映像制作者向けにWHOが「自殺予防の指針」…表現の自由とぶつかる?

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 映像作品などに影響された若者の自殺を防ぐため、世界保健機関(WHO)は映画やテレビ番組制作者らに向けた「自殺予防の指針」を策定し、1月20日にその日本語版が公開された。芸術作品には「表現の自由」があり、自殺の描写をどこまで規制するかについては、今後、議論を呼びそうだ。

 WHOは指針の中で、「テレビや映画、ネット配信動画の自殺の描写は、若者の自殺を誘引するリスクがあるが、自殺を防ぐことは可能だ」としている。そのうえで、「自殺手段の描写を避ける」などの注意すべき12項目をまとめた。指針に強制力はない。

未成年者の自殺死亡率、最悪に

 策定の背景にあるのは若者の自殺の多さだ。

 WHOの2016年の調査では、世界の15~29歳の死因の2位は自殺だった。国内でも、18年の自殺者数は9年連続で減少しているものの、未成年者だけは2年連続で増加。さらには、未成年者の10万人あたりの自殺死亡率は「2・8人」で、1978年の統計開始以来最悪となった。

 米児童青年精神医学会の雑誌に掲載された調査によると、米国では、17年に動画配信サービス「ネットフリックス」で、登場人物の自殺シーンがあるドラマ「13の理由」が公開されると10代の自殺が急増した。ネットフリックスは19年夏、専門家から求められてこの場面を削除した。

識者「自発的なルール作りを」

 メディア法に詳しい田島泰彦・元上智大教授の話「『表現の自由』は保護されなければならないが、自殺の模倣につながらないよう注意が必要だ。なぜ自殺に至ったのかを社会的要因を踏まえて伝えれば、描写は正当化されるだろう。指針を受けて、制作者らが自殺防止に向けて自発的なルール作りを進めていくことが大切だ」

[解説]「時代に合わせたバランス」必要

 映画やドラマでは登場人物の自殺シーンがしばしば描かれる。日本の場合、「忠臣蔵」といった時代劇での自決の場面は物語の背景や文脈を語る上で避けられないだろう。

 こうした「表現の自由」は守られるべきものではあるが、今回の指針はその上で、自殺防止についても一定の配慮を求めるものだ。

 映画業界は刺激的なシーンを自主規制してきた。青少年の健全育成を目的に、映画業界が自主的に設立した「映画倫理機構」では、刺激的な性描写がある作品を「R18+」(18歳以上鑑賞可能)などに指定し、暴力や未成年の飲酒、喫煙シーンも審査している。

 一方、映画やテレビ番組はネットでも配信されるようになり、いつでもどこでも何度でも見ることができるようになった。子供がネット経由で多くの自殺シーンを見てしまったら、強い刺激を受ける可能性もある。

 自殺の描き方や作品の公開の仕方はどこまで許容されるのか。時代に合わせて、表現の自由と自主規制のバランスを議論していくべきだろう。

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1065198 0 WHO指針を考える 2020/02/22 09:59:00 2020/02/27 10:32:12 自殺予防指針の12項目 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/02/20200218-OYT1I50036-T.jpg?type=thumbnail

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