[命の葛藤]出口なき若者(6)痛み分かち合う遺族

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「生きて」母たちの願い

タキエさんは毎週必ず、息子が眠る納骨堂で手を合わせる(4月22日、北海道旭川市で)=鈴木毅彦撮影
タキエさんは毎週必ず、息子が眠る納骨堂で手を合わせる(4月22日、北海道旭川市で)=鈴木毅彦撮影

 2015年11月、札幌市の中華料理店で、2人の女性が初めて顔を合わせた。昼食を終えると、(せき)を切ったようにそれぞれの息子への思いを語らい始めた。笑ったり泣いたり、気づくと5時間が過ぎていた。息子たちはこの年、いずれも18歳で自ら命を絶っていた。

 その一人、旭川市のタキエさん(仮名、48)の息子は15年4月に亡くなった。

 アニメやパソコンに詳しく、「ITの仕事に就きたい」と、自分で選んだ高校に進学。目標に向け、部活もアルバイトもせず勉強に打ち込んでいた。

 ただ、自分よりアニメなどに詳しい級友たちに引け目を感じたのか、クラスにはうまく溶け込めなかった。「今日も誰とも話さなかった」とこぼし、「一人が楽」が口癖になった。さらに教諭から「就職には面接でのコミュニケーション能力も大事」と諭され、「どうしたらいいんだ」と焦りも見せていた。

 そのうち、「生きてる意味あるのかな」と漏らすようになった。タキエさんが心配すると、「死なないよ、怖いし」といつも冗談のように返す。しかし同じ言葉を口にした晩、タキエさんは「また言ってる」と思い、初めて聞き流してしまった。息子は翌朝、自室で首をつっていた。

 「私が真剣に聞いていたら……」。鬱積(うっせき)する胸の内は、誰にも明かすことができなかった。息子のパソコンを使い、匿名のブログで思いを吐露し始めた。それを読んで、同じ北海道在住と気づいた智子さん(仮名、51)からメッセージが届いたのは、15年秋のことだ。

 智子さんの長男も15年1月、自宅で首をつって亡くなった。大学入試の試験前日だった。

 死後に見つけた長男のメモには、中学時代にいじめられて自信を失っていたこと、「大学に行ったところで自分の弱さが出てしまう」と将来への不安を抱えていたこと、数々の悩みがつづられていた。

 周囲から「元気になった?」と問われるたび、「一生元気になるはずがない」と、心境を理解してもらえない痛みを感じた。夫との間でさえ、息子への思いがすれ違うこともあった。

 ネットで検索するうち、自死遺族のブログが多数あると知り、智子さんも15年5月から、匿名ブログで感情をつづっていた。

 2人はお互いを「気を使わずに何でも話せる、ほっとする存在」と語る。遺族同士でつながる大切さを知り、東京での遺族の集いにも一緒に参加している。

 タキエさんは今年3月、旭川市の自死遺族向けのホームページ(http://wakachiai.wp.xdomain.jp/)を開設した。自殺を考えている人のための相談電話番号も載せている。「これ以上、私たちのような自死遺族を増やしたくない。自分の子は助けられなかったけど、『生きて』というメッセージを伝えたいんです」(おわり。石浜友理、梶多恵子、石坂麻子、桜井啓道、藤井亮が担当しました)

自助グループ 全国に

遺族の自助グループの例
遺族の自助グループの例

 自殺総合対策推進センター(東京)によると、昨年末現在、自死遺族の自助グループは全国に70団体以上ある。

 2005年に長男(当時34歳)を亡くした「全国自死遺族連絡会」代表理事の田中幸子さん(69)は「自死は遺族にとって『語れない死』『知られたくない死』。でもここでは隠さずに何でも話せる」と語る。ただ参加する決心がつかない遺族も少なくない。田中さんは「ホームページや新聞などの案内を見て、自分のタイミングで、居心地の良さそうなグループを選んでほしい」と呼びかけている。

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