伝統の女子教育が凝縮された研修…共立女子

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 1886年(明治19年)創立の伝統校・共立女子中学高等学校(東京都千代田区)。

 山梨県の富士五湖の一つ西湖の湖畔での研修について発表する「富士宿泊研修発表会」は、同校が長年取り組んできた女子教育が凝縮されたものだった。

研修のしおりには行動とルール

富士宿泊研修の発表をする中学2年生
富士宿泊研修の発表をする中学2年生

 中学2年生が様々な体験を行う富士宿泊研修。6月に2泊3日の日程で行われ、その総括となる発表会が行われた。

 生徒全員が携える研修のしおりを見せてもらった。それには日程、持ち物だけでなく、どんな準備をし、どんなことに注意すべきかが、25ページにわたり記載されていた。

 たとえばこんな具合だ。

 「私語をしないで、話を静かに聞く。時間を守り、行動を敏速にする。旅行係、班長、部屋長を中心に、自主的に秩序ある行動をとる」

 宿舎生活のページには「中学生にふさわしい言葉遣い、話題、態度を維持する。自分の持ち物は、いつも整頓しておく。運動靴は部屋の靴箱にしまっておく。スリッパは向きを(そろ)えて並べておく」とある。部屋での過ごし方、起床・就寝、入浴・洗面、食事・間食について、共立女子中学生としてふさわしい行動とルールが並ぶ。

 正副の部屋長、行動班班長、生徒旅行係の任務についても書かれており、その役割の生徒が何をするのか、そのために他の生徒たちはどのように行動したらよいかが理解できる。

 女子校の研修のしおりの「任務」という言葉に、思わず担当の前田好子教諭に驚きの気持ちを伝えた。「これが共立女子のスタイル。私の在学中から、変わりません」との言葉が返ってきた。

 共立女子の生徒として、どのように振る舞い、それにはどんな心づかいがこもっているのか。また集団の中で、役割を担うとは、どんなことなのかを、このように具体的な説明や指示によって知ることは、中学2年生にとって大きな力となるだろう。

都会っ子が富士の大自然の中で育むもの

壇上も客席も、礼儀正しく規律ある振る舞いで厳かな雰囲気だった
壇上も客席も、礼儀正しく規律ある振る舞いで厳かな雰囲気だった

 富士宿泊研修では、山梨県の郷土料理のほうとう作り、青木ヶ原樹海ナイトハイク、紅葉台ハイキング、コミュニケーションゲームなどが行われた。2日目の夜、生徒は各自、行動を振り返り、シートに記入する。

 同校では、学校活動のさまざまな場面において、「関わる力」「動く力」「考える力」「解く力」の「4つの力」を養うよう努めている。振り返りシートは、今回の研修のそれぞれの体験活動でこれらの力をどのように使ったのかを考え、まとめることのできる仕立てとなっていた。

 前田教諭は、富士での体験活動の意味を次のように説明する。

 「パソコンですぐに検索できる便利な時代に生きている子どもたちとって、あえて制限された状況の中で記憶力や五感をフルに使い4つの力を伸ばしてほしいと考えました。ハイキングやナイトハイク中にはメモもできません。インストラクターにどんな知識を教えてもらったのか、どんなことに感動したのかを心に刻み、パソコンも資料もない宿舎で自分の言葉で振り返りシートにまとめます」

 細部にまで注意が記された旅のしおりと、体験活動には、限られた条件下で豊かな時間を持とうという考えが通底しているように感じた。

スピーチには丁寧な振り返り

白山通りの交差点に学士会館と向かい合って立つ共立講堂
白山通りの交差点に学士会館と向かい合って立つ共立講堂

 宿泊研修から戻り数週間後、体験活動の発表会「富士宿泊研修発表会」が行われた。2~3人でチームとなり2分間スピーチをする。授業参観に続いての開催だったので、保護者の姿が多く見られた。

 「豊富な知識を持つインストラクターさんが、山を大事に思い、ゴミを見つけては拾っていたので、私たちもお手伝いをしました。日本はきれいな国なのに、山にゴミがいっぱいで驚きました」「暗い森を歩くナイトハイクでは、ヒメネズミに出会えました。都会では味わえない体験ができました」「粉から麺をつくり、野菜も切って自分たちではじめて作ったほうとうは、家庭科の豚汁実習で学んだことを役立てました」といった感想や、「女性としての礼儀を学びました」「多くの人の助けがあって、学びがあった。ありがとうございます」と感謝の言葉もあった。

 ひとつひとつの行いをしっかりと眺め、そこにどんな意味があるのかを考える丁寧な振り返りが感じられた発表内容だった。

歴史と伝統ある講堂で発表会

25ページにわたる研修のしおり
25ページにわたる研修のしおり

 発表会を見学して驚いたのは、生徒たちの、姿・行動のすがすがしさだ。肩につく髪は一つか二つにくくり、髪留めも黒く、決められたもののようだ。制服姿に足元は運動靴でなくローファー。班全員そろって客席に向かい礼をし、視線を上げて堂々とスピーチをする。

 客席の生徒たちは、おしゃべりをせず、発表に聞き入る。自分たちの番になると、静かに席を立ち、ステージへと向かう。

 発表の会場は共立講堂だ。昭和初期には日比谷公会堂と並ぶ数少ない大講堂で、学校行事だけでなく音楽関係の公演も多く開かれたことから、長年にわたり日本の芸術文化を振興したとして広く知られてきた。1956年(昭和31年)の焼失による建て替えの後、耐震補強工事やリニューアル工事によって、重厚な雰囲気を今に伝える講堂となっている。公会堂やホールが各地に建設されたことから、現在は主に学校行事の施設として使われている。

 このような経緯もあってか「講堂は私たちにとって特別な場所です」と卒業生でもある前田教諭は言う。といっても、運動靴とセーターを禁止しているだけで、他は普段と通り。髪や制服を整えることも、礼も「本校の生徒は指示しなくても自然にできます」とのことだ。  

 「中学生ですから普段はにぎやかで元気です。けじめが大事なのです。就職した卒業生がやってきて、『就職活動で怖いことは何もなかった。ここで学んだことが自信です』と言います。私たちの教育は、時代を超えて“輝き、羽ばたく”女性へと育てることです」と締めくくった。

 (文と写真・水崎真智子)

 ⇒共立女子中学高等学校のホームページはこちら

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302722 0 共立女子中学高等学校 2015/07/14 05:30:00 2015/07/14 05:30:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20150709-OYT8I50125-T.jpg?type=thumbnail

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