[命の葛藤]出口なき若者(1)文字が娘奪った

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 全国の自殺者数が減る中で、未成年の自殺だけが昨年、増加した。若者が人生に希望を失い、命を絶ってしまう背景には何があるのだろうか。遺族や自殺未遂者の証言から、若者が現代社会のはざまで追い込まれていく様相を探り、対策を考える。

長時間LINE 友情ひび

「一緒にこの公園をよく散歩したんです」。遺品のスマートフォンを手に、母親は亡き娘を思う=鈴木毅彦撮影
「一緒にこの公園をよく散歩したんです」。遺品のスマートフォンを手に、母親は亡き娘を思う=鈴木毅彦撮影

 〈今、バスの中ですよ~〉。2013年秋の夕刻、西日本の女子大1年だった舞さん(仮名、当時18歳)から母親(56)にメールが届いた。いつもの帰宅連絡だったのに、その1時間後、舞さんは自ら命を絶ち、家に帰ることはなかった。

 あの朝、舞さんは「帰ったら縫い物をするから、ミシンを用意しておいて」と言って家を出た。前日には母親と一緒に買い物に行き、バスの通学用定期券を購入した。ふだん通りの日常のはずだった。

 何があったのか。舞さんのスマートフォンに残っていたLINE(ライン)の記録や、大学の両親への回答文書から、一端が判明している。

 入学後、舞さんは10人ほどの友人グループに入った。一方で、ある同級生から必要以上に頼られるなどして困惑していた。グループの友人たちから「付き合わない方がいい」と助言されたが、気だての優しい舞さんは関係を断つことができず、悩みを深めていた。

 夏休みが明けた日、舞さんは同級生と言い争いになり、涙を流した。グループの仲間は味方をしてくれ、LINEでも〈大丈夫?〉などといたわってくれた。

 3日後も、舞さんはグループの一人とLINEを交わした。〈(同級生と)ちゃんと話をつける〉〈みんなを振り回して申し訳ない〉と繰り返すと、〈見守ってる〉と励ましが返ってきていたが、やり取りが2時間以上続いた後、突然、友人の態度が変わる。

 舞さんが〈明日から一緒にいてね〉と頼むと、〈しんどいし、もう友達やめよう。めんどうくさい〉と突き放された。〈本当にごめんなさい〉と何度も懇願したが、途中で着信を拒否された。

 翌日の授業の合間、舞さんはグループの友人らに「これからも仲良くして」と直接頼み、おそろいのアクセサリーを配った。帰宅を知らせるメールを母親に送信後、バスの中で、前日とは別のメンバーの一人に対し、〈今日は話を聞いてくれてありがと。これからもよろしく〉とLINEで送っている。

 だが返事は冷たかった。〈よろしくしないとだめ? (同級生と)仲良くするのなら必要ない〉

 舞さん〈(同級生とは)絶対関わらない〉

 友人〈友達いないから、こっちに来たんでしょ?〉

 舞さん〈みんなと接したかった〉

 友人〈行動を直せよ〉

 舞さん〈直したら仲良くしてくれますか〉

 友人〈甘いよ。もう嫌〉

 30分間のやり取りの最後に、舞さんは〈はい〉と短い答えを返している。バスを降りて自宅マンションに着いたが、そのまま屋上に上がり、身を投げた。

 それから5年近くたった今も、両親は「なぜ突然に」との思いをぬぐえない。

 周囲への気配りを絶やさない子だった。人間関係に苦悩を深め、LINEの世界で急速に追い込まれてしまったのだろうか。詳しい経緯が知りたくて、両親は弁護士を通じて友人らに手紙を書いたが、保護者側から「本人のショックが大きい」などと返答され、あきらめた。「彼女たちも、まさか娘が死ぬとは思ってはいなかったのでしょう」。父親(60)は無念さを押し殺すように語った。

 母親は訴える。「スマホの文字は表情も見えず、冷たく心に突き刺さる。娘のような悲劇が起きないためにも、その怖さを知ってほしいんです」

読み返して傷深まる SNS

無料相談窓口の例
無料相談窓口の例

 専門家によると、若者は限られた友人との狭い人間関係で生きている場合が多く、拒絶されれば自らの存在を否定されたように思い込みがちだ。

 特に、場所や時間を問わずつながるLINEなどSNSでは視野が狭まり、心の余裕もなくなることがある。子供のネット問題に詳しい竹内和雄・兵庫県立大准教授は「文字が画面に残り、受け取る側は何度も読み返せる。それは傷つく言葉を何十回も繰り返されるのと同じ。文字だけのやり取りのリスクを教える必要がある」と指摘している。

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