[命の葛藤]出口なき若者(4)SNS相談 寄り添う瞳

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自身も悩み「ともに成長」

生きづらさに悩んだ自らの経験を踏まえ、LINEの相談に乗る。真剣な瞳に、パソコンの画面が映る(東京都渋谷区で)=冨田大介撮影
生きづらさに悩んだ自らの経験を踏まえ、LINEの相談に乗る。真剣な瞳に、パソコンの画面が映る(東京都渋谷区で)=冨田大介撮影

 東京・渋谷、喧騒(けんそう)のただ中にある貸しオフィス。5台のパソコンが並び、キーボードをたたく音だけが響いていた。NPO法人「BOND(ボンド)プロジェクト」に続々と届くLINE(ライン)の相談に、若い女性たちがひたすら返信を打っている。

 BONDは3月に始まった若者の自殺防止のSNS相談窓口として、厚生労働省から委託を受けた。対象は10~20歳代の女性。同世代の相談員約10人が友達のようにやり取りし、「死にたい」背景を少しずつ聞き取っていく。

 〈私は社会のお荷物なんだ〉。そんなつぶやきに、相談員の愛さん(仮名、20歳代)が〈そう思ってしまうんだね〉と、やさしく答えていた。腕には無数のリストカット痕がある。「本当は『私も自分のことをそう思ってるよ』って言いたい。共感してエスカレートさせてしまったら駄目だから、書かないけど」と、照れたように話した。

 日本語で「つながる」という意味のBONDは2009年から、性被害や貧困などに苦しむ若い女性を支援する活動を続けてきた。今相談員をしている女性の多くが実は、自らここに救いを求めた経験がある。

 愛さんもその一人だ。きっかけは昨年8~10月、自殺志願者らがツイッターで誘い込まれ、殺害された神奈川県座間市の事件。「このままでは私も同じようになってしまう」と感じたからだという。

 幼い頃から両親に殴られて育った。親が家を空けることも多く、冷蔵庫に鍵をかけられ、食べるものにも困った。それでも親にほめられたくて、100点を取ろうと頑張り、ボランティア活動にも参加した。

 そんな気持ちのひずみからか、中学2年の頃、リストカットを始めた。短大時代は授業中にも隠れて自らを切りつけた。「この世からいなくなりたい」と思うようになっていた。いつか限界がきたら連絡しようと思っていたのが、BONDだった。

 BONDには3月だけで、708人から相談があった。うち11件では、北海道や東北、九州などに相談員らが直接出向いた。北陸まで会いに行った女の子からは約2週間後、手紙が届いた。人の温かさを感じ、自殺を踏みとどまることができた、と感謝の言葉がつづられていた。

 愛さんはそんな相談員たちの意見も聞きながら、相談を何度も吟味する。「自分だったらこう答えてほしいなって考えながら」。〈リストカットをしてしまう〉と打ち明けてくる子には、自分自身と同じように〈はさみを目に見えないところに置いたほうがいいよ〉とアドバイスしている。代表の橘ジュンさん(47)は「困った経験があるからこそ、人の役に立ちたいという気持ちがある」と、温かく見守る。

 子供の頃から続いてきた緊張はまだある。「いつかみんな離れてしまうんじゃないかって怖い」。それでも相談を受けている間は、自分の中のもやもやをひととき忘れられる。

 道半ばだけど、相談してきてくれる子たちと一緒に成長したいと思っている。

厚労省窓口 月に1万件

厚労省の委託団体が受け付けているSNS相談
厚労省の委託団体が受け付けているSNS相談

 厚労省による若者の自殺防止のSNS相談窓口は、座間市の事件を受けて今年3月、委託された13の民間団体に設けられた。

 相談件数は3月だけで延べ1万129件。年齢が分かった6570件のうち、20歳代が2760件、未成年が2574件で、合わせて8割を占めた。

 厚労省は4月以降も、民間委託によるSNS相談を実施している。

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