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東京都教育委員会が今年度、高校を中心とする約200の都立学校で、パソコンを使ってテストを効率的に採点するシステムを導入した。採点にかかる時間を大幅に減らすことで教員の負担軽減を図り、生まれた時間を授業の充実に向けた準備などに充てられるようにする狙いだ。(飯田真優子)
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テストの採点は従来、一人一人の答案用紙に手書きで正答には「○」、誤答には「×」を書き入れ、すべて終わった後に合計点を算出する形で行われてきた。正答と誤答の中間の「△」を付ける場合もあり、その際は採点が終わった生徒の答案用紙をたどって比較することも多く、時間のかかる仕事だった。

パソコン上で行う採点は、〈1〉全員の答案用紙をスキャナーで読み込む〈2〉画面に全員の解答を問題ごとに並べる〈3〉カーソルを合わせて「○」「×」「△」を付ける――という流れで行う。採点を生徒ごとでなく、問題ごとに行うのがポイントだ。「△」を付ける際に解答を見比べることも容易で、合計点の計算も自動化されている。
採点を終えると、「○」「×」が印字された答案用紙がプリントアウトされ、教員は答案用紙の原本とともに生徒に返却する。「○」や「×」は斜めに傾いた形を使うこともでき、システムを開発した大日本印刷(東京)によると、手書きの雰囲気を重視する教員側の要望で取り入れた。
時間外が常態化

「採点時間が大幅に短くなった」。都立向丘高校(文京区)の数学科教諭・石平
多くの学校で1学期最初の中間テストが行われる5月は、残業も多くなりがちだ。文部科学省は毎年4~8月に期間を絞り、教員の時間外労働に関する調査を行っている。昨年の調査では、文科省が上限とする「月45時間」を超えた教員の割合は4月が40%と最も高く、5月も34%に上った。石平教諭も午前8時には出勤し、帰宅は連日午後8時頃と忙しい毎日を送る。
都教委によると、1回の定期テストで教員1人が採点にかける時間は平均16時間。新システムを使えば8時間に半減でき、時間外労働の削減効果が期待できる。
問題ごとに全員の正答率を把握しやすくなるメリットもある。石平教諭は、正答率の高い分野は、その後のテストでさらに難易度を高めた発展的な問題を出すなどして役立てる。