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    教育に関する様々な話題を随時紹介、解説します。

    (15)問題分析だけで問題解決はできない…教育アプリの開発

     動いている教育の一瞬一瞬をとらえる「ゼノンの逆説」。第15回は「教育アプリの開発」を取り上げる。

     このほど、グリーが制作し私が監修した情報モラル啓発アプリ「魂の交渉屋とボクの物語」が、第12回 日本e-Learning大賞のゲーミフィケーション部門賞を受賞した。

     このアプリは、中学生くらいの年代の子どもたちが、遊びながら異性との出会い、長時間利用、アカウント乗っ取り、既読無視等の問題について学べるもので、本格的なグラフィックや声、音楽で独特の世界観を楽しめるものとなっている。iPhone、iPad、Android端末等のスマートフォン、タブレットに対応しており、App StoreやGoogle Playで無料ダウンロードできるものだ(追加課金もなし)。今年9月に公開を始め、中学生はもちろん小学生にも好評である。

     テレビ放送が始まって以降、映像教材の活用はさまざまに進められてきた。ビデオテープやDVD等の録画メディアの普及やインターネット経由のストリーミングの活用等によって、映像教材の活用は広がっている。そして、コンピュータやスマートフォン等の普及によって、各種端末で動く多様なアプリが普及し、アプリの教育活用も広がりつつある。

    理想的なイメージをしっかりと描くことが重要

    • 「フューチャー・ランゲージ」の手法で問題解決のアイデアを出す(グリー×千葉大学教育学部連携「メディアリテラシー教育演習」より)
      「フューチャー・ランゲージ」の手法で問題解決のアイデアを出す(グリー×千葉大学教育学部連携「メディアリテラシー教育演習」より)

     私たちの研究室は、2013年度から継続して、グリーとの連携協力のもとで、教育アプリ開発を千葉大学教育学部の授業「メディアリテラシー教育演習」として実施している。学生たちがアイデアを出す「アイデアソン」(アイデア+マラソンから来た造語)や学生たちがエンジニアの方々とともにアプリをつくっていく「ハッカソン」(ハック+マラソンから来た造語)といった取り組みを経て、千葉大学教育学部附属小学校で実際の授業でアプリを使ってもらうところまで行う。技術や情報を専門としない学生でも、アプリをつくる過程を体験してもらうことがねらいだ。

     先日、今年度のアイデアソンが終わった。アイデアソンの進行は、株式会社ハックキャンプの矢吹博和さんが担当してくれており、今年度は慶應義塾大学の井庭崇准教授が開発した「フューチャー・ランゲージ」という手法を取り入れて進行してくれた。

     この手法はある種の問題解決法と言えるが、いきなり問題の分析から入るのでなく、未来の理想的なイメージを描くところから始める。今回のアイデアソンでは、学級で協働学習が理想的に進められている状態を参加者がイメージし、付箋紙に書き出すことから始められた。

     問題解決能力の育成は教育の重要な課題であるが、まずは問題分析から入り、できることを実行すると考えられがちではないか。しかし、私たちは技術の急速な進化の過程にいて、これまでになかった状況を常につくろうとしている。こうした中での問題解決では、夢のような理想的なイメージをしっかりと描くことが重要となる。

     問題分析だけで、問題解決はできない。これまでの常識にとらわれず、新しい未来のイメージを描くことが問題解決に必要だ。これからの教育を担う人たちには、こうした考え方で、問題解決能力を身につけてもらいたいと考えている。

    ▽2014年度のアプリづくりの取り組みについての記事(ヨミウリ・オンライン)

     藤川教授の監修で、SNSなどを使う際の情報モラルをゲーム形式で学べるアプリ「魂の交渉屋とボクの物語 - Soul Negotiator-」が、ソーシャルゲーム大手「グリー」から無料でリリースされました。

     このアプリについて紹介している「SNSどう使う…ゲームで学ぼう情報モラル」こちらから

    プロフィル
    藤川大祐( ふじかわ・だいすけ
    千葉大学教育学部教授・副学部長(教育方法学・授業実践開発)
     1965年、東京生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学(教育学修士)。2010年より千葉大学教育学部教授。15年より同副学部長。メディアリテラシー、ディベート、環境、数学、アーティストとの連携授業、企業との連携授業等、さまざまな分野の新しい授業づくりに取り組む。学級経営やいじめに関しても詳しい。文部科学省「ネット安全安心全国推進会議」委員(2007年~)、NPO法人企業教育研究会理事長、NPO法人全国教室ディベート連盟理事長・関東甲信越支部長、日本メディアリテラシー教育推進機構(JMEC)理事長等をつとめる。主な著書に、『12歳からのスマホのマナー入門』(大空出版、2014年)、『授業づくりエンタテインメント! ―メディアの手法を活かした15の冒険』(学事出版、同)、『スマホ・パソコン・SNS よく知ってネットを使おう! こどもあんぜん図鑑』(講談社、2015年)など。
    2015年11月06日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun