自殺9年連続減…生きる支援、地域連携 SOSの出し方 学校教育で

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NPO法人代表・清水康之さんに聞く

 2018年の全国の自殺者数は2万598人(速報値)で、9年連続で減少したことが、先月の警察庁の発表で分かった。とはいえ、今でも交通事故死者の6倍に上る人が自殺で亡くなっている。今後の課題は何か。日本の自殺対策の推進に大きく関与し、今年で設立15年を迎えるNPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」代表の清水康之さん(46)に聞いた。(編集委員 山口博弥)

対策次々と

 ――全国の自殺者数は1998年に3万人を超え、高止まりが続いていたが、2010年から減り続けている。なぜか。

清水さん=鈴木竜三撮影
清水さん=鈴木竜三撮影

 「近年は失業率の改善も影響していると思うが、自殺対策が進んだことが大きい。まず、06年に自殺対策基本法が施行され、『自殺は個人の問題ではなく、社会の問題』との認識が広がった。09年分から自殺統計が市町村単位で公表され、地域の実態に即した対策が行われるようになった」

 ――財政的な支援は?
 「09年度から、各地域で自殺対策を推進するための予算を国が確保するようになった。16年には自殺対策基本法が改正され、自殺対策は『生きることの包括的な支援』と明記、都道府県と市町村に自殺対策計画の策定を義務づけた。こうして次々と対策を打ち出してきたことが、自殺者数の減少につながった」

 ――現場ではどんな対策が求められるのか。
 「私がライフリンクを設立した04年は、自殺者数が最多になった翌年。そのころの自殺対策は、うつ病対策に過ぎなかった。しかし、自殺の背景には精神保健の問題だけでなく、過労や貧困、育児や介護疲れ、いじめや孤立など様々な社会的要因がある。保健、医療、福祉、教育、労働などあらゆる分野において、国や自治体、民間団体、企業などが連携して対策に取り組むことが必要だ」

 ――具体的には?
 「たとえば、税金を滞納している人の中には、借金を抱えて自殺のリスクが高い人がいる。自治体の税の徴収員に自殺対策の研修を受けてもらえば、その滞納者に相談窓口や支援先の情報を伝えられる。このように、すでにある様々な事業に自殺対策(生きる支援)の視点を入れて実施する自治体が増えてきている」

非常事態 今も

 ――14年には、世界保健機関(WHO)の世界自殺リポートで日本の自殺対策が高く評価された。

自殺者数の年次推移と自殺対策
自殺者数の年次推移と自殺対策

 「日本の対策が世界から注目されているのは確かだ。しかし今でも毎年、交通事故の年間死者数(約3500人)の6倍近い2万人が自殺で亡くなっている。先進国の中で日本の自殺率は飛び抜けて高い。非常事態は今も続いている」

 ――未成年の自殺者数は2年連続で増えている。17年には、神奈川県座間市でSNSに自殺願望を書き込んだ若い男女が殺害された。いじめ自殺も後を絶たない。若者の自殺を減らすには何が必要か。
 「万能薬はない。当面の具体策としては、SNSを活用した相談支援の強化や、『死にたい』と本音を安心して打ち明けられる場づくりが重要だ。また、命の危機に陥った時に誰にどう助けを求めればいいかを教える『SOSの出し方に関する教育』を、学校現場ですべての児童と生徒に行う必要がある。何よりも、若者たちに『生きるに値する』と思ってもらえる社会にしなければならない」

計画の評価へ

 ――今後の課題は。
 「自殺対策には、PLAN(計画)→DO(実行)→CHECK(評価)→ACTION(改善)を繰り返すPDCAサイクルが求められる。今はPからDに移行している段階だが、次のC(評価)もとても重要だ。それを各地方議会が担えるよう、すでに地方議員のネットワークづくりに着手しており、今年秋には発足させたい」

 ――「自殺」の「殺」という言葉を避け、「自死」と言い換えるケースが増えているが、どう考えるか。
 「遺族を『自死遺族』と呼ぶ時を除き、言い換えるのは反対だ。マイルドな言葉で過酷な現実や本質から目をそらすことになりかねないからだ。自殺という言葉は厳しいが、その違和感を抱える覚悟を持ち続け、対策につなげていきたい」

走り続けて15年

 記者が初めて清水さんを取材したのは、ライフリンク設立から4か月後の2005年2月。「いのちを大切にする社会を作りたい」と熱く語っていたが、当時は「3年間だけ」と思っていたという。それがいつの間にか15年。「車に例えると、自分で積んだガソリンはとっくになくなったけど、自殺で亡くなった人や遺族、支援者たちからガソリンをつぎ足されて走ってきた気がする」

 社会が必要とする限り、清水さんはこれからも走り続けるに違いない。(山口)

◎【自殺関連の相談先】
 ◆よりそいホットライン(24時間・年中無休)
 (電)0120・279・338
 http://279338.jp/yorisoi/

 ◆よりそいチャット(LINE相談は月、火、木、金、日 17~22時)
 https://yorisoi‐chat.jp/

 ◆いのちと暮らしの相談ナビ
 http://lifelink‐db.org/

◎NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」
 NHKのディレクターだった清水さんらが2004年に設立した。個別に活動していた自殺対策関連の民間団体や専門家をつなげるシンポジウムを度々開催。自殺対策法制化を求める10万人の署名を集め、基本法の成立を後押しした。09年には清水代表が内閣府参与に就任。12年の自殺総合対策大綱の改定では素案づくりに参画した。その後も国や自治体と連携しながら様々な対策を推し進めている。

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