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反復学習の「陰山メソッド」で知られ、2016年から福岡県田川市の学力向上アドバイザーとして市教育委員会への助言や教員の指導に取り組んでいる陰山英男・陰山ラボ代表(63)が、読売新聞のインタビューに応じた。新型コロナウイルス禍での田川市立小中学生の学力向上傾向について「地域を挙げた取り組みの成果」と評価し、さらなる向上への期待感を示した。主な一問一答は次の通り。(興膳邦央)

――コロナ禍の長期休校で全国的に学力の低下が懸念された中、学力向上アドバイザーとして取り組んだことは。
「授業時間が減れば学力も下がるのはごく自然なこと。そのため市教委には『学校再開後は授業を3倍速でやってください』とお願いした。結果が出なければ責任を取る覚悟だった」
――授業再開後、各校は要点をテンポ良く教え、余った時間で反復・発展学習に取り組む陰山さん提唱の「集中速習スタイル」に切り替えた。
「各校が2016年から取り組んでいる百ます計算などの反復学習は成果が出ていた。この基盤を教科全体の論理的思考力につなげるため、授業を『できる子』に合わせて進める高速化が必要だった。市教委の方針を学校現場が着実に実行し、保護者や地域も応援して子どもたちも応えてくれた」
――授業を高速化すると、ついて行けない子どもが出てくるのではないか。
「子どもは、高速化した授業では『分からない』ことを認める決断をしないといけない。分からないから教えてもらえる。『分かったふり』をするより得だと気づく。級友が正解すると、自分も解かないわけにいかなくなる。最終的についてこれない子はいなくなる」
――田川市ではこれまでも学力向上に取り組んできたが、目立った成果を上げられなかった。どこに問題があったのか。
「エビデンス(根拠)がない学習方法を採り入れてきたからではないか。データに基づき、リアルに即して考えることが大切だ」
――同市の子どもたちの将来像をどう見ているか。
「学力を土台にどんな町づくりを進めるのかという議論と関係する。地方のことを東京でほぼ決めている現状では、東京で勝負できる、中央に影響力を及ぼせる人材を育てなければならない。子どもは必ず伸びる。見守る大人は子どもの天井を取っ払ってほしい」
◆田川市立小中学生の学力向上傾向 =田川市教委によると、今年2月に行った東京書籍の「標準学力調査」で、国語、算数・数学、英語(中学のみ)の結果がいずれも小1~中2の全学年で前年を上回り、小学校の算数は全学年で全国平均を超えた。昨年7月に小学2~6年を対象に行った漢字定着テストでも、5学年のうち4学年で正答率が過去最高を更新した。