車椅子バスケ体験授業で自分を見つめ直す…広尾学園

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 広尾学園中学校・高等学校(東京都港区)は10月24日、パラリンピックに出場した車椅子バスケットボール選手を迎えての体験授業を行った。体験授業は各界で活躍する人物からさまざまな価値観を学ぶことを目的としており、生徒たちはこの日の授業から、競技そのものの奥深さや社会と障害との関わりに関心を広げていた。授業風景や生徒たちの声をリポートする。

多くの価値観に触れ、将来に生かす

講師を務めた三宅克己さん(左)と上村知佳さん
講師を務めた三宅克己さん(左)と上村知佳さん

 同校は生徒たちの学びと成長のために「いかに豊かな出会いを提供するか」が重要と考え、多彩な分野から人物を招き、講演や体験授業を開催している。この日の体験授業は、5大会連続でパラリンピックの車椅子バスケットボール競技に出場し、海外でプロとして活躍した経験もある上村知佳さんと、同じく3大会連続で出場し、引退後は普及活動に努めている三宅克己さんを講師に、中3生約250人が車椅子バスケを体験した。

 体験授業の目的について本科コース統括長の土田義昌教諭はこう話す。「2020年の東京オリンピック、パラリンピックに向けて、高校生となった自分がどう関われるか、生徒たちが考えるいい機会になると思います。また、多くの人と出会い、さまざまな価値観に触れることで、自分たちは多様な価値観が存在する世界に生きていることを理解すると同時に、将来、自分のやりたいことが見えてくるきっかけになればと考えています」

 まず、司会進行役の生徒から「全員、姿勢を正して」「よろしくお願いします」とあいさつ。授業は2人の講師による車椅子バスケの説明から始まった。

体験授業の目的を話す土田義昌教諭
体験授業の目的を話す土田義昌教諭

 上村さんが生徒たちに質問を投げかける。「日常用の車椅子と競技用の車椅子の違いは何でしょう」。競技用の車椅子の車輪が八の字になっていることに気付いた生徒が「ウィールの角度が違う」と答えた。同様にバンパーやベルト、ひじかけの有無といった部品の違いを説明していく。

 「車椅子でバスケットボールをすると、けがなど多くの不具合が生じます。でも、それでやめてしまうことなく、工夫を積み重ね、車椅子を進化させることで現在の競技車が生まれました。日常の車椅子も、より軽く、動きやすくなるよう日々進化しています。興味を持った人は、その知識や頭脳を生かし、こうしたツールを作ってほしいと思います」。上村さんの言葉に生徒たちは真剣に耳を傾けた。

いざ本番、ゲーム形式に四苦八苦

ボールの扱い方を教える上村さん
ボールの扱い方を教える上村さん

 説明の後、上村さんと三宅さんが車椅子バスケのデモンストレーションを行った。2人のスピーディーで迫力のある動きに生徒たちは目を見張り、シュートが決まると拍手と歓声が湧き起こった。

 生徒たちに先立って、先生8人が車椅子バスケを体験した。先生たちは上村さんに追いつこうと奮闘し、生徒たちも夢中で応援したが、全然追いつけなかった。

 次はいよいよ生徒たちの番だ。各クラス4人ずつチームとなり、ゲーム形式で車椅子バスケを体験した。最初は四苦八苦していたが次第にコツをつかんでいく。ついにシュートが決められるようになると、観戦する生徒たちも大いに盛り上がった。

 車椅子バスケを体験した森田尚吾君は、「ドリブルをしながら車椅子を動かすのが難しかった。また、座っているとシュートをするとき力が入らない。普通のバスケとは全然違うんだと感じました」と話した。同じくゲームに参加した小沼天音さんは、「パスを受けようとしたら車椅子が回転してしまって難しかったです」と話した。

 生徒たちのゲームが終わると上村さん、三宅さんは、この体験授業を通じて伝えたいメッセージを語った。

車椅子バスケを体験する先生たち
車椅子バスケを体験する先生たち

 上村さんは、パラリンピックを象徴する「失ったものを数えるのではなく、残されたものを最大限に生かせ」という言葉を紹介し、工夫して車椅子を進化させた人々の話をした後、「夢がある人もない人も、何か好きなことに打ち込んでほしい。そこで、できないことにぶち当たっても立ち止まらず、自分にできることを考え、頑張ってください」と語った。

 また、上村さんは自分が車椅子生活になった当初、戸惑いを見せた妹が、福祉の道に進み、車椅子の男性と結婚したことを話し、「妹の中で、車椅子に乗った人と彼女自身は何も変わらない存在になりました。みなさんもパラリンピックでさまざまな選手を見て、さまざまな思いを感じ、将来、何かしらの糧にしてください」と結んだ。

 三宅さんは「パラリンピックにはさまざまな競技があり、世界中で活躍する選手がたくさんいます。東京オリンピック、パラリンピックは一生に1度かもしれない貴重な経験なので、ぜひ開会式を見に行ってほしい。また、海外には障害があっても、ニュースキャスターや企業の社長など多様な世界で活躍している人が大勢いるが、日本ではまだ少数。体験会などを通して、その状況を変えていきたいです」と語った。

出会いが生徒たちの意識を変える

ゲーム形式で車椅子バスケを体験する生徒たち
ゲーム形式で車椅子バスケを体験する生徒たち

 授業の最後には質疑応答があった。生徒から「選手は最長どのくらいの距離までボールを投げられますか」「車椅子では最速どれくらいのスピードで走れますか」「パラリンピックの選手に選考されるのはどれくらい難しいんですか」など、パラリンピックについての質問から、「障害者」の「害」の字を「がい」や「碍」と書き換える議論にまで質問は及んだ。

 上村さん、三宅さんは、「最後に『障害者』の『害』の字を変えることについて質問が出ましたが、大切なのは『何を変えるか』ではなく『自分たちがどう変わるか』。人は少しでも違うところがあるとレッテルを貼って区別するが、我々はみな同じ人間。差別や偏見がなく、自分の可能性を信じて誰もが輝ける社会になればと思います」と語った。

 授業の後、保坂真輝さんは「実際に障害を持っている方の話には重みがあり、これまでと意識が変わりました」と話した。また、山本大地君は「これまでは車椅子で困っている人を街で見かけても、助けるかどうか迷っていたが、これからは『大丈夫ですか』と声をかけることが、私たちにできる大切なことだと思いました」と話した。

 この日の体験授業で生徒たちは、車椅子バスケを知っただけでなく、上村さん、三宅さんという人間と出会い、自分自身を見つめ直したようだ。

(文・写真:籔智子)

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60347 0 広尾学園中学校・高等学校 2019/01/15 05:20:00 2019/01/15 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190108-OYT8I50036-T.jpg?type=thumbnail

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