庭に育ち、自宅では夜も一人で過ごすことが多かった。「中学校ではぽつんとしていることが多く、休みがちだった。『このままでは高校に行けない』と心配した父に勧められて、中2の時から通うようになった」と説明する。居場所に通うようになってからはスタッフと打ち解け、他校の友人もできた。高校では文化部に入ったが、感染防止のため活動休止が続いた。

 4月下旬からの緊急事態宣言を受けて都立高校は分散登校を実施し、大型連休期間は「自宅学習」が中心になった。文部科学省が「1人1台」の学習端末配備を進める小中学校と異なり、高校の対応は地域によりまちまちだ。進学校以外はデジタル化対応が遅れる傾向があり、公立校間でも格差が生じている。

 滋君は「家で一人過ごすのは寂しい。また皆で夕食を取り、ボードゲームができるようになればいい」とかみしめるように語る。

 親と自宅で過ごす時間が増えたことを負担に感じる生徒もいるようだ。別の高校2年の男子生徒(16)は「これから家に帰り、親やきょうだいの夕食を自分が作らなければならない」と疲れた表情で話した。

 親の再婚などで家族関係が複雑な家庭もあり、「成績のことなどで子どもにきつい言葉をかけるケースをよく聞くようになった」と、居場所のスタッフで公認心理師でもある渡辺雄大さん(33)は心配する。

 コロナの影響が長引き、夏休みなどに行き場を失う生徒が増えることが懸念されている。つながりを維持する居場所の存在と機動力が、一層求められる。

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2248096 0 ニュース 2021/07/31 06:00:00 2022/01/12 14:10:54 2022/01/12 14:10:54 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210727-OYT1I50101-T.jpg?type=thumbnail

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