考え方の「型」を学ぶ…独自授業「サイエンス」

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サイエンス授業の様子
サイエンス授業の様子

 かえつ有明中・高等学校(東京都江東区)のオリジナル教育プログラムが「サイエンス」だ。生徒たちが実践的に考える訓練をする独自授業をリポートする。

受け身の生徒が自ら進んで頭を働かせる方法

探究のプロセスをわかりやすく
探究のプロセスをわかりやすく

 サイエンス授業は、一言でいえば「考えることをトレーニングする教科」だ。例えばスポーツの場合、基本的な「型」を教えてトレーニングを積ませた後に実践がある。思考も同じで、「型」を教えてトレーニングをさせれば、誰もが実践的に思考できるようになる。この考え方を、ひとつの教科として展開しているのがサイエンス授業なのである。

 サイエンス科主任教諭の大木理恵子先生は言う。「今の生徒たちは、『考えなさい』と言っただけでは、硬直してしまうのです。『受け身の生徒たちが、もっと能動的に頭を働かすためには、どうしたらいいんだろう?』という問題意識がサイエンス授業の原点です」

思考が目に見える…独自のシート

 では、「考えるトレーニング」とは具体的に何をするのか? 

 「例えば『読書感想文を書きなさい』と言うと鉛筆が止まってしまう生徒に対しては、この『比較と対照』のシートを使って指導します。『主人公と自分を比べて同じところはどこ? 違うところはどこ?』と尋ねて、それを書かせると生徒たちは意外とペンが進み始めるんです」

 十数種類あるこのシートは「グラフィックオーガナイザー」と呼ばれており、思考を目に見える形にして生徒を導いていく。

 「答えを型にはめ込んでいく作業を通じて、生徒たちの頭は回転を始めます。そして『考えるって、もしかして、こういうこと?』ということが体でわかっていくのです」

リサーチノートブックでポイント整理

図書館に展示してある「リサーチノート」
図書館に展示してある「リサーチノート」

 「リサーチノートブック」もサイエンスの授業に欠かせない。図書館司書の眞田章子先生が制作・編集したもので、学習を進めるうえで取得するべきポイントを整理し、的確に情報収集・分析・統合ができるようになっている。

 リサーチノートブックの完成度は非常に高い。それもそのはず、眞田先生は、「学校図書館とことばの教育研究会」という研究グループに参加。その集大成は「思考力の鍛え方」(静岡学術出版)という本にまでなっている。付け焼き刃の知識でなく、長い時間、積み重ねてきた理論的ベースがあってのリサーチノートブックなのだ。

なぜ海外土産に日本刀?…考え込む生徒と対話

 思考訓練を取材した。ぬいぐるみのテディベアを「留学生」として見立てて、外国に持って行くとしたら、「どんな土産がいいか」ということを中2男子の生徒たちにリポートを書かせ、発表させるという「テディベアプロジェクト」。土産を選んだ理由付けで、生徒たちは結論を出せずにいた。

 理由探しは、いわば「テディベアプロジェクト」の中核をなす「本論」でとても大事な部分だ。“立ち止まっている”生徒を教師は対話で導く。

 佐野和之先生(物理科、サイエンス指導担当)は「思考を掘り起こす部分で苦しんでいるので、個別で呼び出して話を聞いているんです」。

 彼らが苦しんでいるのは、テディベアに託すプレゼントに日本刀を選んだからだ。今回の発表では、「プレゼントを贈る理由として、“事実に基づいたこと”を三つ挙げ、その三つのうちのひとつは体験を通した事実であること」という縛りがある。

 「彼らは日本刀なんて触ったことがないから体験を通した事実が思い浮かばないのです。でも、どうしても日本刀にしたいと。そこが面白いでしょ? だから、何で日本刀にしたいのだろうね?といった点を今、僕が聞いているわけです」

まずは肯定から…いつも生徒が中心にいる

個別指導の授業
個別指導の授業

 リポートを仕上げることが目的なら、ほかの土産を選べばいい。

 「男子って真面目です。女子は意外とこだわりなくリポートを仕上げるのですけれど、男子は、ソコ流しませんね~」と、先生は笑う。

 「絶対に流さない男子」を面白がりながら、いろいろな方法論を提案していく先生。このやり取り、この余裕は何なのだろう?

 広報室長の南部智子さんは言う。「生徒の言うことを、まずは肯定して、受け入れる。そして、目の前にいるその子に最も良いと思われることを、一生懸命やる。いつも生徒が中心にいる。それは、かえつ有明の校風かもしれません」

未来の「スティーブ・ジョブズ」育てる

 確かに、先生たちの言葉の端々から生徒に対しての姿勢がうかがわれる。

 「サイエンス授業の出発点は、どうしたら生徒がいきいきと学べるか?ということなのです」と言う大木先生。司書の眞田先生は「調べ学習をサポートする中で、子供たちに何かが足りないから、調べ学習が単なる引き写しになってしまうと感じ、どうにかしたかった」。

 現場の問題を見過ごさない下支えがあるからこそ、新しい概念を取り入れたサイエンス授業が学校に根付いていったのではないだろうか。授業を受けていた生徒がこんなことを言っていた。

 「僕はスティーブ・ジョブズが憧れです。人前で堂々と自分の意見が言えて、周りのみんなが本気になる。僕も彼のようになりたい」

 進取の精神がありながらも、今、目の前にいる生徒を見失わない着実さ。そんな校風の学校なら、未来のスティーブ・ジョブズがたくさん生まれることだろう。

 (文と写真:楢戸ひかる)

 かえつ有明中・高等学校について、詳しく知りたい方はこちら

403748 0 かえつ有明中・高等学校 2014/07/07 14:48:00 2014/07/07 14:48:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20140707-OYT8I50069-T.jpg?type=thumbnail

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